政府与党は「令和6(2024)年度税制改正大綱」をまとめた。M&A関連では「イノベーションの創出・育成」と「中小企業の成長・活性化」に力を入れている。

イノベーションと中小企業活性化のM&Aで優遇税制

「イノベーションの創出・育成」では、人工知能(AI)などイノベーションにつながる研究開発や知的財産の取得や活用にかかわる所得に対して、30%の所得控除を認める「イノベーションボックス税制」の創設を盛り込んだ。イノベーションに積極的に投資する企業の税負担を軽減し、イノベーションの創出・育成を促進するのが狙い。同税制の創設は、G7でフランス、英国に次ぐ3番目という。

それに加えてスタートアップの資金調達や人材確保を支援するため、以下の内容も盛り込んだ。

①ストックオプション税制における年間の権利行使価額の上限について、設立後5年未満の株式会社が付与するものは現行の2倍の2400万円に引き上げ。また、設立後5以上20年未満であって上場企業でない会社もしくは上場企業でも上場後5年未満の会社が付与するものは現行の3倍の3600万円に引き上げる。

②エンジェル税制の再投資期間の延長について、令和7(2025)年度税制改正において引き続き検討する。

③スタートアップ企業の株式を取得した場合に、一定額の所得控除を認める「オープンイノベーション促進税制」の適用期限を2年延長する。

④親会社の持分を一部残すスピンオフを「適格株式分配」とする制度の適用期限を4年間延長する。

「中小企業の成長・活性化」では、一定の要件を満たしたM&Aの買い手企業が、株式等の取得対価を損金算入できる「中小企業事業再編投資損失準備金」を拡充する。複数回のM&Aを実施した場合に、準備金として積み立ててその額を損金算入できる積立率を現行の70%から最大100%に広げる。準備金を取り崩すまでの据置期間も現行の5年から10年に延長する。

成長意欲の強い中堅・中小企業が複数の中小企業を子会社化し、グループ一体となって成長していくよう促す。これにより、中小企業従業員の雇用を確保しながら、成長分野への円滑な労働移動を狙う。

文:M&A Online