総括
FX「投資が伸びなければ日本も衰退。その気配がある2024年7月以降」
ドル円=151-156、ユーロ円=158-163、ユーロドル=1.02-1.07
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨9位(7位)、株価6位(7位)、7月以降、投資が伸び悩んだ日本」
(2024円の円は下位グループで推移)
2024年の円は、下位グループで推移。年前半は最下位に陥っていたが、後半は円買い介入、11月の円高、トランプディールで円よりドルに弱い通貨も出て少し上昇、現在は9位。強くはない。
株価は現在は6位だが、最近は4万円が壁になっている。10年国債利回りは1.04%、年初の0.62%からは上昇している。
(日銀は利上げ見送りか)
本誌では、2024年マイナス成長、株価低迷の日本が利上げを続けることに疑問を呈してきた。7-9月は円買い介入と利上げで年金など投資家の運用利回りはマイナス圏、企業も減益だ。日本経済は米国ほどの芯がない。最近は世間もそういう風となってきた。
日銀が政策金利引き上げの見送りを検討しているらしい。トランプ次期米大統領による追加関税などを巡り、米経済の先行きに不透明感が高まっている上、25年春闘の賃上げ動向も確認したい考えで、利上げを急ぐ必要はないとの判断に傾きつつある。FOMCは18日に利下げの是非を判断する。日銀は市場の動向を踏まえて最終的に決める。
(米国のほうが「貯蓄から投資」への動き)
米国は「貯蓄から投資」への動き。資産立国へ。日本も、さらに引き離されないようにしないといけない(日本は国内株と対外純資産を利上げと円買い介入で大きく毀損する動きがあった2024年)。
トランプ次期大統領は、法人税率を現行の21%から15%に引き下げると表明したほか、キャピタルゲインと配当への課税引き下げについて顧問らと協議していると述べた。
国民の資産が増えないと税収も増えないだろう
石破茂首相は国会で金融所得課税の強化を現時点で検討することは考えてないとの自身の発言について、「もうやらないとか、そんなことを申し上げているのではない」と語ったが、米国とは逆に金融所得課税のことは頭の中にあるようだ。日本市場が活性化しない要因の一つだ。
(外貨投信残高が円高の11月も増加)
「新NISA」の掛け声で順調に増加していた外貨投信残高も7月の円買い介入で毀損し7月、8月と残高を減らしていたが、9月からは回復している。11月は円が最強だったが、それでも残高が増えているのは驚くべきことだ。国民はひるまず外貨へ向かっている。最近はエネルギー価格の下落で貿易赤字も縮小しているが、外貨投信残高の増加は個人も企業も外貨志向が衰えていないことを示唆している。
(日本生命の米保険会社買収について)
国内生保の海外生保買収はこれまでもあったが、その件数がやや多くなっている。日本製鉄はUSスティールを買収しようとしている。住友林業の海外投資も活発だ。やはり日本の少子高齢化での国内のパイの縮小を考えると海外に展開するしかない。様々な業界でこの動きが続くことも円安要因だ。
*米ドル「通貨2位(3位)、株価(NYダウ)8位(6位)、2024年、ドルは常に上位、株価も強かった」
2024年の米ドルはほぼ上位グループで推移している。現在は2位。7月の日銀の大規模「夜討ち朝駆け」介入でも耐えた。株価はNYダウが年初来16.29%高、ナスダックが32.74%高、S&Pが26.86%高。10年国債利回りは年初は3.54%。トランプ次期大統領は、法人税率を現行の21%から15%に引き下げると表明したほか、キャピタルゲインと配当への課税引き下げについて顧問らと協議していると述べている。日本が目標とする「貯蓄から投資」を毎年実現している。
(今年最後のFOMC)
今週はFOMCが開催される。フェドウォッチによると、利下げ実施は完全に織り込まれているものの、来年1月の追加利下げの確率は約24%にとどまっている。FOMCでは、委員の政策金利予想水準を示すドットチャートも発表される。1月に利下げを一時停止するという強い指針を示し、最終金利の予想に関してドット・プロットの修正をほぼ確実に行うだろう、と見る向きも多い。
(消費者物価は、前年比2.7%上昇、来年は)
11月の消費者物価は、前年比2.7%上昇した。前月は2.6%上昇。労働市場の鎮静化と家賃の伸び鈍化を背景に、今週のFOMCで利下げ実施に妨げとなる可能性は低い。
家賃やホテルの宿泊代を含む住居費は前月比0.3%上昇し、前月比での上昇分の40%以上を占めた。 食品は0.4%上昇。前月は0.2%上昇していた。鳥インフルエンザの発生により卵の価格が8.2%急騰した。
コアCPIは、前年比3.3%上昇し、伸びは前月と同じだった。ファンダメンタルズの観点から、インフレの大幅な上昇リスクは見当たらないが、関税、財政、移民政策の変更が予想されることから、インフレ鎮静化は来年は停滞する見込み。
