2024年3月に日銀は「マイナス金利政策」を解除して金利を引き上げることを決めました。そうした流れから、住宅・不動産投資ローンの見直しを検討している人も多いと思います。
そこで本コラムでは、住宅・不動産投資ローンの借り換え手数料の種類や相場について解説します。また、借り換えのメリット・デメリット、ローンの借り換えに向いているタイプについても紹介します。さらに、実際に借り換えするための手順やよくある質問「手数料を準備できない場合の対応策」にも触れていきますので、ローンの借り換えを検討中の方はぜひ最後までご覧ください。
住宅・不動産投資ローンの借り換えとは?
不動産投資ローンの借り換えとは、金利や返済期間などの条件を見直し、より有利な条件のローンに変更することを指します。
不動産投資をする際は、金融機関から融資を受けてローンを組み、不動産を購入する場合が多くなります。融資額はさまざまですが、数千万円であれば融資期間も数十年と長期になります。そのため、少しの金利差でも長期的に積み重なると金額が大きくなり、金利の違いが収支に大きな影響を与えます。
そこで、現行のローンよりも有利な条件で融資をしてくれる金融機関への借り換えを検討した方がよいケースもあります。ローンの借り換えの際には現行の金融機関のローン残高を一括返済しますが、そのお金は借り換えた金融機関から借り入れた資金を充てることができます。
住宅・不動産投資ローンの借り換えにかかる手数料は?
住宅・不動産投資ローンの借り換えには、ローンを最初に組んだ際と同じように手数料などの諸費用がかかります。借り換えする金額によって諸費用は大きく異なり、場合によっては数十万円の費用がかかることもあります。
ここでは、住宅・不動産投資ローンの借り換えにかかる手数料を解説します。
手数料 | 一般的な金額 |
---|---|
①融資事務手数料 | 3万円~融資額の2%程度 |
②保証料 | 借入金額の2%または年率+0.2%程度 |
③保証会社の事務手数料 | 1万円~5万円 |
④印紙税 | 2万円 |
⑤抵当権の設定費用・抹消費用 | 5~10万円程度 |
⑥司法書士への報酬 | 5~10万円程度 |
⑦全額繰り上げ返済手数料 | 1万円~5万円 |
借り換え時費用①:融資事務手数料
融資事務手数料とは、新しいローンを借りる際にその金融機関に支払う費用のことです。
金融機関が任意で設定できる手数料で、一般的に「定額型」と「定率型」の2種類があり、借入金額に対して一定の割合で計算する金融機関が多いです。
融資手数料の相場は3万円~5万円、もしくは借入金額の約2%程度に設定されるケースが一般的です。
借入金額が大きいと高額になる場合もあるため、事前に金融機関に確認しておきましょう。
借り換え時費用②:保証料・保証会社の事務手数料
保証料は、新しいローンを借りる際に保証会社から保証を受けるために必要な費用です。保証会社の保証を条件とするケースが多く、融資を受ける金融機関へ住宅ローン保証料を支払うことが一般的です。
保証料の支払い方法には大きく分けて、一括前払い方式と金利上乗せ方式があります。保証料の相場は、一括前払い方式は借入期間・借入金額で算出されて借入金額の2%ほど、金利上乗せ方式は適用金利に年率+0.2%程度といわれています。保証料が不要の金融機関もあり、諸費用を抑えることが可能です。
また、現在借り入れているローンの保証料を借入時に一括前払いしている場合には、保証会社から返金してもらうための事務手数料として1万円~5万円がかかります。
借り換え時費用③:その他の手数料
住宅・不動産投資ローンの借り換えに必要な手数料で大きいものは、前述の融資事務手数料と保証料ですが、借り換えの際には他にも費用がかかります。
そのほかに発生する手数料については以下となっており、一般的に新しいローンを借りる金融機関に支払いをします。
手数料 | 一般的な金額 | 内容 |
---|---|---|
印紙税 | 2万円 | ローンの契約にかかる税金です。金融機関に関わらず一律で発生します。 |
抵当権の設定費用・抹消費用 | 5~10万円程度 | 不動産をローンで購入する場合、ローンの担保として不動産に抵当権が設定されます。ローン借り換えの際には現在のローンに対する抵当権を抹消し、新たなローンに対する抵当権を設定します。金融機関に関わらず一律です。 |
司法書士への報酬 | 5~10万円程度 | 上記の登記手続きを司法書士に依頼する際の費用です。 |
全額繰り上げ返済手数料 | 1万円~5万円 | 現在のローンを一括返済する際にかかる費用です。現在のローンを借りている金融機関に支払います。 |
住宅・不動産投資ローンの借り換えのメリット4選
住宅・不動産投資ローンの借り換え手数料について説明しました。ここでは、住宅・不動産投資ローンの借り換えで得られるメリットを解説します。
- 将来の金利変動リスクを事前に回避できる可能性がある
- 金利を下げて出費を抑えることができる
- 団体信用生命保険(団信)を変更できる
- リフォームローンを併せて借りられる
将来の金利変動リスクを事前に回避できる可能性がある
固定金利の住宅・不動産投資ローンに借り換えすることで、将来の金利変動リスクを事前に回避できる可能性があります。2024年3月に日銀は「マイナス金利政策」を解除して金利を引き上げることを決めました。長期金利や短期金利に基づいて決められるローン金利にも影響が出る可能性があり、変動金利でローンを組んでいる場合には、金利が上昇するリスクがあります。
