ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「メガフォン外交だが弱い米国経済。日銀は3月利上げに慎重か」

ドル円=145-150、ユーロ円=158-163、ユーロドル=1.06-1.11

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨首位(首位)、株価最下位(18位)、「円最強株最弱」の「失われた20年型」へ」
(「円最強株最弱」の「失われた20年型」へ)
 円は最強、日経平均は最弱。失われた20年のパターンだ。日経平均は年初来7.54%安。首位の香港ハンセン20.79%高、2位の独DAX15.57%高にかなり離されている。円高で対外純資産の縮小、日本の海外投資の主力の米株も弱い、日経平均も弱ければ資産減で納税額も減ってしまう。増税ともなれば国民は賃上げは束の間で苦境に陥るだろう。それでも物価低下を望むが、賃金も伸びなくなれば物価低下も意味がなくなる。企業最高益による賃上げを支えてきたのは円安だ。

(2月は中旬まで貿易黒字。原油動向に注意)
 その円安を支えてきたのは貿易赤字だが2月は中旬まで貿易黒字だ。原油価格が下落すれば貿易赤字の縮小から黒字の転換もある。

(今週は給与、消費、景気予測調査)
 今週は1月給与、家計消費、1-3月景気予測調査など重要指標が多い

(日銀内田副総裁 追加利上げは「基調的な物価上昇率」も見て判断」
 日銀の内田副総裁は、コメの価格上昇などを背景に物価の伸び率が大きくなっているものの、追加の利上げについては、賃金上昇を伴う形で物価が上昇する「基調的な物価上昇率」も見ながら判断していきたいという考えを示した。
「基調的な物価上昇率」は日銀が目標としている2%には届いておらず、「こうした状況で金融面から引き締めると景気を抑制して賃金も上がらなくなってしまう」と指摘した。
そのうえで今後の金融政策について、内田副総裁は「新年度の後半から2026年度中の1年半の間のどこかで、現実の物価と基調的な物価がともに2%程度になると考えている。それに応じて引き続き政策金利を引き上げる方針だ」と述べ、「基調的な物価上昇率」の状況も見ながら政策を判断していく考えを強調した。
また、今後の利上げについては「毎回利上げしていくようなペースではないわけだから、経済とか物価の反応を見ながらもう1回やるのかどうかを考えていけばよい」と述べ、金融政策決定会合ごとに経済や物価の情勢を丁寧に点検しながら判断していく考えを強調した。

(日銀は今月会合で政策維持の公算大、世界経済の不確実性増す)
 日銀は今月に開催する金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決める公算が大きい。1月に利上げしたばかりであるほか、世界経済の不確実性が増しているとの考えが背景にある。複数の関係者への取材で分かった。
 連合は、25年春闘の賃上げ要求が6%を超えたと発表した。これが市場の利上げ期待を高め、円相場は147円台前半まで上伸した。1月会合直後にブルームバーグが実施した調査では、5割超は次の利上げ時期を7月会合と見込み、3月会合を予想したエコノミストはいなかった。

*米ドル「通貨10位(11位)、株価(NYダウ)8位(11位)、これだけ人に恨まれて景気は回復するのだろうか」
(ドル安・株安。金利低下)
 ドルは年初来11位と弱い。対円5.86%安。下にはトルコリラがいるだけだ。株価もNYダウがかろうじて0.61%高。ナスダックは5.77%安、S&Pは1.89%安。多くの欧州市場が年初来10%越えであることに対し弱い。10年国債も一時5%近くまで上昇も現在は4.297%へ低下している。トランプ大統領の目指す金利低下、原油安は進んでいるが、景気の悪化を伴っている。

(これだけ人に恨まれて景気は回復するのだろうか)
 一連の大統領令や内外の政策が出ているが、人々は幸せになっているのだろうか。不法移民の退去、メキシコ・カナダ・中国への関税賦課、対外資金援助の打ち切り、NATO加盟国への出資金増額要求、公務員の大量解雇、ウクライナ、南アと関係悪化。もちろん岩盤層の支持はあるだろうが、まだ彼らの生活水準が改善したという話はない。ウクライナへの援助を抑制することでロシアが喜んでいることくらいか。財政支出削減は米国経済のためになるが、他は強い米国を生むよ不確実性を生んでいるだけだ。
 景気回復を感じれば自然と株価は上がるだろうが、それはまだない。1QのアトランタGDPナウはマイナス2.4%。

