ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「円買い介入と利上げに耐えられない日本経済の証拠が出る。週末の中東相場は?」

ドル円=150-155、ユーロ円=163-168、ユーロドル=1.06-1.11

通貨ごとの注目ポイント

*円通貨10位(10位)、株価7位(7位)、日本の資産減少、成長見通し引き下げで介入・利上げの影響。まだ、ひ弱な日本
(中東で一時152円前半へドル円下落)
先週末のNY終値は152.98だったが、中東で152円前半へ下落、中東の実需の円買いか、WSJのイスラエル・イラン緊張拡大の記事か。ただ今朝の東京では152円半ばまで戻している(東京は休場で仲値なしの日)
 
(円相場、株価、金利の現在位置。介入効果消えれば相場は落ち着く)
円相場は12通貨中で10位。7月の円買い介入以降は一時5位まで浮上したが、介入がなければ円はじり安となる。日経平均株価は一時20%を超えて首位に立ったこともあったが、介入や利上げで8月にはマイナス圏まで下落、現在は13.71%高まで回復している。10年国債利回りは一時1%台まで上昇したが、0.9%台で概ね安定推移している。

(介入の弊害の証拠が出始めた)
 円買い介入と日銀利上げの結果が出始めた。7~9月期のGPIFの運用実績は、円高や国内株価の下落などを背景に9兆1200億円余りの赤字となった。また主要企業の7~9月の企業年金の運用利回りは、0.96%のマイナスだった。日本企業や個人投資家も同じような状態だ。個別に調査するより、日本は世界一の対外純資産国なので円高になるとこのような結果となる。日経平均も製造業の収益悪化で急落した。
 日本政府は貯蓄から投資を標榜するも行動は逆だ。もちろん物価対策は必要だが、日本経済が成長した利益を活用したい。為替をいじると弊害が大きい。
海外要因での資産減少なら仕方はないが自らの政策による資産減少はもったいないとしか言えない。

(米大統領選挙)
米大統領選挙の結果がどうなろうと、重要なのは日本経済がしっかりすること。投資家も自分がしっかりすること。現在は各商品で売りも買いも自由に出来るので投資家は政府のせいで諦めるのではなく自分で対処したい

(内閣府 今年度のGDP成長率見通し 実質+0.7%に下方修正)
内閣府は、今年度のGDP成長率の新たな見通しを示し、一部の自動車メーカーによる認証取得の不正問題の影響で自動車の輸出の回復が遅れていることなどから、物価の変動を除いた実質でプラス0.7%に下方修正した。IMF、OECDも日本の成長見通しを引き下げている。

(植田日銀総裁発言は円高を誘導した)
*為替の変動が物価に影響を与える面がある
*成長見通しが実現していくとすれば、政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく

*米ドル「通貨3位(4位)、株価(NYダウ)9位(8位)、日米ともに経済の牽引車にダメージを与えれば国が衰退する」
(ドル・株強く、金利も高い)
 ドルは年間3位、株価指数はナスダックとS&Pが20%高、NYダウは11.58%高。10年国債は4.36%と豪、NZ、英と並んでいる。金利的な魅力もある。

(10月雇用統計は経済の実態からは悪くはなかった)
 米10月雇用統計では、非農業部門雇用者数が予想の11.3万人増を大きく下回る1.2万人増となった。失業率は4.1%と前月と変わらず。平均時給は前月比で9月の0.3%増から0.4%増へ改善した。
内容は悪くはなかったので当初雇用者数の大幅減でドルは下落するも、次第にドルは上昇、株価、金利も上昇した。
 雇用統計では、雇用者数においては従業員が勤務しなかった場合、たとえ実際には雇用されていてストや悪天候の影響で勤務できなかっただけだとしても、就業者としてカウントされない。一方、失業率ではそうした従業員が就業者から除外されることはない。従って雇用者数と失業率では今回のような強弱がつく結果となる。今後、ストや災害から労働者が復帰すれば非農業部門雇用者数も回復する。

(今週 FOMC)
 最近の米国CPIが2%台に留まっていることや、経済指標で強いものが多いことから、一時0.5%利下げ観測もあったが、0.25%利下げに留まるだろう

(大統領選挙でどう変わるか)
 大統領選挙は接戦だ。大統領選だけでなく、上院下院で民主・共和のどちかが勝利するかも影響する。IT・工学・科学関連の就業者は民主党、ラストベルトや二次産業中心の地域では共和党支持者が多いという。後者はトランプ氏が状況改善に動いてくれるという期待が強いが、そうなれば、米国の鎖国化によるインフレ高進や財政支出増で永続性はない。結局は元の体制に戻りそうだ。それは日本の円安による物価論争にも似ている。日本で稼いでいるのは円安による製造業や年金を含めた投資家だ。ただ円高物価安を求める声は票に繋がる主婦層だ。日米ともに経済を支える産業よりも、数は多いが弱者を救う政策も強調されがちだが、経済の牽引車にダメージを与える政策となると国全体が衰退するだろう。

