メキシコペソ見通し
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「雌伏の時、3つの悪材料でペソの浮上も勢いなし」メキシコペソ見通し

予想レンジ 7.3-7.8

 (ポイント)
*3つの悪材料でペソの浮上も勢いなし
*トランプの関税が米国企業に与える悪影響は大きい(経済相)
*今夜は消費者物価の発表
*ムーディーズの見通し引き下げとメキシコ政府の反論
*メキシコ大統領、移民巡りトランプ氏と協力を示唆
*政策金利は予想通り0.25%引き下げ。ペソ下落より経済支援を優先
*中国強硬派のルビオ国務長官任命と原油の米国内掘削促進観測でペソ下落
*メキシコは対米報復関税示唆
*司法制度の混乱続く、最高裁判事8名が同時に上院に辞表
*3Q・GDPは予想を上回る
*海外からの投資誘致のための税控除策を打ち出す
*IMFも成長見通し下方修正。メキシコ中銀、OECD、世銀に続く
*最低賃金の引き上げを狙う(現在日給248.93ペソ=約1900円)

(3つの悪材料でペソの浮上も勢いなし)
7月の日銀の大規模円買い介入の影響も薄れ、ドル円や各クロス円が一目均衡表の雲の上に出始めメキシコペソ円もしんがりで浮上し、11月20日にボリバン2σ上限に達したが、ウクライナ・ロシア紛争激化でリスク回避の動きとなり雲の上は維持しているが反落した。
11月月間は10位、年間は最下位。
 10年国債利回りは10.28%と政策金利引き下げでも低下しない、株価(ボルサ指数)は年初来12.57%安と冴えない。

(3つの悪材料)
3つの悪材料でペソの浮上も勢いなし。3つとは「司法制度改革への内外の懸念」、「トランプ次期政権の対メキシコ強硬策示唆」、「中東やウクライナ紛争の激化によるリスク回避」で、メキシコの苦難は続く。ただ、それぞれの要因で悪材料に打たれ強くなっている部分も感じられる。

(トランプ政権の「掘って掘って掘りまくれ、強制送還、200%関税」に立ち向かう)
トランプ政権の「掘って掘って掘りまくれ、強制送還、200%関税」という激しい政策はいずれもメキシコに関わってくる。「掘って掘って掘りまくれ」は環境問題を無視してエネルギー資源を掘削することで、エネルギー価格の下落となり資源大国メキシコにネガティブな影響。不法移民の強制送還は一部メキシコ移民の失業となる。メキシコへの郷里送金も減少するかもしれない。メキシコ経由の中国車に200%関税をかけると経営が成り立たなくなる。
 ただ、この3つの政策は米国にとっても返り血を浴びる可能性の大きい政策だ。壮大な経済実験である。そう簡単に推し進められるものではない。時間もかかる。海外の工場を米国に誘致するというが、トランプ政権の4年では終わらない。米国インフレが上昇すれば4年後の政権交代もある。相場に携わる者も今後は何度も重要な判断を迫られる。
 ただ今のところ、トランプ氏の大統領選挙後もペソは打たれ強い。

(エブラルド経済相、トランプ関税が米国企業に与える影響は)
 メキシコのエブラルド経済相は国内に事業拠点を置く多国籍企業の数に言及。メキシコと米国の通商関係を危険にさらそうとする行動は何であれ何千もの企業に影響を及ぼすし、メキシコで収益を得ていない主要米企業はほとんど存在しないと付け加えた。
またエブラルド氏は、自身が率いる経済チームが来年1月20日のトランプ大統領就任前に、次期米政権の要人と面会する準備を進めていると述べた。
中国が米国の貿易障壁を回避する目的でメキシコを「裏口」として利用しているという米国側の懸念も否定している。中国の北米地域への投資に占めるメキシコの比率はわずか0.4%で、投資の3分の2強は米国に向けられているという。
経済相は、フォード・モーターなど大手自動車メーカーの間で、メキシコから生産拠点を移す計画も見当たらないと強調した。

(今夜は消費者物価の発表)
 昨日発表の9月小売売上は前年比1.5%減少、予想の1.2%減少、前回の0.8%減少より悪化した。今夜は3Q・GDP最終値、9月経済活動指数、11月前半消費者物価が発表される。

(ムーディーズの見通し引き下げとメキシコ政府の反論)
 ムーディーズはメキシコの格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」へ引き下げた。理由として、財政赤字の拡大を中心とする政府支出の増加、最近の司法制度の見直しによる「抑制と均衡)の崩壊」のリスクを挙げた。格付けは投資適格級の「Baa2」を確認。
 メキシコ財務省はムーディーズの判断に関し、2025年予算案や、政府が計画している財政政策、経済予測に関する情報を欠いていると反論した(2024年は前政権の積極財政支出で赤字が拡大するが2025年は縮小するという予算案)。