投資用マンションは区分所有で購入するのが一般的ですが、一棟丸ごと購入するオーナーもいます。一棟買いは区分所有に比べてリスクが大きい投資方法です。どのような買い方をすると失敗するのか、逆にどうすれば一棟買いで成功することができるのか、一棟買いで成功するコツや注意点を解説します。
目次
1.一棟マンション買い投資とは?
一棟マンション買い投資とは、マンションを一棟丸ごと購入し、家賃収入や売却収入を狙う投資方法です。マンションは区分所有で投資するのが一般的ですが、資金力のあるオーナーの中には一棟マンション買い投資を選択する人もいます。
一棟マンションは戸数が多いので、区分所有に比べて収益性が高いのが魅力です。利回りも区分マンションより高い傾向があります。間取りで考えるとワンルームマンションは、ファミリー向けに比べて戸数が多いことから一棟買いに適しているといえます。
2.投資用マンションの一棟買いで失敗する5つの理由
投資用マンションの一棟買いは、投資資金が高額になることから、失敗リスクの高い投資方法です。失敗する理由として以下の5つが考えられます。
2-1.資金計画が甘く、キャッシュフローがマイナスになった
投資用マンションの一棟買いは、綿密な資金計画を立てる必要があります。甘い資金計画を立てて、予定した家賃収入を得られずに、キャッシュフローがマイナスになるケースがあります。
特に不動産投資ローンの毎月の支払いが予想以上の負担になり、収入より支出のほうが多くなるのはよくあるケースです。ほかにも「家賃が下がることを想定していなかった」「災害の影響を受けて修繕が発生した」「金利が上昇した」など予期せぬ事態も起こり得ます。リスクを想定して資金計画を立てることが必要です。
2-2.空室が続き、安定した家賃収入が得られなかった
不動産投資の収入は家賃が大半を占めるので、空室が出ると収益性が低下します。空室の長期化により家賃収入が安定せず、ローン返済が滞って失敗に至るケースがあります。
空室が出る原因として多い「立地条件や周辺環境が悪い」「競合が多い」などの理由は変えることが難しいです。しかし、「家賃が周辺相場より高い」「設備が古くて使いにくい」「入居条件が厳しい」などの理由は改善可能なので、空室の原因を究明して適切に対応することが大切です。
2-3.期待していた節税メリットが得られなかった
節税目的で不動産投資を行う人もいます。不動産所得を赤字にすることによって、給与所得から赤字分を差し引く「損益通算」を使って、課税所得を減らすことができます。中古の一棟マンション買いは減価償却を多く計上できるので、赤字になる可能性は高いです。
しかし、節税メリットが大きいのは課税所得が900万円を超える人です。所得税の税率区分は下表のようになっています。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円から1,949,000円まで | 5円 | 0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10円 | 97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円まで | 20円 | 427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円まで | 23円 | 636,000円 |
9,000,000円から17,999,000円まで | 33円 | 1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで | 40円 | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45円 | 4,796,000円 |
課税所得900万円の人が損益通算で800万円に所得を減らせた場合は、税率が33%から一気に23%に下がるので高い節税効果を得られます。
ところが、課税所得1,000万円の人が100万円減らして900万円になっても税率は変わりません。期待したほどの節税効果が上がらず、一棟マンション買い投資に失敗するケースがあります。
2-4.不動産会社の言葉を鵜呑みにし、誤った物件選びをした
不動産会社の話を鵜呑みにして、収益の上がらない物件を選んでしまうことは、典型的な失敗パターンです。不動産会社は多くの在庫を抱えているので、売れ残っている物件のセールスポイントだけを強調してくる可能性があります。
特に利回りは諸経費などを考慮しない満室前提の表面利回りで説明されることが多いので、「利回りが高い」という言葉を鵜呑みにしないほうがよいです。1つめの物件ですぐに決めず、条件を聞いたうえで必ず複数の物件を内見して選ぶようにしましょう。
2-5.マンション投資詐欺に巻き込まれてしまった
マンション投資詐欺も少なからず発生します。特に最近はSNSを利用した投資詐欺も増えているので注意が必要です。「大きな節税効果がある」、「高利回りで儲かる」などの誘い文句でカモになる投資家を狙っています。
マンション投資詐欺には以下のような手口があります。
・手付金詐欺
手付金を支払った後に不動産会社と連絡が取れなくなり、取引中止で手付金だけ取られる。
