目次

  1. デマンドチェーンマネジメント(DCM)とは?
  2. デマンドチェーンマネジメントの運用手順
  3. デマンドチェーンマネジメントの課題
  4. 課題解決に有効なのがERP
  5. ERPとDCMを統合するメリット
  6. ERPを導入する際の注意点
  7. まとめ

デマンドチェーンマネジメント(DCM)とは?

デマンドチェーンマネジメントとは?導入における課題解決方法も含めてわかりやすく解説
(画像=YouraPechkin/stock.adobe.com)

デマンドチェーンマネジメント(DCM)は、需要サイドから得られる情報をベースにサプライチェーン全体を最適化しようとするための仕組みです。DCMの取り組みには、商品開発、生産計画、販売体制などを需要に応じて改善していくことも含まれます。ここでは、DCMの必要性、導入のメリット、サプライチェーンマネジメント(SCM)も含めて解説します。

デマンドチェーンマネジメントとは

なぜDCMが必要なのか

消費者と向き合う企業にとって、なぜDCMの考え方が必要になるのでしょうか。近年は、SNSをはじめとしたコミュニケーション手段の多様化により、消費者のニーズが刻々と変遷しています。そのため商品やサービスを提供する企業としては、消費者のニーズを迅速に捉え、商品開発や生産計画にリアルタイムで反映することが重要です。

またDCMは、商品やサービスが市場のニーズに合致しているかを判断する手段としても活用できます。消費者の嗜好や動向に基づいた商品開発を行うことで、ニーズに合わない商品を開発するリスクやそれによる損失を回避できるでしょう。

DCMを導入するメリット

DCMを導入することで、いくつかのメリットが期待できます。DCMでは、消費者の嗜好やニーズを分析するため、正確な需要把握が可能になり過剰在庫や供給不足に陥るリスクを減らすことが可能です。また消費者のニーズを正確に捉えれば顧客満足の向上にもつながります。そのため商品のブランド価値向上や商品単価のアップなどの良い影響が生まれるでしょう。

DCMとサプライチェーンマネジメント(SCM)の違い

DCMと類似した概念の一つにサプライチェーンマネジメント(SCM)があります。SCMとは「必要なタイミングで必要な量を必要な場所に提供する」という物流における考え方です。しかし、近年はSCMにおいても消費者のニーズや信頼といった点も考慮されるようになり、物流の範囲に留まらない考え方に変わりつつあります。

一方、DCMは消費者の需要に焦点を当てているため、SCMと重視する点が異なります。今後は、消費者ニーズに応えつつ物流の最適化も求められることからDCMとSCMの両立が必要になるでしょう。

DCMとバリューチェーンマネジメントの違い

バリューチェーンマネジメントもDCMの類似概念の一つです。バリューチェーンは、日本語で「価値連鎖」と訳され事業活動を付加価値創出に向けた一連の流れとして捉える考え方を指します。バリューチェーンマネジメントでは、企業が提供する商品やサービスが消費者にもたらす価値やブランド性に重点を置くため、DCMとは重視する視点が異なるといえるでしょう。

一方、消費者のニーズを正しく捉えることと付加価値の提供は表裏一体の関係にあります。それゆえバリューチェーンマネジメントとDCMの取り組みは、両立することも可能です。

デマンドチェーンマネジメントの運用手順

デマンドチェーンマネジメントは、適切に運用されて初めて効果が出るものです。ここでは、デマンドチェーンマネジメントの運用手順について解説します。

1.需要予測をし、その結果をもとに生産計画を立てる

まず自社の扱う商品やサービスに対して「市場でどれくらいの需要があるのか」について予測します。その結果に基づいて実際に供給する量を算定し、生産計画を立てましょう。この際に需要を上回る生産計画を立ててしまうと過剰在庫に陥りかねません。また需要を下回る生産計画では、供給不足となり機会損失につながるでしょう。

正確な需要予測とそれに基づく生産計画は、DCMにおける核ともいえる部分となるため、自社の競争力を左右するといえます。

2.情報収集して分析した結果を共有する

需要予測と生産計画の策定後は、市場から得られるデータの収集とその分析結果を共有します。市場から得られるデータには「店舗での販売実績」「SNSに投稿された口コミ」などさまざまです。これらのデータを有効活用するためには、収集するだけではなく正しい手法で分析することが重要です。

データは、そのままの形では有用性のある情報が見えないことが多いため、分析するには以下のような加工が求められます。

  • 一定の規則に沿って並び替える
  • 分類する
  • 形式を変更する

またデータの分析結果を組織内で共有することも重要です。

3.顧客ニーズを分析し、それを反映する

消費者や市場からの情報収集を行い、分析結果を共有したあとは、企業としての施策に顧客ニーズを反映させていきます。例えば一般消費者向けの商材を扱う企業であれば「SNSの口コミなどを収集して得られた消費者の嗜好に関するデータを商品開発の方針に活かす」「生産量の調整に活用する」といった具合です。

