そもそも単元未満株とは?
単元未満株は、100株未満の単位で売買される株のことです。日本では、株は通常100株単位の「単元株」で売買されます。単元に満たない株だから、単元未満株といいます。
たとえば、株価が3,000円の銘柄を単元株で買うには、3,000円×100株=30万円が必要です。しかし、単元未満株ならば1株だけ購入することもできるので、3,000円で1株の株主になれるのです。銘柄によっては数百円程度でもさまざまな銘柄を購入できます。
単元株だと投資に数百万円必要な「値がさ株」でも、1株ならば数万円で投資できます。
例えば、好業績銘柄で株価が堅調に推移している「キーエンス(6861)」は本稿執筆時点の1月27日の終値で6万8,300円となっています。単元株で買うには683万円必要になりますが、1株であれば6万8,300円で良いというわけです。
また、1株に満たない株を「端株」(はかぶ)といいます。証券会社の中には、端株を取引できるところもあります。端株を利用すれば、株価が1万円の銘柄を1,000円分だけ購入するといったことが可能です。この場合、1万円÷1000円=0.1株分の株主になれます。
単元未満株も端株も、少額で投資ができるので、複数銘柄に分散投資しやすいのがメリット。値動きの異なる銘柄を複数保有していれば、どれかが値下がりしても他のどれかの値上がりで補いながら、堅実にお金を増やす期待ができます。
単元未満株・端株のルールを確認 単元株とどう違う?
単元未満株も端株も、値動きによる価格変動は単元株と同様です。購入時の株価よりも値上がりしていれば利益、値下がりしていれば損失が生じます。
配当金は、保有している株式数に応じて配分されます。たとえば、1株あたり50円の配当金がもらえる銘柄を単元株(100株)で持っていれば5,000円、単元未満株(1株)持っていれば50円、端株(0.2株)持っていれば10円もらえます。
株主優待は、会社が株主に対して自社の商品やサービスなどをプレゼントする制度。中には株主優待を目的に投資を行う「優待投資家」がいるほど個人投資家に人気があります。しかし、株主優待の多くは「単元株から」となっているため、単元未満株・端株で保有していてももらうことはできません。単元未満株や端株を買い増して100株になった場合は株主優待をもらえるようになります。
なお、一部企業では1株からでも株主優待を実施しているところがあります。この場合は、1株だけ保有していても株主優待をもらうことができます。ただし、PayPay証券では「単元未満株や小数点以下の株(端株)については、すべてのお客様の分をまとめて弊社名義として保管しておりますので、その分の優待は受けられません」とあり、1株優待は受けられない点に注意が必要です。
株主の権利としてはほかにも、
- 議決権(株主総会に出席して議案の賛否を投票できる権利)
- 残余財産分配請求権(会社が解散するときなどに、残った資産を分配して受け取る権利)
などがありますが、単元未満株や端株の場合、「議決権」はありません。
<単元株と単元未満株のルールの違い>
証券会社によって違う取引ルールも確認
新NISAで単元未満株に対応している主な証券会社をまとめました。
<新NISAで単元未満株の売買ができる主な証券会社>
各社によっていくつか違いがあるので、確認しておきましょう。
単元未満株の手数料・取引のタイミング
単元未満株の売買時に手数料(スプレッド)がかかる場合があります。スプレッドとは、本来の価格から加減される「価格の差額」のこと。
仮に金融機関が「取引手数料無料」としていても、実際には株の購入・売却時にスプレッドが差し引かれていることがあるので、お使いの証券会社を確認しましょう。SBI証券は売買手数料が無料、マネックス証券やauカブコム証券ではNISA口座を利用した取引の場合、売買手数料無料(全額キャッシュバックで実質無料)になります。
単元株の場合、取引時間中に出した注文はリアルタイムで約定(注文が成立すること)します。しかし、単元未満株の場合は、1日1回〜数回の決まったタイミングでしか約定しない場合があります。楽天証券・大和コネクト証券・PayPay証券では、リアルタイム取引に対応している銘柄もあります。市場の開いている間に取引をしたい場合は、リアルタイム取引ができるところを選びましょう。
積立投信できる証券会社・設定方法
日本株の積立投資ができる証券会社もあります。SBI証券、楽天証券、auカブコム証券、大和コネクト証券では可能です。
