新規事業開発にコンサルティングは必要? 依頼するメリット・デメリット
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不確定要素が多い新規事業では、選択肢としてコンサルティングを活用する方法もあります。ただし、企画から運営までの全プロセスを任せられるわけではないため、活用範囲は慎重に判断する必要があります。

実際にコンサルティング会社を活用すると、企業にはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。本記事では、新規事業でコンサルティングを活用することによる効果や、依頼先を選ぶ際のポイントについて解説します。

新規事業では「外部の知見=コンサルティング」が有効になる

既存事業の延長線上にない新規事業では、参入する領域の新たな知識や情報が求められます。また、事業立ち上げのノウハウも必須になり、コンサルティングを活用することは有効的といえるでしょう。実績のあるコンサルティング会社に依頼すれば、事業化までのスピードを速めたり、成功率を高めたりする効果が期待できます。依頼先によっては市場調査や分析も代行してくれるため、質の高いデータが手に入ることもあるでしょう。

新規事業開発でコンサルティングを活用するメリット

新規事業を成功させるにはビジネスに関する知見のほか、立ち上げのノウハウも必要になります。専門家の力を借りると、新規事業の立ち上げプロセスはどのように変わるのでしょうか。

まずは、新規事業にコンサルティングを活用するメリットから解説します。

外部の知見・アイデア・ノウハウを得られる

新規事業のプランは、既存事業を超えた領域になることもあります。その場合は、新たな領域の知識や情報が必要になるため、コンサルティングの活用が有効になると考えられます。

事業立ち上げに精通したコンサルタントは、自社とは異なる視点でアドバイスをしてくれます。外部の知見やアイデア、ノウハウを活用できることにより、新規事業の成功率が上がることを期待できます。

特に、自社と類似した企業をクライアントにした実績があるコンサルタントは、参考になるデータを持ち合わせている可能性もあります。

プロが必要な市場調査を行ってくれる

新規事業のコンサルティングでは、専門的な市場調査を依頼することができます。どのような調査を依頼できるのか、以下で例を紹介します。

  • 市場調査(市場規模や市場特性、顧客のニーズなど)
  • 競合調査(競合企業の数や規模、最新の動向など)
  • フィジビリティスタディ(新規事業の実行可能性や採算性など)
  • 顧客満足度調査

市場調査を行っているコンサルタントは、目的に合わせた調査設計まで行ってくれます。「どのような調査が必要か?」という段階から相談できるため、自社が想定できていない可能性やリスクまで洗いだすことができます。

客観的なアドバイスをもらえる

第三者の視点から実現性や収益性を判断してもらえる点も、コンサルティングを活用するメリットです。依頼先によっては、同業他社や消費者、株主などの立場を踏まえて、さまざまな角度からアドバイスをしてくれます。

新規事業は機密情報にあたることが多いため、外部の相談者を見つけることが難しい傾向にあります。場合によっては、新規事業に向けて動いている事実を隠したいこともあるでしょう。コンサルティング会社との契約は秘密保持契約を含むのが通例のため、機密情報の外部への漏えいに配慮した上で相談ができます。

内部人材を新規事業のコアタスクに回せる

コンサルティングの依頼先によっては、事業立ち上げに付随するさまざまな業務を代行してくれます。そのため、手が空いた内部人材を新規事業のコアタスクに回して、立ち上げを加速させることも可能になります。

自社だけで新規事業を立ち上げる場合は、市場調査や分析、計画書の作成などを自力でこなさなければなりません。そのため、コアタスクの着手が遅れてしまう、リソースが手薄になってしまう可能性があります。

これらの業務をコンサルタントに任せると、内部人材の手が空き、営業活動やユーザーヒアリングなどのコアタスクに回すことができ、新規事業の準備が効率的に進むでしょう。

新規事業にコンサルティングを活用するデメリット

コンサルティングの利用が、思ったように効果につながらない、かえってマイナスにつながることもあります。新規事業をスムーズに立ち上げるために、外部を頼るデメリットも踏まえて計画を立てるようにしましょう。ここからは、新規事業にコンサルティングを活用するデメリットを紹介します。

コストがかかる

コンサルティングを活用すると、依頼内容に応じたコストがかかります。代表的なコストは、個々のコンサルタントに支払う報酬です。

実際にかかるコストは、顧問契約やスポットコンサルなどの契約形態によっても変わります。コンサルティングには幅広いプランや契約形態があり、相場を一概にいうことはできないため、コンサルティング会社に問い合わせてみるのがいいでしょう。

また、コンサルティング会社をマネジメントするコミュニケーションコストもかかるため、その分のリソースを確保しておく必要があります。

新規事業が成功するとは限らない

新規事業のコンサルティングは、必ず成功に導いてくれるサービスではありません。成功率を高めるサポートは受けられますが、費用をいくらかけても失敗に終わる可能性があります。

さらにいうと、もともとの成功率が低い新規事業では、失敗したときのダメージを極力抑えることも重要です。そのような観点でコンサルティングを活用することで、第三者視点でリスクを指摘してくれたり撤退ラインを判断してくれたりする役割を期待できます。

また、評価やフィードバックをする体制を整えておけば、新規事業の失敗は次に活かせます。短期視点だけでなくそうした長期視点で見ても、コンサルタントの活用は大きな助けとなるでしょう。

依頼先を選ぶ手間が生じる

新規事業に限定しても、コンサルティングにはさまざまな形態のサービスがあります。コンサルティング会社によってサービスの特性が変わるため、自分たちの事業や体制に合わせて依頼先を探さなければなりません。

