アフィリエイト業界において、独自の技術力と市場戦略で確固たる地位を築いてきた株式会社リンクエッジ。成功の背景には、スマートフォンの普及とともに急速に発展したビジネスモデルがありました。今回は、株式会社エフ・コードの工藤社長がモデレーターを務め、株式会社リンクエッジの川合社長との対談を通じて、成長の軌跡から今後のビジネスチャンスまで、企業としての強みや将来戦略について語り合います。競争の激しいマーケティング業界で、彼らはどのようにして差別化を図っているのでしょうか。
大学在学時からリサイクルビジネス、フリーペーパーなどの学生ビジネスを展開。ユナイテッド株式会社(元・ngi group株式会社)など勤務を経て、2011年、株式会社リンクエッジを設立する。
東京大学在学中に経営コンサルティング会社に参画。ベンチャー企業支援や大企業向けプロジェクトに従事。 その後、自動車学校のポータルサイト運営会社に役員として参画。2006 年、株式会社エフ・コードを創業しデジタルマーケティン グ支援を開始。
これまでの成長変遷
工藤氏:以前お会いした際、すでに御社はASP(アフィリエイトサービスプロバイダー)としての存在感を発揮されていました。それ以来、ご活躍を追いかけておりましたが、改めて創業から現在に至るまでの事業変遷をお聞かせいただけますか?
川合氏:リンクエッジは、大学の同級生である安田と私が26歳の時に共同で創業しました。 私はもともと、あるネット広告代理店に就職しましたが、1年ほどで退職し、その後安田が勤めていたモバイル広告代理店に営業職として再就職しました。その後、独立を決意し、現在のリンクエッジを立ち上げたという流れです。
当時は、アフィリエイト関連の商材をあまり扱っていませんでした。しかし、アフィリエイト市場の成長可能性に気づき、独立後はこれをメイン事業に据え、現在の形へと発展していきました。
工藤氏:当時のアフィリエイト市場はどのような状況だったのでしょうか?
川合氏:ちょうどスマートフォンの普及が始まった時期で、スマホを対象としたアフィリエイトはまだ黎明期でした。 私たちはその早期参入により、ある種の先駆者的な立場を築くことができ、それがビジネスの成長に繋がりました。
工藤氏:スマホだとトラッキングシステムが独特な要素だと思いますが、そうした技術的な対応はすぐに可能だったのでしょうか?
川合氏:アプリに関しては技術的に難しい部分もありましたが、ウェブブラウザでの対応はそれほど困難ではありませんでした。外部のパートナーにシステム開発を依頼し、その後は営業とマーケティングに注力することで、現在の規模まで成長しました。
工藤氏:つまり、最初はアプリではなく、スマホのブラウザベースでのビジネス展開が主だったわけですね。
川合氏:はい、そうです。今もブラウザベースがメインです。 現在はアプリのアフィリエイトも手掛けていますが、こちらに関しては、他社の計測システムと連携し、弊社のシステムと統合して成果を通知する形を取っています。そのため、アプリ計測自体に特化しているわけではありません。
工藤氏:御社の強みは、やはりスマホブラウザ領域にあるということですね。
自社の強み
工藤氏:スマホアフィリエイト領域には多くの大手企業も参入してきたと思いますが、その中で御社が競争に勝ち続けている理由は何でしょうか?
川合氏:成長している業界やクライアント、そして最新の手法をいち早く取り入れ、常にビジネスポートフォリオを更新し続けてきたことが、我々の成功の秘訣です。また、それに伴い、関連するサービスを自社開発できたことも大きな要因です。
例えば、アドアフィリエイトが流行した際、アフィリエイターのキャッシュフローが悪くなり、資金が尽きるとプロモーションが停止してしまうことがありました。そこで、成果が上がった翌日に支払いができるシステムを開発し、その結果、当時の売上が9億円から30億円に急成長しました。トレンドを捉えて迅速にサービス展開することで、お客様からの信頼を得られる体制を築くことができました。これが私たちが競争力を維持する秘訣だと思います。
工藤氏:興味深いですね。プロダクト面やクライアント面での成功は理解できますが、特にプロダクト開発に関しては、広告トラッキングのような技術を内製化するには相当な技術力が必要だったのではないでしょうか?どのように対処されたのですか?