(今週は2月消費者物価)
 2月消費者物価の予想は2.9%上昇(前月は3.0%)、予想通りとなれば6か月ぶりの伸び幅縮小となる。コア予想は3.2%(同3.3%)。

(米政府の大規模レイオフの影響は来月の報告書に反映される可能性)
 2月の非農業部門データについては、非農業部門雇用報告はFRBや国債市場の見通しに大きな影響を及ぼさなかった。 2月の解雇の多くは調査週の後に発生したため、次の報告では労働市場の健全性についてより詳しい状況が明らかになる可能性がある。

 2月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数は15.1万人増加した。伸びは前月から加速したものの、予想の16万人増を下回った。貿易政策を巡る不透明感の高まりや連邦政府の大幅な支出削減により、堅調に推移してきた労働市場に陰りが出始めているもよう。
失業率は4.1%と、1月の4.0%から上昇した。1月の非農業部門雇用者数は12.5人増に下方改定された。当初発表は14.3万人増だった。時間当たり平均賃金は前月比0.3%上昇した。1月は0.4%上昇していた。

(景気は「デトックス期間」なのか、「後退」なのか)
ベッセント米財務長官はトランプ政権が成長の基盤を政府から民間セクターにシフトさせる中、米経済には何らかの混乱が生じる可能性があると警告した。
「われわれが受け継いだこの経済が、ややふらつき始める可能性はあるだろうか。それはもちろんある」と発言。「公的支出から脱却するのに伴い、自然な調整は起こる」と述べた。
最近発表された複数の米経済指標は成長の減速を示唆し、2月のISM製造業総合景況指数は停滞の領域に近づいたほか、2月の消費者信頼感指数は2021年8月以来の大幅な落ち込みを記録した。
 1Qはデトックスやバイデン政権のせいで弁解は出来る。問題は2Qからだ。

*ユーロ「通貨2位(8位)、株価2位(2位)DAX)、軍需景気?ユーロ急騰で2位へ浮上、長期金利利回り急上昇」
(ユーロ急騰、一気に2位へ浮上)
 ドイツ債過去35年で最大の下落(利回り上昇)。次期首相就任が確実視されるメルツ氏が、防衛力強化のため、大胆な財政改革案を提示したことに反応した。財政規律を重視する「財政タカ派」として知られるドイツにとって劇的な変化となる。これを受けて、欧州各国で財政支出が増え、経済成長が促されるとの期待が強まった。
 財政支出拡大への期待から、短期金融市場では年内のECB利下げ見通しが大幅に後退した。ドイツ債のほか、イタリア債も売りを浴び、英国債も下落した。
  また欧州経済が押し上げられるとの期待から、ユーロも買われ、3日間の上げとしては2015年以来の大きさを記録する勢いだ。欧州株式も上昇した。

(ECB、利下げ路線修正か)
 ECBは3月6日の定例理事会で5会合連続の利下げを決めた。しかし、トランプ米政権の高関税政策や、ウクライナ情勢を受けた欧州の防衛費増額など経済の先行きを見通すのが難しくなっており、市場では4月の次回会合で金利を据え置く可能性も意識され始めた。

 「これまで以上にデータ次第となる。利下げすべきならそうするが、そうでなければ、利下げせず一時停止する」と、ラガルド総裁は、これまでの連続利下げ路線を修正する可能性に踏み込んだ。

 主要中銀の中で最も積極的に利下げを続けてきたECBだが、今後は経済情勢を確認しながら会合ごとに政策判断することになりそうで、「次の一手」を読むのは難しい局面に入る。
理由の一つは、利下げが既に相当程度進んだことだ。中銀預金金利は2024年6月会合直前までは4%だったが、6日の決定により2.5%まで引き下げた。

 欧州経済の先行きが、これまで以上に見通しづらくなっている事情も大きい。

 トランプ政権はEUに0.25%の関税導入を検討しており、経済の混乱が懸念される。ECBは今回、25年の経済成長率予想を12月会合時の1.1%から0.9%に下方修正したが、さらなる景気停滞も否定できない。
 一方、米国がロシアの侵攻を受けるウクライナへの支援に後ろ向きの姿勢を示したことで、欧州各国は防衛費の増額を急ぐ方針だ。実現すれば景気を刺激するが、同時にインフレが再燃するリスクもある。
 物価と経済の双方で「大きな不確実性」を抱え、金融政策は明確な方向性を示しづらくなったとしてラガルド氏はこう理解を求めた。「不満を持つ人もいると思う。だが、一日で劇的に状況が変わってしまう中で、リスクは至る所に存在する」とした