・入居状況詐欺
いわゆるサクラになる入居者を住まわせて満室を装い、物件購入した後に次々に退去者が出て空室だらけになる。
・二重譲渡詐欺
すでに売却が決まっている物件を買わされて購入代金を騙し取られる。
・海外不動産投資詐欺
実在しない海外の物件を買わされる、または、現地の相場より高く買わされる。
これらのマンション投資詐欺に巻き込まれないための対策はただ一つ、「信頼できる不動産会社から購入すること」につきます。
3.一棟マンション買い投資で成功するための6つのポイント
一棟マンション買い投資で成功するには、いくつか押さえておくべきポイントがあります。特に大事なポイントとして、以下の6つが挙げられます。
3-1.投資の目的と目標を明確にし、節税を第一目的にしない
不動産投資は投資の目的とゴールの目標を明確にして取り組むことが大事です。中には節税を目的として行う人もいますが、節税が第一優先になると収益を得る本来の不動産投資とかけ離れた結果になる恐れがあります。
例えば、「損益通算」で給与所得を減らすためにあえて赤字が出やすい物件を買う、あるいは短期間で「減価償却」できる築古物件を買うなどのケースです。確実に需要が見込める好立地物件を買って収益を目指すのが不動産投資の本道なので、節税はあくまで結果であり、目的にすべきものではありません。
3-2.リサーチを徹底し、賃貸需要とリスクを確認する
購入したい物件にどの程度の賃貸需要とリスクがあるのか、事前に徹底したリサーチが必要です。特に一棟マンションは戸数が多いので、満室にするには賃貸需要が高いエリアの物件を購入する必要があります。
主なチェックポイントは、物件の立地(駅からの距離)、周辺環境(近くにスーパーや学校があるかなど)、物件の設備(最新の設備を備えているか)、総戸数、設定家賃、想定利回り(実質利回りで計算する)、築年数、予定ローン返済額、固定費の金額(管理費、修繕積立金、固定資産税・都市計画税)などです。
3-3.信頼できる不動産会社と管理会社を選ぶ
不動産投資は自分だけで行うものではなく、不動産会社や管理会社との連携も必要です。不動産会社や管理会社次第で収益が上下することも考えらえます。それだけに会社選びは極めて重要です。
信頼できる不動産会社としては、上場不動産会社、テレビCMでよく見かける不動産会社、著名な不動産チェーン、地元で長年経営している地場の不動産会社などが挙げられます。これらの会社であれば実績が豊富なので、安心して任せられます。総合不動産会社なら管理も委託できるので、管理会社を別に探す手間がありません。
3-4.資金計画は余裕を持って立て、繰上返済も慎重に
不動産投資できちんとした資金計画を立てることは極めて重要です。繰上返済も慎重に行わなければなりません。
また、金利上昇局面では繰上返済をして利息の負担を減らす戦略も考えられますが、手持ち資金の減少を招くデメリットがあります。修繕など急な資金の発生に備えて、運転資金はある程度確保しておくことが必要です。繰上返済をする場合は、金額を慎重に判断したほうが無難です。
3-5.家族の同意とサポートを得る
個人事業主として一棟マンション経営を行う場合、家族のサポートなしでは運営が難しい場合があります。ローンも高額になることが予想されるので、必ず同意を得たうえで申し込むようにしましょう。
運営にあたっては、家族を青色専従者にすることによって、人件費を必要経費として計上できます。手伝ってもらえるだけでなく、世帯収入の増加につながります。
3-6.万が一に備え、相談窓口を把握し、適切な保険に加入
賃貸経営をしているとさまざまな事故や災害に遭うリスクがあります。万が一事故や災害に遭ったら、どこの窓口に相談したらよいか把握しておくことが大事です。
主な相談先として、弁護士、消費生活センター、宅地建物取引業協会、日本マンション管理士連合会などが挙げられます。資金や保険に関しては金融機関や保険会社が窓口になります。
また、一棟マンションは多くの戸数を管理するので、火災保険・地震保険のほかにも、以下のような保険に加入しておくと安心でしょう。
・施設賠償責任保険
建物の管理不備や構造上の欠陥によって施設内で事故が起き、損害賠償責任を負った場合に補償を受けられる保険です。マンションの壁が剥がれ落ちて住民にケガを負わせたなどのケースに対応できます。
・孤独死保険
単身世帯の高齢者が増えている現在では、マンション内で孤独死が起きる可能性がゼロではありません。孤独死保険に加入していると、万一事故が起きた場合も家賃の損失や居室の原状回復費用などが補償されます。
4.一棟マンション買い投資のメリット
一棟マンション買い投資のメリットとして、以下の3つが挙げられます。
4-1.不動産投資の中で空室リスクの影響が少ない
不動産投資で一番心配なのは空室リスクです。1戸だけ区分所有している場合、空室が出るとたちまち家賃収入が途絶えて、ローンの返済にも支障が生じます。
その点一棟マンションは、10戸中2戸空室が出てもほかの8戸は稼働しているので、収入が途絶えることはありません。不動産投資の中で空室の影響が少ない物件タイプといえます。
4-2.区分ワンルームマンション投資より賃貸経営の自由度が高い