*ユーロ「通貨5位(5位)、株価6位(6位)DAX)、5週ぶりにユーロは対ドルで週足陽線。独はリセッション逃れる。ユーロ圏インフレは2%台へ戻すか」
(5週ぶりにユーロは対ドルで週足陽線)
 5週ぶりにユーロは対ドルで週足陽線となった。3Q・GDPと10月消費者物価の影響。株価は独DAXが14.94%高、独10年国債は9月末の2.14%から2.41%まで上昇している。

(独GDPがリセッション逃れる)
ユーロ圏3Q・GDPは、前期比0.4%増加し、予想の0.2%増を上回った。 しかし工業部門は景気後退に陥り、個人消費もほとんど伸びておらず、依然として弱さが残ることが示された。独は前期比0.2%増と予想外に拡大し、景気後退を回避したことが最大のサプライズだった。フランスとスペインも市場予想を上回る伸びを記録した。

(10月消費者物価が2%台のせで、大幅利下げ観測後退)
 10月のユーロ圏消費者物価は前年同月比2%上昇と、前月の1.7%上昇を上回った。予想は1.9%上昇。エネルギーコストの値下がりが小幅だったことが主な要因。コアは前年同月比2.7%上昇と、前月と同じ。食料品価格は伸びが加速した。低迷する景気を浮揚するために大幅利下げを主張する声もあったが、今回の結果でこうした見方に警鐘を鳴らすECB当局者を後押しするものとなった。

(ラガルドECB総裁)
 ラガルドECB総裁は、ユーロ圏の消費者物価上昇率が目標である2%に向かっているものの、インフレとの闘いはまだ終わっていないとの認識を示した。「目標は視野に入っているが、インフレが抑制されているとは言えない」と語った。「ベース効果のため、今後数カ月でインフレ率が上昇することは分かっている」と指摘し、「利下げの幅と時期は今後数週間および数カ月の経済データによって決定される」とこれまでの方針を繰り返した。 
 ラガルド総裁は「2%の目標が持続可能な方法で達成されるのを見たいと思っている。大きなショックがない限り、2025年になるだろう」と述べ、消費主導の景気回復を期待しているとあらためて表明。
「可処分所得の増加分は最終的に消費に回されると確信しており、経済の歴史がそれを示している」と説明した上で、「現在入手している情報と分析に基づくと、24年と25年、26年にリセッションに陥るとは見込んでいない」と話した。

*ポンド「通貨2位(2位)、株価16位(16位)、今週は0.25%利下げしても予算案で緩和策がやや後退」
(ポンドは年間2位を維持)
 ポンドは年間2位を維持、対ドルでは5週連続陰線、対円では強い。株価は年初来5.74%高と強くはない。10年国債は4.46%だが米国とほぼ並んでいる

(予算案が出たが今週は0.25%利下げか)
  今週11月7日の英中銀の政策金利決定では0.25利下げする可能性が依然高いとみられているが、来年の見通しは不透明感が強まった。 先物市場では、英中銀が来年末までに0.25%の利下げを4回程度行うと予想されており、予算案発表前の5回程度から減少した。英中銀が7日までに予算の影響を新たな経済予測に完全に反映させる時間はなさそうだが、大まかな推計は出すだろう(一部では金利据え置き予想も出始めている)。
「来年はGDP成長率が高まるというOBRの判断に英中銀が同意すれば、今後1年間の利下げ加速を正当化するシナリオを構築することが難しくなる。
一方、予算案に対する国債市場のネガティブな反応は一時的との見方もある。市場の関心は財政からインフレの緩和など根本的なマクロ経済要因に移っていく。

(予算がインフレ率を押し上げ、英中銀の利下げペースが鈍化)
 労働党政権の来年度予算がインフレ率を押し上げ、英中銀の利下げペースが鈍化するとの見方が広がった。
リーブス財務相は、公共サービスの立て直しが必要だとして過去30年間で最大の増税計画を発表したほか、財源確保に向けて借り入れを増やす方針も明らかにした。予算責任局(OBR)は、予算は短期的に経済を加速させるがインフレ率も上昇させ、来年の消費者物価上昇率を0.5%押し上げるとの見方を示した。
OBRは来年のインフレ率を平均2.6%と予想し、従来予想の1.5%から引き上げた。これを受けて市場では利下げ観測が後退した。
全体的な借入額は意外ではなかったが、支出拡大の前倒し、最低賃金引き上げ、事業主の雇用コスト増加はインフレを押し上げる。 ただ、トラス政権が財源の裏付けのない減税や支出を打ち出した際と比べ、英国債価格下落は小幅にとどまる。

(来週は3Q・GDP)
 来週の焦点は3Q・GDP。前期比で0.3%増の予想、2Qは05%増。前年比で0.6%増の予想、2Qは0.7%増。やや減速する。ただ年初はリセッション入りすると言われていたので、そこからは躍進した。

*豪ドル「通貨7位(5位)、株価14位(14位)、インフレは鈍化しているが、金利引き下げは近づいているのだろうか」
(豪ドルは対ドルで5週連続陰線と弱い)
 豪ドルは対ドルで5週連続陰線と弱い。対円でも週足ではボリバン中位で伸び悩んできた。豪全株指数は7.03%高と他市場と比べれば強くはない。10年国債利回りは4.56%とNZより高い