(米国のEU貿易)
 米国のEUへの輸出は2023年で3676億ドル、輸入は5763億ドルと圧倒的に米国の赤字だ。そこに関税をかけるのだが、中国より大きい貿易額に関税をかけることは混乱必至である。これが今年の米ドル、米株の弱さを生み出している。ユーロの強さというより米国の自滅予想でユーロが上昇している。

*ポンド「通貨4位(5位)、株価8位(5位)、ユーロに連れ高。弱いドルで浮上。今週は1月GDPに注目」
(ポンド堅調、先週は対円、対ドルでも上昇)
 先週のポンドは堅調であった。対円でも、対ドルでも上昇した。金利上昇で強いユーロに連れ高となった。年初来で4位。もちろん、混乱する米国経済でドルが弱い事が基調にある。FT株価指数は先週は1.47%下落、年初来では6.2%高とまずまず。10年国債利回りは先週の4.48%から4.6%へ上昇した。

(対米関税問題)
 国別でみると英国の最大貿易相手国は米国だ。ただ輸出が577億ポンド、輸入が633億ポンドと英国の赤字なので、トランプ大統領が攻撃的となる対米黒字国ではないので関税交渉でも難航はしないだろう。

(今週は1月GDPの発表)
今週は1月GDPの発表がある。予想は前月比で0.1%増、12月は0.4%増だった。前年比では1.2%増の予想、12月は1.5%増。1月鉱工業生産は前月比で0.3%減の予想、前月は0.5%増であった。

(インフレ加速、長期的物価圧力につながる公算小、マン中銀政策委員)
 マン中銀政策委員は3月6日、インフレ率の上昇が英経済における長期的な物価問題につながる可能性は低いとの見方を示した。また、世界的なボラティリティーにより、利下げを段階的に行うアプローチの妥当性が弱まっているとした。 英中銀はエネルギー価格、水道料金、バス料金の上昇による単発的な影響により、消費者物価上昇率が現在の3%から3Qに3.7%前後に加速すると予想している。
マン氏は英中銀が2月に政策金利の0.25%引き下げを決定した際、0.5%引き下げを主張した2委員の1人。

一方、ラムスデン英中銀副総裁は、国内の賃金圧力によりインフレ率が中銀目標を上回るリスクが高まっていると指摘する一方、利下げペースの鈍化は必ずしも必要ではないと述べた。 4Qの民間部門の賃金上昇率が鈍化せず前年比6.2%に上昇したことは驚きだったとし「これは私にとって懸念すべき動向だ」と述べた。インフレ目標に対するリスクは以前のように下方に偏っているのではなく、双方向にあると見ているとの認識を示した。 

*豪ドル「通貨8位(7位)、株価15位(13位)、強いGDP。経済は対米より対中に大きく依存」
(豪ドルは強からず弱からず)
 豪ドルは8位、ドルよりは強いが円や欧州通貨に水をあけられた。株価指数(全普通株指数)はマイナス圏となっている(-2.87%)。10年国債は4.5%

(GDPが高い伸び、小売売上も回復)
 2024年4Q・GDPは前期比0.6%増加。予想の0.5%を上回り、約2年ぶり高水準となった。前年比では1.3%増と、前期の0.8%増から加速した。ただ、「正常」とみなされていた2.5%は大きく下回る。 GDPの約半分を占める家計支出は、インフレ鈍化と数十億ドル規模の減税措置が寄与し、GDP0.2%ポイント押し上げるまでに回復した。 家計の裁量的支出は、人々が小売セールイベントを最大限に利用し、音楽やスポーツイベントを楽しみ、接待支出を増やしたことから増加した。 家計貯蓄率が3.8%に上向いたことも消費者が将来に向けてある程度の支出力を維持していることを示唆した。
2024年通年では、前年比3.7%増加した。
 また1月の小売売上高は前月比0.3%増加した。昨年12月は0.1%減だった。

