ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「トランプ政策で世界が混乱、ドル高円高・金利上昇・株安」

ドル円=155-160、ユーロ円=159-164、ユーロドル=1.00-1.05

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨5位(7位)、株価17位(12位)、円は年初、12通貨中5位。ただ円高は不吉な予感」
(円は年初、12通貨中5位。ただ円高は不吉な予感)
 円は年初、12通貨中5位といつになく好スタート。ただ円が強くなると、あまり良いことは起こらないのが常だ。「円安株高」に対し「円高株安」。円安なら景気回復、賃金増、税収増に繋がる。円高ではその逆だ。ただ国民の意見ではそれでも円高デフレを好む声が多いことは不思議だが確かだ。日経平均は先週末で年初来1.77%安、1月10日の先物の480円安も加味するともっと安い。10年国債利回りは1.212%。日銀政策というより、トランプディールによる世界的な金利上昇がある。

(円安要因は貿易赤字と外貨投信増) 
 12月上中旬の貿易統計は7467億円の赤字となった。12月全体分はまだ公表されていないが、2024年は約6兆円の貿易赤字となりそうで、22年の19.9兆円、23年の9.3兆円の赤字から縮小する。ただそれでも円安が進んでいるのは、外貨投信の増加だろう。23年は16兆円増加、24年は1-11月で25兆円の増加で貿易赤字の縮小分を上回っている。また今年になって原油価格が71ドル台から76ドル台へ上昇していることも、原油代金の増加となり貿易赤字を拡大させるだろう。


(今週は日銀・氷見野副総裁の講演。前回と内容は異なるか)
 今週は14日に日銀・氷見野副総裁の講演がある。 前回8月の講演は日銀の利上げ後、日経平均が記録的な乱高下を繰り返していた時であったが、「金融資本市場は引き続き不安定な状況にある」、「経済・物価の見通しが実現する確度が高まっていくということであれば、金融緩和の度合いを調整していくというのが基本的な姿勢だ」と述べていた。その後、株価の勢いは衰えたままで、政府の目指す資産立国とは程遠い状況となっている。
 名目賃金の上昇はあっても実質賃金の伸びは4か月連続でマイナス。日銀の基調なインフレ率は1%台である中で、どう発言するか、注目したい。

(日銀支店長会議と為替)
*日銀名古屋支店長=為替の過度な変動は良くない
*日銀大阪支店長=為替はどんどん円安に進んでいるわけではないことを好感する企業もある、全体として為替の安定を要望する声が引き続き多い、輸入物価は落ち着いている


*米ドル「通貨3位(6位)、株価(NYダウ)15位(10位)、トランプ政策で世界が混乱。ドル高・金利上昇・株安」
(ドルは強いが株は弱い。金利は上昇)
 ドルは年初来3位、ただ株価は弱く3指数ともにマイナス圏。年初来ダウは1.42%安、ナスダックは0.77%安、S&Pは0.93%安。10年国債利回りは年初の4.57%から4.76%へ上昇。

(強い雇用)
12月の雇用統計、非農業部門雇用者数は25.6万人増加し、予想の16万人増を上回った。失業率は4.1%と、前月の4.2%から低下した。米利下げサイクルは終了したと考え人も多くなってきた。フェドウオッチによると、1月の据え置き確率は93.1%となっている。JPモルガンとゴールドマン・サックスは、次回の利下げ時期を6月に後ずれさせた。

(ハト派でなくなってきたFOMC)
 FOMCの意見もハト派的ではなくきている。セントルイス連銀ムサレム総裁は、利下げに一段と慎重な姿勢が必要との認識を示した。リッチモンド連銀バーキン総裁は「最近の長期金利上昇はインフレ懸念というより、リスクプレミアムの高まりを反映している」と述べた。ボストン連銀コリンズ総裁は、見通しを巡りかなりの不確実性が存在するため、今後の利下げを慎重に進める必要があるという見解を示した。
 少数になってきたハト派ではシカゴ連銀グールズビー総裁が、米経済が再び過熱している証拠はないと述べ、一段の利下げが適切になるとの考えを示した。

(今週は消費者物価、インフレ期待は上昇)
 今週の注目は12月消費者物価だが予想は前年比で2.9%、前回は2.7%。コアの予想は3.3%、前回も3.3%。
1月の消費者の1年先の期待インフレ率は3.3%と、前月の2.8%から上昇し、昨年5月以来の高水準となった(ミシガン大)。