川合氏:その点については、経営に携わる者がエンジニアリングにも関与するべきだとの結論に至りました。結果として、共同創業者の安田がエンジニアに転身し、CTOとしてプロダクト開発をリードすることになりました。
安田がCTOとなってからは、会社全体の事業理解が深い者が開発を先導することによって速度が飛躍的に向上し、それが大きな強みとなっています。
工藤氏:非常に興味深いですね。多くの企業がCTOやVPoE不足で開発組織を強化できずに悩んでいますが、経営陣の一人が開発にコミットするというのは一つの解決策かもしれませんね。
川合氏:そうですね。また、支払いシステムにおいても、経理の仕組みを理解していたからこそ、アフィリエイトシステムと連携させて効率化することができました。これも当社の大きな強みとなっています。
工藤氏:クライアント側では、今どの分野が特に強いのでしょうか?
川合氏:以前は、スマホゲームやポイントアプリ、マッチングアプリが強かったのですが、ゲーム市場は成熟し、今では勝者が固定化されています。新作ゲームが出た当初は大規模なプロモーションを行いますが、その後は残存ユーザーを維持する形となり、安定した売上は難しい状況です。
現在は、VOD(ビデオ・オン・デマンド)やリユース系(買取業者)が大きく伸びています。特にリユース関連では不動産買取、車買取、貴金属が好調です。また、コロナ融資が終了した影響もあり、ファクタリングや資金繰り調整サービスも急成長しています。産業構造や法律の変化によっても新たな案件が生まれており、例えば産業医の派遣など、クライアントとして開拓している分野が増えています。
工藤氏:狙う業界はどのように決定されているのですか?
川合氏:私が主に決めています。安田がプロダクトサイドを見て、私はセールスサイドを担当するという体制です。
現在、クライアントは約2000社、アフィリエイト登録者は5万人に上ります。このネットワークはすぐには構築できないもので、規模は大手には及ばないかもしれませんが、当社の強みとなっています。
工藤氏:従業員数はどのくらいですか?
川合氏:現在、約40名です。営業部門が約20名、開発部門が約10名、管理部門が約10名という構成です。
工藤氏:なるほど、筋肉質な組織ですね。
川合氏:そうですね。ある程度のシステム化により、手間をかけずに効率的に運営しています。サブスクリプション型の売上モデルに近い形で収益を上げています。
工藤氏:クライアントとの直接取引を重視されていますか?それとも代理店を通しての取引も多いのでしょうか?
川合氏:当初は代理店経由の取引が多かったのですが、現在は約9割が直取引です。代理店を挟むとコミュニケーションが伝言ゲームのようになり、煩雑になることが多いため、直取引にシフトしました。今では、直接クライアントと取引することが重要だと感じています。
工藤氏:大手ASPも含め競争が激しい中で、特に御社が強い領域や今後拡大を図る市場はどこになるのでしょうか?
川合氏:金融ジャンルや旅行関連の大規模ジャンルにも注力していますが、特に小さなニッチ市場にフォーカスし、それを独占する戦略を取っています。例えば、タクシーアプリや産業医派遣、VPNなど、大手が手をつけない領域で存在感を発揮しています。また、出資やジョイントベンチャーを通じて独占案件を作り、当社の系列を広げることで、独自の経済圏を形成しています。
社長が考える今後のビジネスチャンス
工藤氏:成果報酬型広告のマーケットは堅調に推移していますが、その中で今後も戦い続けるか、あるいは新たなマーケットを狙っていくか。新規事業の展望についても伺いたいです。どんなビジネスチャンスを見据えているのでしょうか?
