原油価格,見通し
(画像=Thinkstock/Getty Images)

8日、WTI原油先物価格は、2009年7月下旬以来およそ5年4か月ぶりに1バレル=63ドルを下回った。

原油価格の下落は、欧州、中国、日本など、米国以外の経済が停滞し、先行き原油需要が減少する懸念が高まる中、シェールオイルの増産により、原油の供給過剰が生じていることが大きな要因である。また、以前は米国の金融緩和により行き場を失っていた資金が原油先物等に流れていたが、量的緩和の縮小につれて徐々に資金が引き上げていったという事情もある。

OPECの価格調整としての機能なくなる

このような場合、通常であれば、OPEC(石油輸出国機構)が生産調整を行い、減産による価格維持を図るのだが、11月27日に開いた総会では減産を見送ったことから一段と急落した。

OPECが減産を見送った背景には、シェール革命によりシェールオイルが増えている中で、原油を減産して価格を維持すると、シェアを奪われてしまう可能性があるからだ。

それであれば、一時的にでも原油の価格を安くしてシェールオイルを採算割れに追い込み、シェアを奪った方が長期的には得策と考えているのだろう。

また、真偽のほどは定かではないが、サウジアラビアは米国と友好関係にあるので、ロシアに対する経済制裁の一環という説もある。輸出収入の7割を石油・ガスに依存しているロシアでは、原油価格の下落はダイレクトに経済に打撃を与えるからだ。このまま、原油価格の下落が続くならば、ロシアは弱体化し、欧米諸国に歩み寄ってくることが考えられる。

もっとも、原因がどうであれ、原油価格の下落は、石油産出国の景気を圧迫するが、先進諸国にとっては、景気を支えるものになる。世界的にみれば、原油価格の下落はさまざまな産業のコスト削減につながるので、トータルでプラスになるからである。日本にとっても、円安により実質的な輸入価格が上昇している中、原油価格の下落は、製造コスト、輸送コストなどあらゆる面に影響を与えるので、肯定的に捉える者が多い。特に冬場にさしかかり、円安による石油価格の高騰が寒冷地の暖房費負担を強めていただけに、安倍政権にとっては救われた感がある。

原油安のデメリットは?

では、原油安はメリットしかないのかというとそうではない。原油安により、物価の下げ圧力が強まれば、デフレマインドの転換が遅れる。原油安による期待インフレ率の低下は、デフレ脱却を目指す日銀にとっては、頭の痛い要因になっているのである。これをなんとか阻止するために、第2弾の金融緩和を行ったとする見方もある。金融緩和により円安になれば、実質的に石油価格の下落は抑えられるからである。

しかし、過度な円安は国力を下げることにもなるので警戒しなければならない。ここ数日、為替相場は米国の好調な指標もあり、急速に円安が進んでいるが、円安による利益は主に輸出を行っている大企業が享受する。その恩恵が国民に行き渡るには時間がかかる。

それに対し、購買力の低下は、食品を含む直接消費財の高騰を生むので消費者にすぐに影響を及ぼすのである。物価上昇も円安も目標をもって実現をするのはかまわないが、急速な変化は回避しなければならない。

また、原油安により、ガソリン車、特に大型車の販売が好調で、ハイブリッドカーの売り上げが落ちている。3日付の日経新聞は、トヨタ自動車が2015年1〜3月の日本国内での自動車生産を減らすと報じており、当初計画に比べて約2万台も減るもようだ。低燃費をうたうハイブリッドカーにとって、原油安は逆風になっているわけである。

以上のように、原油安はプラスの面も多いが、過度に円安が進めば、国民は実質的にその利益を享受できず、さらに日本の優位性が高いハイブリッドカーの売上減少にもなってしまう。安易な為替介入はすべきではないが、円安が進みすぎるような場合には何らかの対策をとるべきではないだろうか。(ZUU online)