(トランプ氏で右往左往)
 トランプ次期政権の減税政策、債務上限撤廃示唆、関税引き上げによる世界経済の混乱、NATOの防衛費の各国負担増などで金融市場が揺らいできた。金利は上昇、ドルもやや強い。株価は下落。のんびり資産増を楽しめなくなってきた。


*ユーロ「通貨10位(11位)、株価4位(13位)DAX)、経済指標弱い中での金利上昇でユーロ高とならず」
(ユーロ安、株高、金利上昇)
 2025年は10位でスタートと弱い。10年国債利回りが独が2.58%(年初2.36%)、仏が3.44%(同3.2%)と上昇。独DAX株価は年初来1.54%高。

(ユーロ圏消費者物価は上昇)
 12月のユーロ圏消費者物価は、前年比2.4%上昇し、前月は2.2%。エネルギー価格とサービスコストの上昇が要因。コア指数は前年比2.7%上昇。最大項目のサービス価格は3.9%から4.0%に加速した。

(ムーディズは利下げに否定的)
 ムーディーズは、ユーロ圏のインフレ上昇にも関わらず、結果としてECBは今月利下げしないとの見方を示した。 12月のユーロ圏インフレ率は2.4%と、前月の2.2%から上昇した。サービス部門のインフレで昨年のような緩和を続けられないことがECB政策当局者にとって特に懸念されるだろうと述べた。

(財政問題=NATO加盟国の防衛費をGDPの5%に増やせない)
ドイツのハーベック副首相兼経済大臣は、NATO加盟国の防衛費をGDPの5%に増やすというトランプ次期米大統領の要求は「非現実的」だと述べた。3.5%が現在NATOで議論されている中期目標
また米国の減税政策で米国発のインフレ上昇も懸念される。米国の関税引き上げのために財政支出増も予想される。

(弱い指標、倒産増加)
 ユーロ圏の11月の小売売上高は前月比0.1%増と、予想を下回った。個人消費の低迷継続が裏付けられた。ユーロ圏では弱い経済指標の発表が相次いでいる。
ドイツでは昨年4Qの企業倒産件数が2009年以降で最多を記録した。経済危機と高金利、エネルギー・賃金の上昇が背景にある。 企業倒産は4215件で、前年同期比36%増。世界的金融危機さなかの2009年半ば以来の高水準となった。


*ポンド「通貨12位(12位)、株価6位(9位)、ポンド急落、英金利上昇の引き金を引いたトランプ氏」
(年初来の下げ続くポンド)
ポンドは年初から下げていたが、先週はさらにそれが加速した。10年国債利回りは4.85%でドルの4.76%を上回っている。一方、英株価指数(FT)は年初来0.92%と小康状態だ。

(ポンド下落、金利急騰の要因)
 米国トランプ次期大統領の経済計画に対する不信感に一部起因している。米国の輸入関税の引き上げに対抗するための財政支出増、NATO加盟各国に負担増を求めるトランプ大統領の発言が英国の財政にも不安を抱かせ債券が売られた。金利が上昇してもポンドが買われなかったのは、将来への経済不安と海外からに英国債券売りにポンドも売られたのだろう。まさに20世紀の英債券売りポンド売りを彷彿させるものであった。

(LDIショックも売りを加速した)
LDI(Liability Driven Investment)ショック。英国の年金基金が採用するLDIという投資戦略が、国債市場の混乱を増幅させた。LDIは負債(年金の支払い義務)に見合う資産を保有する戦略だが、金利急騰により年金基金が損失を抱え、国債を大量に売却する必要が生じた。これが国債価格の下落(利回り上昇)とポンド売りに拍車をかけた。

(英政府はどうする)
 投資家は、リーブス首相の最初の予算案での追加支出がインフレを加速させ、中銀の利下げペースを鈍化させること、追加増税が成長を圧迫し、予想ほどの資金を調達できないこと、そして追加借入によって、すべての追加債券発行に十分な買い手を引き付けるために利回りがさらに上昇しなければならないことを懸念している。
 英国債利回りの上昇の正確な理由にかかわらず、これは国家財政にとっても、経済全体にとってもさらに悪いニュースだ。
リーブス財務大臣は政府支出を抑制し、投資家の不安を和らげるために、今年の春の予算案を策定せざるを得なくなるだろうと予測されている。

