QMSを活用することで、高度な品質管理体制の構築や維持、証明が可能になります。認証を受けられれば、品質や信頼性の向上に役立てられるでしょう。現在はQMSを効率的に実施できるツールも開発されており、データの一元管理や解析の自動化が行えます。

本記事では、QMSの概要やツールを導入するメリット・デメリット、QMSに関する3つの規格、製造業で重要視されている理由などについて解説します。

目次

  1. QMS(品質管理システム)とは?
  2. QMSツールを導入するメリット
  3. QMSツールを導入するデメリット
  4. QMS(品質管理システム)に関する3つの規格
  5. QMS(品質管理システム)に必要なPDCAサイクル
  6. なぜ製造業でQMSが重要視されているのか?
  7. QMSは製造業の品質管理に有効

QMS(品質管理システム)とは?

QMS(品質管理システム)とは?概要や3つの規格、重要視されている理由
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QMSとは、Quality Management Systemの略称で品質管理システムのことです。日本産業標準調査会は「品質に関して組織を指揮し、管理するためのマネジメントシステム」と定めています。意味は同じですが、品質マネジメントシステムと呼ばれることもあります。

QMSは、品質を改善するためのマネジメント手法を指す場合と、品質管理のためのソフトウェアを指す場合があります。本記事ではどちらのQMSも扱いますが、マネジメント手法を指す場合はQMS、ソフトウェアを指す場合はQMSツールと呼びます。

QMSは、近年開発された新しい手法ではなく、国際的にも規格化されているようなメジャーな方法です。現在はISO 9001という規格が広く用いられています。

ISO 9001のような規格ができたのは、国際貿易の際の技術的障害をなくすためです。1970年代にイギリスやフランス、アメリカなどの国は、停滞している経済を「品質」によって活性化するために、国内で独自に品質規格を制定しました。

しかし、先進国が別々の規格を持つと、自国の製品しか使えなくなってしまいます。その事態を解消するため、1979年に品質管理の標準化を目的としたISO規格「TC176」が制定されました。このような経緯で、QMSは規格化され、主に製造業で活用されています。

なぜQMSが必要なのか

QMSは、一定の品質を担保するために効果的です。外部の人間が、取引先の品質管理体制を簡単に知ることはできません。そのため、納品される製品の品質を事前に判断することは不可能です。

しかし、QMSの規格であるISO 9001やJIS Q 9001が認証されていれば、それらの基準以上の品質管理体制を保持していることがわかります。このように、QMSの認証を受ければ、取引先に一定の品質証明ができるようになります。

また認証を受ける企業は、ISO 9001などの規格に則って品質管理体制を構築しなければなりません。これらの規格には、高い品質管理体制を維持するためのルールが定められているため、QMSに従うだけで一定の品質管理体制を構築できるようになります。

QMSツールを導入するメリット

QMSツールを利用すれば、QMSの一部を自動化できます。ここでは、QMSツールを導入することで得られるメリットを5つ紹介します。

  • 信頼性が向上する
  • 品質管理体制が整う
  • データの一元管理が実現する
  • 業務改善すべき点が見つかる
  • トラブルの原因究明時間が短くなる

信頼性が向上する

QMSツールを導入すれば、品質管理に関するデータを解析して提示できるようになります。適切な品質管理体制が構築できていることを伝えられれば、取引先からの信頼性を高められるでしょう。

また、QMSツールを導入することで品質管理体制も整えられるため、QMSに関する規格の認証を受けやすくなります。どんなに高い品質管理体制を構築していても、それを提示できなければ信頼性は獲得できません。規格の認証を取引先に提示すれば、品質管理体制に関する不安を払拭できるでしょう。

品質管理体制が整う

QMSツールには、数値の改ざん防止機能やデータの自動取り込み機能が備わっているものがあります。これらの機能を活用すれば、高度な品質管理体制が構築できるようになるでしょう。

そのほか、取り込んだデータを自動で解析してくれる機能や、異常があれば担当者にメールで知らせてくれる機能などもあります。企業の事情に合わせて設定しておけば、製品不良や装置異常の見落としを減らせます。品質管理体制を構築し直したいと考えている担当者の方は、必要な機能が搭載されているかを、QMSツール選定の判断基準にするとよいでしょう。

データの一元管理が実現する

QMSツールと基幹システムを連携できれば、データの一元管理が実現します。データを一元管理できるようになれば、データ解析が高度かつ容易になるでしょう。先述の通り、自動でデータを取り込む機能が搭載されたQMSツールもあります。これを活用すれば、人がデータを入力しなくても、データ収集から解析までを全て自動で行えるようになります。

