2024年初のゴルフ場倒産(負債総額約33億円)が発生した。東京商工リサーチの大型倒産(原則負債総額30億円以上)と注目企業の倒産情報によると、長野県伊那市の信州伊那国際ゴルフクラブが2024年1月24日に、東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請し、同日に保全命令と監督命令を受けた。

市況の低迷や利用客の伸び悩みに加え、預託金の償還問題などがあり資金繰りが悪化したという。

2023年は宮城県名取市の仙台空港カントリークラブ(5月)と、静岡県御殿場市の東名小山カントリー倶楽部(7月)の2件の経営破綻が発生しており、いずれも売り上げの伸び悩みや預託金問題などが要因となった。

一方で、全国で147のゴルフ場を運営するパシフィックゴルフマネージメント(PGM、東京都台東区)が公表している月次の営業実績によると、2023年4~12月は来場者数、客単価ともに前年実績を上回っており、堅調に推移していることが分かる。この差はどこからくるのか。

スポンサー企業に譲渡予定

信州伊那国際ゴルフクラブは、1984年日本女子プロゴルフ選手権が開催された名門コースで、近年の年間売上高は4億円台で推移していたが、競争激化などによって厳しい経営状況下にあった。

ゴルフ場事業は、会社分割で新設した伊那国際ゴルフクラブ(東京都千代田区)に移管しており、裁判所の許可を得てスポンサー企業に譲渡する予定という。

コロナ禍の中、若者や女性にゴルフの人気が高まり、近年続いていたゴルフ人口の減少に歯止めがかかりつつあるが、同ゴルフクラブにはこの影響が及ばなかった格好だ。

地方で倒産が発生か

一方、PGMの月次の営業実績を見ると、2023年4~12月の既存ゴルフ場の来場者数は前年同期比101.8%、客単価は同103.2%となっており、この結果売上高は同104.7%と、5%近い伸びとなった。

同社は若者や女性を取り込む対策として、風呂やトイレの改修、バンカーをなくすなどコースの難易度を下げる改修を行っており、こうした取り組みが堅調な業績の一因となった。

併せて同社ではゴルフ場を買収することで事業を拡大しており、田中耕太郎社長は「東京、大阪、名古屋、福岡の4大都市圏内のゴルフ場であれば、経営が成り立つ」とし、大都市周辺のゴルフ場の買収に注力する方針を打ち出している。

M&A Online

(画像=「M&A Online」より引用)

また、全国で171のゴルフ場を運営するアコーディア・ゴルフ(東京都品川区)もPGM同様に、若者や女性の取り込みには積極的で、風呂やトイレ、レディスティーの改修、さらにはスループレーやハーフプレーなど幅広いプランの提供などを行っている。

同社もゴルフ場のM&Aで事業を拡大しており、2024年3月には静岡県掛川市のミオス菊川カントリークラブを取得する予定で、これによって運営ゴルフ場数は172に伸びる。

石井歓社長は「(東京、大阪、名古屋の)三大都市圏にこだわらず、収益改善が見込めるゴルフ場をしっかりと見極める」との考えを持っており、ミオス菊川カントリークラブの取得はこの考えに沿ったものといえる。

ゴルフ場ごとに状況が異なるものの、大都市圏から遠い地方ほど経営状態が厳しいことが予想され、加えてPGMやアコーディア・ゴルフなどの大手ゴルフ場運営会社による買収の対象となりにくいこともあり、今後もこれら地域での倒産の発生が見込めそうだ。

文:M&A Online