この記事は2024年11月22日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「来年以降も上昇が見込まれる石破新政権の関連株」を一部編集し、転載したものです。
11月11日召集の特別国会で石破茂氏が決選投票を経て、首相に指名された。少数与党での船出ということで、先行きの不透明感もマーケットでは意識されている。本稿では、石破新政権が掲げる政策のキーワードの中から「地方創生・防災」と「防衛」という二つのテーマの関連株について、今後の見通しを考えたい。
まずは、地方創生・防災関連株について見ていこう。石破首相は、2015年に初代地方創生担当大臣に就任したほか、かねて防災庁の設立を訴えてきた。しかも、熊本地震(16年4月)や能登半島地震(今年1月)、30年以内の発生確率が8割程度とされる南海トラフ地震などを踏まえると、地方の災害リスクは高まっている。地方にとって防災は、地方創生と並び関心が強いテーマといえる。
こうした背景から、地方創生・防災関連株に注目が集まっている。実際に地方創生・防災関連株の年初来の動きに着目すると、TOPIXを安定的に上回るようになったのは、自民党総裁選で石破氏が勝利した9月27日以降である(図表)。
では、石破政権の支持率が低下すると、地方創生・防災関連の株価は低下するのだろうか。
筆者は支持率の低下によって株価が下落することはないと考える。というのも、首都圏における地価の高騰や過密化の問題により、今後、大規模工場の新設が地方で相次ぐからだ。すでに半導体業界においては、台湾積体電路製造(TSMC)とラピダスがそれぞれ熊本と北海道に工場を新設している。石破政権の誕生で脚光を浴びている地方創生・防災関連株は、こうしたトレンドに乗って今後も上昇していく公算が高いと思われる。
次に、防衛関連株について考えてみたい。石破首相は10月、これまで先送りされてきた防衛増税の開始時期について、今年末の税制改正の議論で開始時期を決着させる方針を示すなど、防衛費の拡大路線を貫いている。また、石破首相が主張する日米地位協定の見直しにも、相応の防衛費が必要となるとみられている。
こうした動きを受け、防衛関連株への注目度は高まっており、足元では、TOPIXを大きく上回るパフォーマンスを示している。もっとも、石破首相の政権運営が不安定化しても、防衛関連株は上昇していくとみる。なぜならば、台湾有事など東アジアでも地政学リスクが大きく高まっていることに加え、トランプ新政権が誕生すれば、外交安全保障の観点から、日本に防衛費の増大を求める可能性が高いからだ。
にわかに注目を集めている地方創生・防災関連株と防衛関連株。筆者は、この2分野の株価は来年以降も安定的に上昇すると見込んでいる。
T&Dアセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 兼 ファンドマネジャー/浪岡 宏
週刊金融財政事情 2024年11月26日号