ただし、利用している基幹システムと連携できないQMSツールを選んでしまうと、データの一元化ができません。データの一元管理は、品質管理やデータ活用において非常に重要です。可能な限り、自社の基幹システムと連携できるQMSツールを選ぶようにしましょう。

まだデータ管理システムが構築できていない企業は、QMSツールの導入を機に、データ活用に関する施策を考えてみてはいかがでしょうか。

業務改善すべき点が見つかる

QMSツールを活用すれば、収集したデータにもとづいた高度な解析が可能です。実測データにもとづく解析結果が得られるため、業務改善すべき点が明確になります。これらのデータは、正しい経営判断を下すための材料としても利用できます。

データを取得していたとしても活用しきれず、結局は勘や経験をもとに経営判断を下している企業もあるでしょう。QMSツールでは、データの収集から解析までを一貫して行ってくれるため、出力された結果を見て、そのまま経営判断に活かすことができます。

トラブルの原因究明時間が短くなる

QMSツールでは、検査データをもとに散布図や管理図を作成できます。品質管理に欠かせないQC道具の作成を自動化できるため、リアルタイムで状況や異常の有無を確認可能です。

トラブルが発生した際にもすぐに状況を把握できるようになるため、トラブルの原因究明にかかる時間を短縮できるでしょう。特に、製造ラインが一つしかない場合は、原因究明を迅速に行わなければ工場全体が止まってしまいます。QMSツールでのデータ収集や解析は、異常発生時の損失を低減するのに有効です。

QMSツールを導入するデメリット

QMSツールを導入することで多くのメリットを得られますが、一方で以下のようなデメリットも伴います。

  • 導入にはコストがかかる
  • 品質管理の方法が大きく変わることがある

導入にはコストがかかる

当然ですが、QMSツールを導入すれば初期費用やランニングコストがかかります。導入コスト以上の利益を得られなければ、企業は損失を被ることになります。QMSツールの価格を公開していない企業も多いため、導入の際には見積もりを取るようにしましょう。

QMSツールには、買い切り型のほかサブスクリプション型のものもあります。一例として価格を公開している企業の場合、買い切り型で50万円~、サブスクリプション型で5万円~となっています。

自社の品質管理体制を見直したうえで、導入コスト以上の効果が得られるかを確認してから購入するようにしましょう。

品質管理の方法が大きく変わることがある

新たなQMSを導入すれば、従業員はその使い方を覚えなければなりません。扱いが難しいツールを導入してしまうと、従業員の負担になり生産性が落ちてしまう可能性もあります。従業員が混乱しないよう、納得できる説明をするようにしてください。

また、現場に合っていないツールであれば、導入しないほうがよい場合もあります。ツールを変更すると、機器の費用だけでなく教育費や研修費もかかります。導入が逆効果にならないよう、現場の意見も取り入れながらツールを選定することが大切です。

QMS(品質管理システム)に関する3つの規格

QMSには、主に3つの規格があります。

  • ISO 9001
  • JIS Q 9001
  • SQF(Safe Quality Food)

これらを満たすことで認証を得ることができ、顧客からの信頼獲得や品質管理体制の証明につなげることができます。ここでは、それぞれの規格の概要を解説します。

ISO 9001

ISO 9001(※1)は、QMSの国際的な規格です。企業がQMSの内容を確立し、文書化・実施・維持するために用いられます。ISO 9001は、PDCAを回すことで品質管理体制の改善を図ります。よって、ISO 9001に従えば、PDCAサイクルを回しながら品質管理体制を向上することが可能です。

(※1) ISOとは
国をまたいで製品やサービスの標準化を図り、国家間の知的・科学的・技術的・経済的活動を発展させるために発足した標準化機構。
参考:日本産業標準調査会「ISOの概要」

JIS Q 9001

JIS Q 9001(※2)とは、ISO 9001の内容に則って作られた日本産業規格です。ISO 9001に則って作成しているため、内容はISO 9001とほとんど変わりません。2015年にISO 9001が改正された際には、それに従うようにJIS Q 9001も改正されました。この認証を受ければ、国家規格を満たした事業者としてJISマークを表示できます。

(※2)JISとは
産業標準化を促進する「産業標準化法」に基づいて制定される任意の国家規格。
参考:日本産業標準調査会「産業標準化とJIS」

SQF(Safe Quality Food)

SQF(SAFE QUALITY FOOD)とは、SQFインスティテテュート(SQFI)が運営する、食品に関するQMSです。SQFは、世界大手の食品会社で構成される世界食品安全イニシアチブ(GFSI)からも認められています。