そのため、固定金利にすることで金利が上昇した場合でも借入当初の金利から変わらず、将来の金利変動リスクを事前に回避できる可能性があります。ただし、固定金利は変動がないために返済計画を立てやすいというメリットがある反面、変動金利と比較し金利が高く設定されていることが多いです。また、固定金利を選択できる金融機関は限られているので事前に確認しておきましょう。
金利を下げて出費を抑えることができる
住宅・不動産投資ローンを借り換えることで、金利を下げて出費を抑えることができます。
金利の低い金融機関に借り換えができれば、その後の支払い利息の負担が軽減できます。下図の具体例を参考にしてみていきましょう。具体的にローン金利が1%違うと毎月の返済額は1万4,207円、20年間の総返済額は約340万9,739円の減額となります。
(例)借入残高3,000万円、現在の金利2.5%、残りの返済期間が20年の場合 | |||
項目 | 金利2.5% | 金利1.5% | 差額 |
毎月の返済額 | 15万8,970円 | 14万4,763円 | 1万4,207円 |
年間返済額 | 190万7,640円 | 173万7,156円 | 17万484円 |
20年間の返済総額 | 3,815万3,008円 | 3,474万3,269円 | 340万9,739円 |
借り換えには前述の手数料がかかるため、実際には手数料等を含めた総額で比較する必要があります。そのため、実際に得られる返済軽減効果はこのシミュレーション結果よりも少なくなりますが、住宅・不動産投資ローンの借り換えをすることで、毎月のキャッシュフローの改善だけでなく、支払い総額を抑えることができます。
団体信用生命保険(団信)を変更できる
住宅・不動産投資ローンを借り換えることで、より保障が充実した団体信用生命保険(団信)に変更できる点もメリットです。
団体信用生命保険は、債務者が死亡または高度障害になったときに、保険金でローン残債が完済される生命保険です。多くの金融機関では、住宅ローンとセットで加入することが必須となっています。ローンを借りた後で自分の身に万が一のことがあった場合に備えて、将来の不安がある人は保障の内容をチェックして見直すのも良いでしょう。
住宅ローンにリフォームローンを上乗せして借りられる
住宅ローン限定となりますが、ローン借り換え時にリフォーム費用分も併せて借りれば低金利でリフォームローンを利用できます。
リフォームローンを単独で借りた場合は一般には住宅ローンよりも金利が高くなるケースが多いため、住宅ローン借り換え時に併せてローンを組むことは大きなメリットといえます。また、リフォームやリノベーションローンを別建てで二重に借りてしまい、管理が煩雑になるリスクを軽減することもできます。
住宅・不動産投資ローンの借り換えのデメリット3選
住宅・不動産投資ローンの借り換えメリットについて前述で説明しました。ここでは、住宅・不動産投資ローンの借り換えによるデメリットを解説します。
- 費用がかかる
- 融資期間が短くなる可能性がある
- 時間や手間がかかる
費用がかかる
前述のように住宅・不動産投資ローンの借り換えには数十万円の費用がかかり、一時的に資金が必要になってしまいます。
借り換えによって月々の返済負担を軽減できたとしても、借り換え費用を含めた支払総額が上回っているのであれば、逆に損をしてしまうため借り換えの意味がありません。そのため、ローンの借り換えの際には、総額でメリットがあるかどうかを考慮したうえで、本当に借り換えが必要かどうかを見極めることが重要です。
金融機関によってはシミュレーションから金額を確認することができるため、まずは金融機関に相談することをおすすめします。
返済期間が短くなる可能性がある
住宅・不動産投資ローンの借り換えによって、返済期間が短くなる可能性があります。ローンは不動産の法定耐用年数が返済期間の上限となっており、所有年数が長いほど長期ローンを組むのが難しくなります。耐用年数は以下のように不動産の種類によって異なります。
- 鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 住宅用:47年
- 重量鉄骨 住宅用(厚さ4㎜超):34年
- 軽量鉄骨 住宅用(厚さ3㎜超4㎜以下):27年
- 軽量鉄骨 住宅用(厚さ3㎜以下):19年
- 木造 住宅用:22年
出典:国税庁ホームページ ※この先は外部サイトに遷移します。
ローンを借り換える時には不動産の築年数は購入時より古くなっており、不動産の購入時よりも返済期間の上限は少なくなっています。返済期間が短くなると合計支払額が下がったとしても月々の返済額が増額する可能性があります。そのため、住宅・不動産投資ローン借り換え時には返済期間の上限を確認しましょう。
時間や手間がかかる
住宅・不動産投資ローンの借り換えには、様々な書類の準備など手続きが必要になります。
借り換えができる金融機関の選定はもちろん、新規ローン契約と同じように借り換えの際にも審査があります。住民票や所得証明書などの発行や購入時の売買契約書や重要事項説明書、図面などといった物件資料など書類の準備が必要となるため、時間や手間がかかります。
情報収集も重要ではありますが、目ぼしい金融機関を見つけたらまずは相談してみることをおすすめします。
住宅・不動産投資ローンの借り換えに向いている人は?