(インフレは鈍化しているが、金利引き下げは近づいているのだろうか)
 3Q消費者物価は前年比では2.8%上昇で、2Qの3.8%上昇から鈍化し、2021年初め以来3年半ぶりの低水準だった。政府による電気料金の補助やガソリン価格の下落を受けた。21年後半以降で初めてRBAの目標レンジである2-3%以内となった。政府の補助で電気料金が17.3%下落したほか、ガソリン価格が6.2%下落したことも影響した。
 インフレは鈍化しているが、金利引き下げは近づいているのだろうか?インフレ上昇の最大の寄与は、娯楽と文化(1.3%増)と食品とノンアルコール飲料(0.6%増)。
具体的には、旅行費や宿泊費(国内・海外とも)、外食費やテイクアウト費の大幅な上昇が指摘された。しかし、これらの値上がりは、自動車燃料と電気の価格が大幅に下落したことにより、部分的に相殺された。今週のRBAの会合がおそらくより興味深いものとなっているのは、2021年以来初めて、年間総合インフレ率(2.8%)が現在、目標範囲である2~3%内に収まっていることである。
しかし、より極端な価格変動を除外し、RBAが好む指標としてよく引用されるトリム平均インフレ率の年間率は、3.5%と依然としてその範囲外にある。
最新のインフレ統計がRBAに金利引き上げを急がせるのに十分だとは考えていない。むしろ、来年第1四半期が利下げ開始の最も可能性の高い時期だと示唆している。この数字は正しい方向への一歩ではあるが、労働市場の長期にわたる逼迫をめぐる懸念から、RBAは政策金利を4.35%に据え置くだろう。

(来週も重要指標)
来週も金融政策に影響を及ぼす3Qの賃金指数(予想は前年比で3.8%増、2Qは4.0%増)、10月雇用統計もある。

(中国にも注目)
 最大貿易相手国の中国が9月から景気刺激策や金融緩和策を打ち出しているが、中国株を上昇させているが、まだ経済指標には現れていない。
中国は11月4-8日に開催する全国人民代表大会(全人代)常務委員会で、経済支援に向け今後数年間で国債など10兆元(1兆4000億ドル)超の追加発行を承認することを検討している。

*NZドル「通貨9位(9位)、株価15位(12位)、円との9位、10位争いは続く。企業信頼感は改善」
(円との9位、10位争いは続く)
 円との9位、10位争いは続く。円もNZドルも対ドルで5週連続で弱い。従ってNZドル円は91円前後でもみ合っている。株価も年初来6.7%高と強くはない。10年国債利回りは4.49%と豪ドルより低い。米英と同レベル。

(今週はNZ中銀の金融安定化報告、3Q雇用統計、4Qの企業インフレ期待など)
 今週はNZ中銀の金融安定化報告、3Q雇用統計、4Qの企業インフレ期待などの発表がある。
中銀は10月の政策会合で、政策金利0.5%引き下げて4.75%とした。これは2回連続の利下げとなり、市場の予想と一致した。年間インフレ率は、2024年2Qの3.3%から2.2%に低下した。目標範囲である1~3%内に戻った。経済は現在、過剰生産能力に直面しており、低インフレ環境に向けて価格と賃金設定の調整を促している。その結果、中銀はは、生産、雇用、金利、為替レートへの混乱を最小限に抑えながら、安定したインフレを維持するために金融政策を緩和することを選択した

(金利引き下げ効果、企業信頼感が改善)
 10月の企業信頼感は、今後1年で景気が改善すると回答した企業が差し引き65.7%で、前月の60.9%から上昇した。金利引き下げで楽観論が高まり、将来に関する活動指標が上昇した。
向こう1年の自社事業の成長を予想した企業は差し引き45.9%で、前月の45.3%から増加。金利の着実な低下が貢献し、活動が前年より減少していると報告する企業の割合が低下している。

(喜ぶべきでない貿易赤字縮小)
 経済の弱さで輸入需要が抑制され、年間貿易赤字が過去2年余りで最小となった。9月までの12か月間の赤字は91億NZドル。これは2022年3月以来の最小額で、昨年5月の過去最高の171億NZドルの赤字と比べると小さい。ニュージーランドは、原油、輸送機器、国内で生産されていない多くの原材料を輸入する必要があるため、通常、年間貿易赤字を計上している。しかし、2023年および2024年の大半にわたる高金利の累積的な影響により、経済成長が停滞し、企業投資の低迷につながっている。設備・機械の年間輸入は前年同期比11%減少し、乗用車の輸入は23%落ち込んだ。

この結果は、投資の流れや観光などのサービスを含む貿易のより広範な指標である経常収支赤字がさらに縮小することを示唆している。この赤字は6月までの1年間で276億NZドル、国内総生産の6.7%であり、2022年末には過去最高の9.4%に達した。 年間輸出も減速しているにもかかわらず、貿易赤字は縮小している。9月までの1年間の海外輸出額は694億NZドルで、前年比1.2%減となった。