このように顧客ニーズから得られた知見を組織全体の施策へ反映させることで、商品やサービスの顧客満足度と競争力の強化につながります。

4.各部門が連携する

DCMの仕組みを正しく運用するためには、各部門の連携が欠かせません。例えばマーケティング部門が積極的に消費者ニーズを分析しデータを集積しても、その知見が商品開発部門によって活用されなければDCMの仕組みは機能しません。DCMは、組織全体で正しくかつスムーズに情報が共有されることで初めて意味のある仕組みとなります。

DCMを運用する際には、関係する組織に対してDCMの意義やメリットを事前に周知し、理解してもらうことが重要です。

デマンドチェーンマネジメントの課題

ここでは、DCMの仕組みを導入するために解決すべき課題のうち、いくつか代表的なものについて解説します。

データ管理と分析に専門知識・スキルが必要になる

DCMにおいては、市場や消費者のニーズをデータとして収集し、適切な手法で分析する仕組みが求められます。より精度の高い形でDCMを行うためには、リアルタイムでデータの分析が可能なシステムと、それを運用するためのスキルを持った人材の確保が必要です。そのためには、全社レベルで設備や人的資本への投資が求められるでしょう。

多様化した顧客ニーズに対応しなければならない

昨今は、消費者ニーズが多様化しているため、市場からの反響や需要を速やかに収集し自社の商品開発、マーケティング施策へ反映させることが求められます。せっかく顧客ニーズに関するデータが収集できても、それを商品やサービスの開発に活かせなければ意味がありません。

消費者のニーズに関するデータを有効活用するには、データ分析のためのシステムや人材に加えて分析結果を正しくかつ速やかに各部門の施策に反映できるような組織体制を整えることも重要です。

部署間の連携がうまくいかず実施が遅れる

DCMの実現には、部署間のスムーズな連携が求められます。一部の部署がDCMの導入に向けた施策を積極的に推進しても、他の部署との連携がうまくいっていなければ組織全体に浸透していきません。DCMを全社的に実現するためには、関係部署に対してDCMの理念やメリットを丁寧に説明し合意形成を図ったうえで検討を進めることが重要です。

課題解決に有効なのがERP

デマンドチェーンマネジメントの仕組みつくりには、ERP(Enterprise Resources Planning)の導入が有効です。ERPとは、企業が持つヒト・モノ・カネなどのリソースを有効活用できるように配分する考え方、およびそれを実現するためのシステムを指します。ERPに該当する業務は人事、経理、購買などの多岐に渡り、それらの業務を包含したシステムがERPパッケージです。

ERPによって企業内の情報が一元化、可視化され、デマンドチェーンマネジメントに必要となる経営判断を迅速かつ正確に行えるようになるでしょう。

ERPとDCMを統合するメリット

ERPとDCMの仕組みを統合することでいくつかのメリットが期待できます。その一つが、需要予測の精度向上です。ERPのなかには、データ分析の仕組みを備えているものがあるため、リアルタイムでのデータ分析を自社でシステム開発することなく利用することが可能になるでしょう。またERPによって情報が一元化されることも大きなメリットの一つです。

いかに多くの需要データを収集して分析しても、情報が分散していると有効活用に至らないこともあります。ERPには、収集したデータを一元管理し見やすいグラフや図表などに加工する機能が備わっている場合もあるため、情報の有効活用という観点でもERPが強みを発揮するでしょう。

ERPを導入する際の注意点

DCMにおいてメリットの多いERPですが、ERPの導入には初期費用と継続的な運用費用の両面でコストがかかるという注意点もあります。導入にあたっては、予算確保と費用対効果の分析が必要になるでしょう。

またERPの導入にあたっては、多くの場合、業務フローをシステムに合わせて変えていくことが要求されます。いざERPを導入しても「現場部門から使いにくいとの声が上がる」「業務に混乱が生じる」などの理由でERPの活用が頓挫してしまうケースも少なくありません。そのため導入に先立ってERPを使用する部門に対しては、業務フローの変更に関して理解を得ることが重要です。

まとめ

消費者ニーズの多様化により、今後もDCMが果たす役割は大きくなることが予測されます。またAIなどのIT技術の発達により、精度の高い需要予測や高度なデータ分析が可能になってきたため、DCMもより一層高度なものになっていくでしょう。DCMは「一部の先進企業の取り組み」と考えられることがありましたが、今後はさらに広い分野で導入が進むことが期待されます。

(提供:Koto Online