(今週は重要指標が多い。)
 12月消費者物価、11月GDP、鉱工業生産 貿易収支 12月小売売上の発表がある。なお英中銀は、インフレリスクを考慮し政策金利を据え置く一方で4Qの成長率予測をゼロ%に下方修正した。 GDP下方改定は輸出需要の減退が原因で個人消費は堅調だったとし、25年は24年よりも良くなるとの見方を示すものの、足元のデータは経済にあまり勢いがないことを示唆すると述べた。 リーブズ財務相は、GDP統計は前保守党政権による「15年にわたるネグレクト」後の大きな試練に直面していることを示したとした上で、現労働党の予算は持続可能な長期成長を生むと述べていた。


*豪ドル「通貨8位(3位)、株価5位(昨年7位)、利下げ観測で下げるも、商品価格の上昇は朗報」
(利下げ観測。商品価格は上昇)
年初来8位と昨年に続き弱い、ただ株価は上昇し5位。10年国債利回りは英米に抜かれ4.61%。利下げ観測が出てきたが、商品価格は上昇してきている。

(コアCPI低下で2月に利下げ観測高まる。 
 11月消費者物価は前年同月比2.3%上昇し、前月の2.1%から伸びが加速した。予想は2.2%上昇。コアインフレ率の指標として注目される中銀トリム平均値は前年同月比3.2%上昇し、前月の3.5%上昇から伸びが鈍化。インフレターゲットの2-3%に近づいた。コアインフレ率が低下したことで、早ければ来月にも利下げが実施される可能性が高まった。
  投資家は、来月の利下げ確率を69%とみている。CPI発表前は50%だった。

(今週は12月雇用統計など多数の指標の発表あり)
今週は12月雇用統計の発表がある。予想失業率が4%(前回3.9%)、雇用者数は1万人増(同3.56万)。内容が悪化すれば2月利下げ確率が高まる。その他今週は12月求人広告、12月TDMIインフレ指数、1月消費者信頼感指数、消費者インフレ期待指数の発表がある。

(11月の小売売上高はまずまず)
11月の小売売上高は前月比0.8%増加し、10カ月ぶりの大幅増となった。ブラックフライデーのセールで価格に敏感な消費者の支出が増えた。ただ、クリスマスに伴う需要が前倒しされた可能性が高いとみており、伸び率も予想の1.0%を下回った。

(問題は財政)
 財政は、政府支出の増加と主要貿易相手国である中国の弱体化により、今後数年間でさらに深刻な赤字に陥ると予想されていることが、財政状況報告で明らかになった。総選挙は6カ月以内に予定されている。


*NZドル「通貨7位(5位)、株価16位(14位)、2025年も弱く発進。好転の材料はテクニカルのみか」
(2025年は弱く発進)
年初では対円でも、対ドルでも弱い。対ドルでは6週連続で週足陰線。9月30日週からは陽線となったのは11月25日週の一週だけだ。対円では、円も弱いので大きくは下げていないが、ここ2週間は陰線と弱い。
株価(NZ50)は年初来1.64%安。10年国債利回りは4.68%だが、英国、米国より利回りが低い。

(弱さ継続、テクニカルでは底)
弱い要因は、3Q・GDPは、前期比で1.0%減少。2四半期連続のマイナスで、景気後退に入ったこと、最大貿易相手国の中国の景気減速、トランプ関税の不安などがある。上昇の要因はテクニカルでボリバンの底にあることくらいだ。

(今後の注目は1月22日発表の4Q消費者物価)
 今後の注目は1月22日発表の4Q消費者物価。3Qは前年比で2.2%、インフレターゲットの1-3%のバンド内に入っている。22年2Qには7.3%のピークを付けていた。ただ欧米の消費者物価が下げ止まりしているところは注意したい。

(次回政策金利は2月19日で、時間はある)
次回政策金利は2月19日。昨年11月に中銀は政策金利を0.5%引き下げ4.25%とした。インフレ率が2%近辺にあり、経済活動が低調に推移している状況を踏まえた。
オア総裁は経済状況が予測通りに推移すれば、2月19日の次回会合でも0.5%の追加利下げを行うことが可能になるとの見方を示した。