区分ワンルームマンションは全戸の中の一室を買うので、管理規約に従って経営しなければなりません。しかし、一棟マンションは全戸を所有するので、管理規約も自分で決められ、大規模修繕やリフォームもオーナーの判断で行えます。賃貸経営の自由度が高いのがメリットです。
さらに一棟丸ごと購入すれば敷地はすべて所有できるので、土地を自由に処分することもできます。
4-3.自分で住むことも可能
一棟マンションであれば、一室に自分で住むことも可能です。全戸を管理する権利があるので、自分の住戸を確保して、残りを賃貸するスタイルが取れます。
マンションタイプの賃貸併用住宅と認められれば、自分が住む住戸は住宅ローンを組むことも可能です。ただし、自分で住む場合は、一棟マンションの居住部分が床面積の50%以上という条件があるので注意が必要です。
5.一棟マンション買い投資をする際の注意点
一棟マンション買い投資は以下の点に注意して行う必要があります。一棟マンションは買うときも売るときも区分マンションに比べて難しいことに留意し、投資を判断することが求められます。
5-1.多額の初期資金が必要
一棟マンションを購入するには多額の初期資金が必要です。富裕層の投資家でないと、ローンを組まずに購入することは難しいので、毎月のローン返済負担も大きくなります。融資を受けるには個人の属性が高くないと難しいでしょう。
また、区分マンションのように複数物件に分散投資することは難しいので、物件が大きな災害に見舞われた場合は減収の影響が大きくなります。
5-2.管理費用が多くかかる
一棟マンション経営は戸数が多いので、管理費用が多くかかります。不動産管理会社に管理を委託した場合の管理委託費の相場は家賃の5%程度です。この管理委託費は戸数に応じてかかるので、6戸の物件に比べて12戸の物件は2倍の金額を支払うことになります。
また、物件の規模が大きいので、損害保険料や固定資産税・都市計画税などの負担も大きくなります。
5-3.売却しにくく、流動性が低い
一棟マンションは区分マンションに比べて売却しにくく、流動性が低いというデメリットがあります。一棟マンションは人が買うときも自分が買ったときと同じように慎重に判断されるので、売りに出しても長期間買い手が見つからない可能性も考慮しなければなりません。
6.一棟マンション買い投資に向いている人
一棟マンション買い投資に向いているのは以下のような人です。自分が該当する場合は購入または建築を検討するとよいでしょう。
6-1.賃貸需要が高いエリアに土地を持っている人
賃貸需要が高いエリアに土地を所有している方には、一棟マンションを建築するという選択肢があります。土地を更地のまま保有していると、固定資産税や都市計画税がかかり続けるため、結果的に無駄なコストが発生してしまいます。一棟マンションを建築することでより大きな収益をあげることができるので、資産価値が向上します。
6-2.数千万円以上の自己資金がある人
一棟マンションを全額自己資金で買える人は少ないでしょう。ローンを組んで買う人が多数派と思われます。一棟マンションは億単位の価格になりますが、融資を受ける場合、頭金と初期費用で20~30%の自己資金を用意することが求められます。
1億円の物件でも2,000~3,000万円の自己資金を用意する必要があります。用意できない場合は別の物件タイプの購入を目指したほうがよいでしょう。
7.まずは新築ワンルームマンション投資から始めるのがおすすめ
初めての不動産投資で一棟マンションを購入するのはリスクが高いです。資金が高額なのに加えて、管理のノウハウもないので、いきなりの投資は避けるのが無難です。
まずは入居者の確保が容易な新築ワンルームマンションから始めるのがおすすめです。新築物件は探している人が多く、ワンルームであれば単身者を中心に需要も多いので、入居者を確保しやすいというメリットがあります。
8.マンション一棟買いの失敗例から学び、投資を成功させよう
投資用マンションの一棟買いについて、失敗例や成功のポイントを詳しく見てきました。区分マンションへの投資に比べて、一棟買いは難易度が高く、慎重な計画と判断が求められることがおわかりいただけたと思います。
また、一棟マンションを購入するだけでなく、広い土地を所有している場合には、その土地を活用して新たにマンションを建築するという選択肢もあります。この方法は、土地の特性や資金力に合わせて自由にカスタマイズできるため、理想的な投資プランを実現しやすい点が大きな魅力です。
土地を所有している分、購入に比べて開発コストを抑えられる可能性がありますが、注意すべきポイントは一棟買いとほとんど変わりません。例えば、建築予定地がマンションを建てる条件を満たしているか、賃貸需要が十分に見込めるエリアであるかを事前に確認することが欠かせません。
こうした判断には専門的な知識が必要なため、まずは信頼できる総合不動産会社に相談することをおすすめします。開発計画や市場調査をしっかり行い、失敗のリスクを最小限に抑えたうえで、長期的な収益が見込める投資計画を立てましょう。
(提供:Dear Reicious Online)
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