依頼先によってどのような点が変わるのか、いくつか例を紹介します。

  • 在籍しているコンサルタントの質
  • 得意としている業界や会社規模
  • 料金体系やコストの総額
  • サポートしてくれる範囲

上記のほか、自社との相性も意識しておきたいポイントです。優れた実績があっても、スムーズな意思疎通やコミュニケーションが難しい場合は、計画が滞ってしまう可能性もあります。

そのため複数社のサービスを比較検討すべきですが、必要に応じて面談するなどの手間が生じるため、依頼先を吟味する時間は十分に確保しておきましょう。

新規事業のコンサルティング会社を選ぶ5つのポイント

新規事業の成功率を上げるには、どのようなコンサルティング会社を選ぶとよいのでしょうか。世の中には多くのコンサルティング会社があるため、ある程度の目星をつけて探すことが重要です。

ここからは、新規事業のコンサルティング会社を選ぶ際のポイントを解説します。

1.十分な実績・事例があるか

新規事業は経験で成功するものではありませんが、それでも実績や事例は1つの判断基準になります。実績・事例はウェブ上で公開されている場合があるため、各社の公式ホームページで確認をしてみましょう。

なお、会社単位の情報だけではなく、個人の実績・事例を確認することも重要です。担当者によって成功率が変わる場合もあるため、各コンサルタントの情報も確認してください。

2.どの分野・業界・規模を得意にしているか

前述の通り、コンサルティング会社、在籍コンサルタントによって得意なサポートや強みが異なります。自社に合った依頼先を見つけるために、「どの分野・業界・規模を得意としているか」もあわせて確認しましょう。

より手厚いサポートを受けるには、あらかじめ自社の課題を明確にすることも必要です。「なにを依頼するか」がはっきりしていると、目的に合ったコンサルティング会社を選びやすくなります。

3.円滑なコミュニケーションが取れるか

新規事業には不確定な要素が多いため、コンサルタントとは何度も話し合うことになります。このときにスムーズな情報共有や意識統一ができないと、事業立ち上げが遅れるなどの弊害が生じます。

コンサルタントのコミュニケーション能力は、ウェブ上の情報からでは読み取れません。自社の担当者との相性もあるため、面談やヒアリングなどを通して判断することが重要です。

4.提案力が高いか

ここでいう提案力とは、クライアントである自社の言葉に耳を傾け、課題解決につながるアイデアを考える能力です。コンサルタントの良し悪しは提案内容で決まるため、「有益なアドバイスをしてくれるか」は重要な判断基準になります。

なお、十分なノウハウがあっても、アイデアや意見を押しつけてくるコンサルティング会社は望ましくありません。自分の意見を通すことや報酬を増やすことよりも、クライアントの目的達成に力を注いでくれる依頼先を選ぶことが重要です。

そのため、提案内容の質だけではなく、「自社の意向を汲みとってくれるか」についても確認しておきましょう。

5.長期的に良好な関係を築けるか

「コミュニケーション」や「提案力」にも通じる部分ですが、新規事業の立ち上げ準備は長期に及ぶこともあるため、長く付き合えるコンサルタントを探すことも重要です。特定のコンサルティング会社と良好な関係を築くと、相互理解によって提案の質が上がったり、コミュニケーションコストを減らせたりする効果が期待できます。

ただし、最初のうちは人柄まで判断することが難しいため、短期契約から始めることを検討してみましょう。短期のテスト期間を設けると、「この会社とは合わない」と感じたときに方針転換がしやすくなります。

コンサルティング契約時の注意点

目的に合った依頼先が見つかっても、契約によってサービス内容が変わることもあります。コンサルティング契約を結ぶ前には、どのような点を意識すればよいのでしょうか。

以下では、特に注意したい3つのポイントを紹介します。

伴走してもらえる範囲を確認する

新規事業の準備段階から立ち上げまでサポートを受けたい場合は、実行フェーズまで伴走してもらえる契約にする必要があります。企画やアイデア出しの段階でサポートが止まる契約もあるので、「どこまで伴走してもらえるか」は必ず確認しましょう。

伴走してもらえる範囲が決まったら、社内で進めるプロセスも整理することが重要です。プロジェクトの進行を具体的にイメージしながら、どこまでのサポートが必要になるかを慎重に見極めてください。

明確なゴールを共有する

コンサルティング会社との契約書を作成する前に、求めている成果を明確に伝えましょう。分かりやすいゴールを共有しておくと、依頼先も必要な作業を洗いだすことができるため、両者が納得しやすい契約内容になります。

また、意思統一を図る意味でもゴールの共有は必要です。同じ方向性で協力体制が築けるように、積極的な情報提供を心がけましょう。

料金相場を改めて確認する

最初の相談時に伝えられた料金が、契約時にもそのまま反映されるとは限りません。契約内容を調整する過程で料金が変わることもあるので、契約前には料金を改めて確認しましょう。

契約形態にもよりますが、新規事業のコンサルティング費用はコンサルタントの稼働時間に応じて「毎月〇〇万円」や、成果報酬で「2年間で発生した売上の△△%」のように決められます。参考として、毎月数回の訪問やアドバイスを含む顧問契約では、月額数十万万円程度が相場とされています。

ただし、新規事業の内容やコンサルティング会社によっても料金は変わるため、相場を一概にいうことはできません。自身が依頼する内容の相場を知るためにも、複数のコンサルティング会社に同じ内容で見積もりを取るなどの方法を検討するとよいでしょう。

コンサルティング会社に求める役割を明確にしよう

コンサルティング会社は、新規事業の全プロセスを代行してくれるわけではありません。依頼先によって得意分野も変わってくるため、事前に「なにを依頼するのか」や「どういったアドバイスが必要なのか」を明確化することが重要です。

実際に伴走するイメージを持ちながら、コンサルタントに求める役割を整理した上で依頼するようにしましょう。

(提供:CAC Innovation Hub