(今週の注目、RBAジョーンズ副総裁講演など)
今週は3月ウエストパック消費者信頼感指数、2月NAB企業景況感指数、RBAジョーンズ副総裁の講演などがある

(RBA議事要旨は利下げでも慎重さを示す)
 2月18日のRBA議事要旨では、金融政策の過度な引き締めが長期化し過ぎるリスクを主に考慮したため利下げ決定に至ったと説明した。一方で、堅調な労働市場を背景に追加緩和には慎重だという。
4年以上ぶりの利下げは賛否拮抗した決定であったことが示された。「経済の下振れリスクをより考慮する傾向があった」「過度に引き締められた金融政策をあまりにも長期にわたって維持するリスクに留意した」などの意見があった。
ただ、コアインフレ率が3.2%と中銀の長期目標(2-3%)を依然として上回る中、金融緩和がインフレ圧力を再燃させる可能性についても懸念。今回の決定が今後の会合での追加利下げを約束するものではないとの意見で一致した。

(対米、対中の貿易は)
 2023年の対米貿易は約764億豪ドル(輸出244億ドル、輸入520億ドル)、対中貿易は3089億豪ドル(輸出2042億ドル、輸入1047億ドル)と対中が4倍以上だ。中国の景気動向や米国の対中関税がより重要視される。
因みに対日は1140億豪ドル(輸出878億ドル、輸入262億ドル)

*NZドル「通貨7位(9位)、株価17位(17位)、オア中銀総裁が突然の辞任。NZドルには影響せず」
(ドルが安いので浮上。株価は安い。リセッション中)
 今年はドルが安いのでNZドルがやや浮上している。NZドルの良い材料はない。米国の中国への厳しい関税政策で中国に依存するNZ経済にも悪影響が及ぶ。長期金利が4.65%と高く財政がしっかりしているという従来の要因はあるが。NZ株価指数も弱く年初来5.42%安。

(NZ中銀のオア総裁が突然辞任、任期3年残す)
 NZ中銀オア総裁が3月5日、辞任すると発表した。理由は明らかにしていない。オア総裁は2018年に総裁に就任。2期目の任期5年のうち3年を残していた。3月31日までホークスビー副総裁が総裁代行を務め、オア氏は同日、正式に退任する。
 発表を受け、NZドルは一時下落したものの、その後は下げ幅を縮小した。先週は対円、対ドル、対豪ドルでも上昇しているので大きな影響はない。NZ中銀は金融政策に委員会制を導入しており、ホークスビー総裁代行は首尾一貫したリーダーシップを発揮するだろうと指摘されている。
 オア総裁は、新型コロナウイルスのパンデミック後にインフレ抑制のため積極的に利上げを実施し、リセッションを招いたとして批判を受けていた。また政府は向こう5年間、NZ中銀に支出削減も求めていた。ウィリス財務相は、NZ中銀理事会の推薦に基づき4月1日より最長6カ月間の暫定総裁を任命する予定だと述べた。オア氏退任の理由についてはコメントしなかった。
 オア中銀総裁は、「NZドルは適正価格付近で取引されている」と述べていた。

(焦点は3月20日に発表の4Q・GDP)
 焦点は3月20日に発表予定の4Q・GDP。予想では前期比0.2%増加の予想でリセッションを抜け出す可能性もある。ただ前年比では0.8%減少予想。
4Q小売売上が前期比0.9%増加(前回は0%)、2月企業信頼感指数が58.4(前回は5.4)、2月消費者信頼感指数は96.6(前回は96.0)で改善傾向にある。

企業の景況感は改善しており、幅広い範囲に及んでいる。金利が低下し、商品輸出価格が予想を上回っていることから、経済は回復の道を歩み続けている。4Qに経済がプラス成長に戻ったことは、さまざまな指標から明らかだ。指標は、企業が輸出の増加を予想し、投資を増やし、従業員を雇用する計画を立てている一方で、利益は安定していることを示した。

(今週は)
今週は4Q製造業売上 と2月PMIの発表がある。

(オア中銀総裁の直近のコメント)
オア中銀総裁は、国内経済は現在、低水準で安定したインフレ環境にあるが、不安定な国際情勢によって影響を受ける可能性があるとの見方を示した。議会の委員会で述べた。
今年は、GDP成長や雇用の伸び、低水準で安定したインフレを実感できるはずだとも述べた。 ただ、足元で「地理・経済的な分断が見られるため、世界経済の潜在成長率は低下し、国際的な物価変動が起こる」との見方を示した。