住宅・不動産投資ローンの借り換えメリット・デメリットについて説明しました。
では、実際に住宅・不動産投資ローンの借り換えに向いている人はどのような人でしょうか。ここでは、住宅・不動産投資ローンの借り換えに向いている人を解説します。
- 現在の利息が高いと感じている人
- 転職等で年収が減って返済が苦しい人
- 団信や特約の内容を充実させたい人
現在の利息が高いと感じている人
現在の利息が高く、借り換えの諸費用に比べても減らせる利息のほうが多い場合は、住宅・不動産投資ローンの借り換えを検討した方がよいでしょう。
ローンの借り換えには手間や時間もかかりますが、大幅に総支払額を減額できることもあります。さらに、保証料不要など諸費用が高額にならないローンを提供している金融機関もあるため、金利差が小さくても減らせる利息のほうが多くなることもあります。
今の利息が高く生活を圧迫している人は、金融機関への相談を検討してみましょう。
転職等で年収が減って返済が苦しい人
転職等で年収が減り、現在の返済が苦しいと感じている人も借り換えを検討してみるとよいでしょう。特に金利が高い頃に借り始めた人は、ローンの借り換えをすることで返済負担を軽くできる場合があります。なお、ローンの借り替えの際にも審査があり、現在までの返済において延滞がある場合は審査に通りづらい点には注意が必要です。また、ローンの借り換えだけでなく物件の売却など別の方法を一緒に検討してみてもよいかもしれません。
団信や特約の内容を充実させたい人
より保障が充実した団体信用生命保険(団信)に変更したい人も住宅・不動産投資ローン借り換えの検討をおすすめします。
最近は病気やケガで特定の状態になった場合の保障が充実している疾病保障付き団信が豊富になっており、万が一に備えた保障の見直しをすることも重要です。金融機関によっては一定の年齢を超えると加入できない場合もあるため、興味があれば早めに行動してみましょう。
借り換えするための6つの手順
実際に住宅・不動産投資ローンの借り換えをする際にはどのような手順が必要なのでしょうか。
ここでは住宅・不動産投資ローンを借り換える流れを簡単に紹介します。基本的に、金融機関に相談した後は金融機関の指示を受けながら手続きを進めます。
- 現在の金融機関のローン返済額と条件を再確認する
- 借り換え先となる金融機関を決める
- 新たな金融機関で審査を受け、ローン借り換えを行う
- 現在の金融機関と新しい金融機関で手続きをおこなう
- 新しい金融機関から受けた融資で元の金融機関のローンを完済する
- 新たな金融機関と交わした契約に基づいて返済していく
以下の記事で、借り換えするための手順についてより詳しく解説しています。ぜひこちらも参考にしてください。
【関連記事】アパートローンを借り換えしたい!具体的な手順や費用をわかりやすく解説
手数料を準備できない場合はどうしたらいい?
前述の通り、住宅・不動産投資ローンの借り換えには諸費用の準備が必要となります。しかし、諸費用は数十万円程度かかることが多く、すぐに準備ができない場合もあるかもしれません。
ここでは、「諸費用が準備できない」という場合の対応策について解説します。
- 対応策1:諸費用もローン金額に含める
- 対応策2:諸費用が安いローンを選ぶ
対応策1:手数料もローン金額に含める
ローン金額に諸費用の金額も含むことができる金融機関もあるため、まずは金融機関に相談してみましょう。
ローンと一緒に諸費用も借りる「オーバーローン」といわれる方法や住宅ローンとは別に諸費用ローンを借りる方法もあります。ただし、諸費用も借り入れした場合は借入金額が増えることになるため金利の支払いも多くなるので、返済負担が大きくなってしまうことは留意しておきましょう。
対応策2:手数料が安いローンを選ぶ
「保証料不要」や「事務取扱手数料が定額」といったローンを選択することで諸費用を少なくすることが可能です。前述した各費用をチェックし、総額でいくらになるのか金融機関の担当者にしっかりと聞きましょう。
(提供:manabu不動産投資 )
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