SQFは世界最高水準の規格のため規定が毎年変わりますが、認証を受けている企業は高い品質管理体制を証明できます。SQFの認証は3段階に分かれており、企業は認証を受けるレベルを選択できます。衛生管理に関する項目は特に高いレベルが要求されますが、食品を扱っている企業は自社のレベルに合わせて申請してみてはいかがでしょうか。

QMS(品質管理システム)に必要なPDCAサイクル

QMS(品質管理システム)とは?概要や3つの規格、重要視されている理由
(画像=rrice/stock.adobe.com)

QMSでは、PDCAサイクルをもとに品質管理を行います。PDCAサイクルはQMSに限らず、さまざまな場面で用いられるため、ご存じの方が多いかもしれません。ここでは、PDCAの基本から、QMSにおけるそれぞれの実践方法を解説します。

PDCAサイクルとは?

PDCAサイクルとは、Plan・Do・Check・Actを繰り返し行うことで、業務改善や効率化を図る手法です。製造業以外にも、さまざまな業種の業務改善に用いられています。PDCAサイクルを回せば、それぞれの計画や行動に対する結果を分析できるため、業務改善のノウハウが蓄積されます。

P・D・C・Aそれぞれで実行することと、意識したいポイントは以下の通りです。

Plan(計画)

Planでは、Doで実行することを考えます。Planのポイントは、Doにかける期間と目標を明確に定めることです。Doにかける期間を明確にすれば、締め切りが発生します。いつまでに何をすべきかが明確になるため、役割分担やスケジューリングが容易になるでしょう。

また目標を明確にすれば、「何をするために取り組むのか」も明確になります。経営層だけでなく、実際に作業する従業員にも目標を共有すれば、企業全体の意識を統一することができるでしょう。

Do(実行)

Doでは、Planで考えた計画を実行します。Doのポイントは、Planで考えた計画を可能な限り忠実にやり通すことです。また、次回Planを考えるときの参考になるよう、業務に支障をきたさない程度に作業内容を記録しておきましょう。

Check(確認)

Checkでは、PlanとDoを評価します。ポイントは、点数や良し悪しだけで評価するのではなく、結果を招いた要因を分析することです。

例えば、Planした目標を全て達成できた場合、結果だけ見れば100点ということになります。しかし、内容を見てみると、改善すべき点が見つかるかもしれません。具体的には、後半で遅れを取り戻したものの、前半に遅延があった場合、前半のPlanに無理があったのではないかと考察できます。

また、予想以上にうまくいったこともあるでしょう。上記の例だと、後半に巻き返しを図った方法を応用すれば、業務効率化が図れるかもしれません。このように結果だけを見て点数化するのではなく、内容を精査することが重要です。全てのPlanとDoの結果に対して「なぜこうなったのか?」を考えると、次回のPDCAサイクルがより良いものになるでしょう。

Action(改善)

Actionでは、Checkで評価した内容をもとに改善策を考えます。ポイントは、失敗だけから考えるのではなく、成功からも考えることです。何かの結果を得られたとき、つい失敗から改善策を考えたくなります。

しかし、Checkでも述べたように、取り組みの中でうまくいったこともあるでしょう。成功したことにも有効なノウハウが隠されていることがあります。失敗から学ぶだけでなく、成功を活かすという視点も持って改善策を考えましょう。

なぜ製造業でQMSが重要視されているのか?

製造業でQMSが重要視されている理由は、業種の特徴にあります。製造業者の主な業務は、製品を製造することです。どの企業も、基本的に同じ製品は同じ材料・作業により製造しますが、それでもばらつきが出てしまいます。

そのばらつきが大きければ、不良品が多くなり、顧客からの信頼も失ってしまうでしょう。その結果、事業を維持することが難しくなってしまうかもしれません。

これは、品質管理を適切に行うことで予防できます。その方法として効果的なのが、QMSの規格にある品質管理体制を取ることや、QMSツールを用いることです。これらを実行して適切な品質管理体制が構築できれば、品質の向上や安定化につながり、顧客満足度も向上するでしょう。

このように、製造業にとって品質管理は非常に重要な要素であるため、それを補助するQMSが重要視されているのです。

QMSは製造業の品質管理に有効

QMSは特に製造業で重要視されており、国家規格の認証やISO 9001に従った標準化も進められています。QMSを実行する際はPDCAサイクルを回すことになるため、業務改善を自動的に進められ、自社内に品質管理のノウハウも蓄積されていくでしょう。

現在は、QMSの実施をサポートするQMSツールも出てきています。ツールを活用すれば、データの一元管理や高度な解析を自動化できます。これからQMSに取り組む企業は、ツールの利用も視野に入れながら、自社に最適なQMSの活用方法を考えてみてはいかがでしょうか。

(提供:Koto Online