(イエレン財務長官、他国による自国通貨操作の動きが見られれば、「強力に反応」)
イエレン財務長官は、競争上の優位性を得るために他国による自国通貨操作の動きが見られれば、米国は「強力に反応する」と表明した。ただ、現時点ではそうした市場介入は行われていないと述べた。
基軸通貨としてのドルのライバルとなる通貨は存在しないとし、ドルの地位が「脅かされていることは確認していない」と語った。
(キャピタルゲインと配当への課税引き下げ、トランプ次期大統領)
トランプ次期大統領は、改めて減税に関する一連の政策案を表明。法人税率を現行の21%から15%に引き下げると表明したほか、キャピタルゲインと配当への課税引き下げについて顧問らと協議していると述べた。こうした変更は投資家に好感され、相場上昇に弾みがつく可能性が高い。
*ユーロ「通貨5位(6位)、株価4位(5位)DAX)、2024年は12通貨中、中盤で推移」
(フランス格付け、ムーディーズが引き下げ)
週末にムーディーズ、フランスの信用格付けを「Aa3」に引き下げた。従来の格付けは「Aa2」。フランスでは財政赤字削減を巡る対立で政治の混迷が深まっている。今朝のユーロは1.05われで下落でスタート。
(2024年、意外と弱くなかったユーロ)
2024年のユーロは弱いイメージが強いが実際はそれほど弱くなく、中位グループで推移、現在は12通貨中5位。ユーロ圏でも頗る経済指標が弱い独の株価(DAX)は年初来21.81%高で日経より強い。独10年国債利回りは2.26%。政局不安で国債が売られているフランスも3.06%に留まっている。中位に留まれるのは経常・貿易黒字が支えているからだ。
(クリスマス前の指標、発言ラッシュ)
今週はクリスマス前の指標ラッシュ。12月製造業・サービス業PMI、ZEW景況感調査、10月貿易収支、経常収支、 独12月IFO企業景況感指数、12月消費者信頼感 独11月生産者物価とある。
また、ラガルドECB総裁、シムカス・リトアニア中銀総裁、デギンドスECB副総裁、ウンシュ・ベルギー中銀総裁、シュナーベルECB専務理事、 レーン・フィンランド中銀総裁、ミュラー・エストニア中銀総裁と発言も続く。
(ECBは来年も利下げを続ける)
ECBは先週3会合連続利下げ、0.25%下げ3%にし経済下支えした。インフレ率が目標の2%に近づく一方で経済は低迷していることから、来年もさらなる利下げを行うと示唆した。
中銀預金金利は0.25%引き下げられ、3%となった。姿勢の変化を示すように、声明からは政策金利を必要な限り「十分に景気抑制的な」水準にとどめるという文言が削除された。
「政策委員会は、インフレ率が中期目標の2%で持続的に安定することを確実にする決意だ」とECBは表明。「適切な金融政策のスタンスを決定するに当たり、データ次第かつ会合ごとのアプローチを継続する」と続けた。
ビルロワドガロー仏中銀総裁は、ECBは来年さらに利下げを実施する可能性が高いとの見方を示した上で、将来の金利に関する市場の見通しは妥当だと指摘した。
「来年さらなる利下げが行われるだろう」と語り「金利の先行きについて事前にコミットすることはしないが、われわれは市場の来年の金利見通しにどちらかといえば納得している」とした。
(ドイツ経済、来年も低迷へ)
*キール世界経済研究所は独経済が2025年に停滞すると予想。今年は0.2%のマイナス成長を見込んだ。23年の成長率はマイナス0.3%だった。
*ドイツ経済は停滞から抜け出すことができない。目立った経済回復の兆候はほとんど見られないと指摘した。今年の経済成長について「四半期ごとにゼロ近辺を行ったり来たりしており、全体としては0.2%の縮小が見込まれる」とした。
*IFO経済研究所は来年の成長率について、構造問題を克服できなければ0.4%にとどまるが、経済政策の方向性が適切に設定されれば1.1%の成長が可能だとの見方を示した。
*ポンド「通貨3位(2位)、株価15位(15位)、2024年のポンドは堅調だった」
(2024年のポンドは堅調だった)
2024年のポンドは堅調。上位グループで推移し、首位に立つこともあった。現在は3位。FT株価指数は14位、10年国債利回りは4.42%で年初は米国より低かったが現在は上回っている。EUほど経済指標が一様に弱いこともなくマチマチで来年はOECDが成長見通しを前回の1.2%から1.7%に引き上げている。
(19日に政策金利、据え置きか)
英中銀は12月19日の政策決定会合で金利の据え置きを決めるとみられている。ユーロ圏ほど景気指標は弱くはなくマチマチであることから今回は据え置き予想。12月製造業・サービス部門PMI、11月雇用統計、11月消費者物価が政策金利決定の前に発表される。ベイリー総裁は、今後1年間で金利を段階的に引き下げていくことを示唆している。
(2カ月連続のマイナス成長)