<各社の日本株の積立投資サービス>
自動積み立ての設定をする場合、頻度を決める必要があります。SBI証券と楽天証券では毎週同じ曜日に投資することが可能です。大和コネクト証券では「毎日」が指定できます。どの証券会社でも買値は指定日の始値となります。
次に1度に買う金額(株数)の指定をします。金額指定と株数指定がありますが、株数指定だと毎回の買い付け時の株価次第で投資金額は変わります。
金額指定ですが、例えば、買付日の前日終値が150円なら、翌日に制限値幅の上限(ストップ高水準)の200円になると想定して買い付ける株数が決まります。
仮に3,000円の金額指定でこの株の積み立てを設定した場合、購入できる株数は20株ではなく、3,000円÷200円=15株になります。実際の約定株価が150円だった場合でも、金額指定の買付では15株しか購入できず、750円分は投資されません。
このように、指定した金額をできる限り使い切って投資できるわけではないので注意が必要です。
本稿執筆時点で端株取引ができるのはPayPay証券のみです。PayPay資産運用なら100円から、PayPay証券アプリなら1,000円から日本株を購入することができます。なお、日本株の積み立てはできません。
取扱い銘柄数は各社異なります。ネット証券の場合は「東証に上場する銘柄」などと幅広く扱っていますが、スマホ証券である大和コネクト証券とPayPay証券は銘柄が絞られています。主要銘柄は網羅されているものの、自分が購入したい銘柄を扱っているかは確認が必要です。
単元未満でどんな銘柄を狙うのがいい?
株価が上昇していくためには、企業が右肩上がりで成長していくことが欠かせません。つまり、「稼ぐ力のある企業」かどうかをチェックする必要があります。また、合わせて財務が健全であるかも重要です。加えて、投資先の株価が「割高」か「割安」かも見分けたいところです。
この辺りのポイントは以下の記事で解説していますので、ぜひお読みください。
株の積み立ては値がさ株を狙わず、低位株(株価の水準が低い株)への方がベターだと考えています。配当は1株からもらえるものの、株主優待やリアルタイムでの売買を考えると単元株保有を目指した方が良いからです。
高配当株で有名なNTTやKDDIなどは株主優待も充実しています。NTTは100株以上保有、2年以上継続保有で1,500ポイントのdポイントがもらえます。KDDIは100株以上保有、1年以上継続保有で2,000円相当のPontaポイントまたは「ローソン」と「成城石井」の人気商品詰め合わせがもらえます。配当と株主優待を合わせた「実質利回り」が10%を超える銘柄もあるので、株主優待を軽くみてはいけません。
もらった配当も再投資して、株数を早く積み上げていくことを考えると、高配当株・連続増配株・累進配当株に投資するのが一案です。株主優待が充実していたらなお良しです。なお、配当利回りの高さや優待内容だけを見て飛びついてしまうと資産を減らす可能性が高くなります。業績は好調なのか、財務は健全なのかの確認は必須です。
日本経済新聞の報道によれば、2024年の新NISAでの個別株の買付額を見ると、NTT、三菱UFJFG、JT、トヨタ自動車、三菱商事、ソフトバンクなど高配当株が人気だったようです。
キーエンスのように、好業績の値がさ株に投資をして値上がり益を狙いたいという場合は、そういった銘柄を含めて少数銘柄に集中投資をしているアクティブファンドに投資するのが一案です。例えば「スパークス・新・国際優良日本株ファンド(厳選投資)」は、国内企業を綿密に調査し、今後グローバルに活躍できると判断した20銘柄程度に厳選して投資するファンドですが、キーエンスは3%程度組み入れられています。投資信託なので100円と少額から投資ができます。
本稿が投資行動の参考になれば幸いです。
この記事を書いた人
(株)Money&You代表取締役。中央大学客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に(株)Money&Youを創業し、現職へ。マネーコンサルタントとして、資産運用・税金・Fintechなどに関する執筆・監修、書籍、講演などマネーリテラシー向上に努めている。著書は「はじめてのNISA&iDeCo」(成美堂)など多数。日本証券アナリスト協会検定会員。ファイナンシャルプランナー(AFP)。