川合氏:現在、売上は約60億円ですが、例えば金融ジャンルに低マージンで参入すれば200億円の売上も可能です。しかし、それにはあまり価値がないと感じています。既存のクライアントとも競合することになりますし、私たちがそこに参入する意義も薄いのではないかと思っています。
そのため、現在は新しいジャンルやニッチな市場を開拓しながら進めています。2~3年で売上100億円には到達できる見込みですが、今のやり方ではそれが限界だと考えています。したがって、これまで培ったウェブマーケティングやアフィリエイトの強みを活かして、私たち自身で新しいサービスを立ち上げたり、ジョイントベンチャーを通じてマーケティング部門を担当するなど、マーケティングやテクノロジーの力で事業を成長させたいと考えています。
工藤氏:先ほどマージンの話が出ましたが、大手ASPでは通常20%~30%程度のマージンですよね。御社ではその水準を保てていますか?
川合氏:ニッチな領域であれば十分に保てています。ただ、大きな市場やジャンル、いわゆるレッドオーシャンでは、なかなか維持が難しいですね。そういった場合は無理に参入せず、慎重に判断しています。
工藤氏:レッドオーシャンでの価格競争に巻き込まれるより、ニッチ市場を狙い、ジョイントベンチャーを通じて事業の収益を取り込んでいく戦略というわけですね。
M&A・IPO・資金調達など今後の資本戦略と事業戦略
工藤氏:そういった仕掛けが増えてくると、資金が必要になってきますよね。御社の資金調達や資本戦略について、どのようにお考えでしょうか?
川合氏:現状ではエクイティ(株式による資金調達)は行っておらず、主にデッド(借入金)で対応しています。ただ、将来的にはファンドを組成することも視野に入れており、その方向性も面白いと考えています。
工藤氏:IPOについてはどうお考えですか?
川合氏:IPOについては、私たちのビジネスモデルには向いていないと考えています。 上場するためには、売上や予算を厳格に管理する必要があり、アフィリエイト業界ではそれが難しいと感じています。そのため、上場の準備や維持が大変だと思っています。
工藤氏:なるほど。今後は、ジョイントベンチャーや事業買収を通じた成長戦略も有効かもしれないですね。
川合氏:そうですね。今後は、ウェブマーケティングの知見を活かして、ジョイントベンチャーを通じてマーケティング部門を支援し、事業成長を促進する方向で事業展開していきたいと考えています。特にニッチな市場での成長を追求しています。
工藤氏:長期的にはどのような会社を目指しているのでしょうか?
川合氏:将来的には、総合商社のように、アフィリエイトを通じて川上から川下まで幅広く手掛ける企業に成長したいと考えています。全体のビジネスエコシステムを構築し、強固な企業基盤を作りたいですね。
工藤氏:その目標に向けて、今直面している課題は何でしょうか?
川合氏:やはり、人材の確保が最大の課題です。総合商社が成功する理由の一つは、高いレベルの人材を持っているからです。新卒採用に力を入れ、質の高い人材を確保し、育成することで、事業をスムーズに進める体制を整えています。新卒を社長の部下として育て、直接指導しながら育成を進めています。
最後に一言
—— お二方ともありがとうございました。最後に、弊社のメディアユーザーやマーケティング界に従事するビジネスパーソンに向けて、一言ずつお願いできますでしょうか。
川合氏:今回の記事をご覧いただき、弊社に興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、ぜひ採用窓口までご応募ください。 私たちは常に新しいチャレンジを求めていますので、一緒に働けることを楽しみにしています。
工藤氏:私たちはこの2年間で11件のマーケティングおよび開発領域の企業を買収してきました。ZUU onlineをご覧いただいているオーナー様の中で、同様の取り組みを検討されている方がいらっしゃいましたら、ぜひお気軽にエフ・コードにご連絡ください。
—— お二方とも、貴重なお話をありがとうございました。