10月のGDPは、前月に続き減少した。前月比0.1%減。予想は0.1%増。これで4Qの英国経済は縮小の恐れがあるとみられている。コロナウイルス流行でロックダウンが行われていた2020年3-4月以来初めて、2カ月連続のマイナス成長となった。リーブス財務相は「数字は期待外れだが、われわれは長期的な経済成長を実現するための政策を実施した」と述べた。
(トランプ関税と英国)
グリーン英中銀金融政策委員は、トランプ次期米大統領による関税の大幅引き上げが英国のインフレ率にどのような影響を与えるかは不明だとの考えを示した。関税がどのようなものになるか誰もはっきりとは分からないと指摘。「特に英国やユーロ圏においてインフレ率の押し上げ、押し下げのどちらになるかさえ予測できない」と述べた。
(英国がTPPに加盟)
日豪など11カ国のTPPに本日15日、英国が加入。2018年のTPP発効後、新規加盟は初めて。広域での自由貿易を推進し、高まる保護主義に対抗する。米国は離脱している。
述べた
*豪ドル「通貨7位(8位)、株価13位(13位)、貿易黒字が縮小し経常赤字が拡大していることでやや弱い」
(貿易黒字が縮小し経常赤字が拡大していることでやや弱い)
今年は、12通貨中、中位から下位グループを推移、現在は7位、円との差は1.76%と僅かだ。株価(全普通株指数)は年初来9.21%高、10年国債利回りは4.35%(年初は3.96%)。
やや弱いのは、貿易黒字が縮小し経常赤字が拡大していることだ。コロナ期、ロシアのウクライナ侵攻で上昇した資源価格が落ち着いてきたことや中国景気の減速がある。
(政策金利は据え置き、声明はややハト派に転じる)
RBAは12月10日、政策金利を4.35%に据え置いた。ただ、インフレが目標に向かっていると「ある程度確信」していると表明、タカ派的な文言を和らげた。3Q・GDPが予想を下回ったことを受け、RBAがハト派に転換すると予想していた。ブロックRBA総裁は、2月にも利下げに踏み切る可能性について聞かれると「分からない、基調インフレのさらなる進展を見る必要がある」と答え、決定までには四半期インフレ統計のほか、労働市場や消費関連の指標があると指摘した。
(雇用統計は改善)
11月の雇用統計は、就業者数が予想以上に増加し、失業率は予想に反して低下、8カ月ぶりの低水準となった。労働市場が底堅いことを示した。
就業者数は前月比3万5600人増で、予想の2万5000人増を上回った。失業率は前月の4.1%から3.9%に低下。予想は4.2%。
(企業景況感は悪化)
11月の豪景況感指数は大幅に低下し、雇用、売上高、収益性を測る現状指数もさらに悪化し、経済における民間部門の低迷が改めて示された。景況感は8ポイント低下してマイナス3となり、10月の上昇が逆転した。現状指数は7から2に低下した。
*NZドル「通貨10位(10位)、株価14位(14位)、弱い、円にも抜かれた2024年終盤」
(弱い、円にも抜かれる)
今年は年を通じて下位グループで推移していたが、11月には円にも抜かれ10位となっている。10年国債は4.54%で先進国では高いがNZドルの強さには結びついていない。中国景気の低迷で貿易・経常赤字が続いていることもある。株価指数(NZ50)は8年初来8.36%高。
(今週は指標ラッシュ、リセッションか)
今週は3Q・GDPが発表される。前期比0.4%減の予想。減少なら前期が0.2%減だったのでリセッションとなる。前年比では0.4%減の予想。前期は0.5%減。景気は低迷している。
11月のサービス業PMI、3Q経常収支、4Q消費者信頼感指数、12月企業信頼感指数、11月貿易収支の発表もある。
(製造業弱い)
11月の製造業パフォーマンス指数(PMI)は、45.5と4カ月ぶりの低水準になった。
景況改善・悪化の分岐点となる50を引き続き下回り、2年近く縮小が続いている。10月改定値は45.7だった。最近の調査は製造業者が見通しに対する確信を強めていることを示しているが、これまでのところ活動全体の転換を示す根拠は乏しい。
(OECD見通しは)
OECDの最新の経済見通しでは、NZ経済の勢いは弱いと指摘しているが、低金利が景気回復を後押しし、2025年には成長率が1.4%、その翌年には2.1%に上昇するはずだとしている。
しかし、労働生産性の伸びが2021年以降大幅に低下したと指摘した。国内総生産の成長は移民による労働力の供給拡大によって推進されてきたが、その80パーセントは低技能および中技能労働者だった。
(優秀な移民は出て入ってこない)
経済見通しの低迷により海外移住者の数が過去最高を記録し、過去1年間にNZ人の3分の1以上がオーストラリアへの移住を検討したことが、世論調査で明らかになった。
若いNZ人がより良い仕事、物価、賃金を求めて海峡の向こう側やさらに遠くへ出ていく「頭脳流出」に見舞われている。
一方、より多くの富裕層移民を呼び込んでNZへの投資を促す、いわゆる「ゴールデンビザ」プログラムの申請が減少している。かつては年間平均10億NZドルをもたらしてきたが過去2年間で完全に承認された申請はわずか35件で3.5億NZドルに減少している。