ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)


総括

FX「自らを兵糧攻めする米国の政策。日本は成長率が低い」

ドル円=147-152、ユーロ円=159-164、ユーロドル=1.06-1.11

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨首位(首位)、株価16位(18位)、物価は上昇したが成長率が弱い」 
(円は2日間で首位に返り咲き、株は弱い)
 先週は一時ユーロに年初来首位の位置を明け渡したが2日間で取り戻し首位に返り咲いた。世界が不確実に満ち溢れれば円買いが起きる(日本の投資家がリパトリするだけだが)。
日経平均は依然マイナス圏での推移で年初来5.56%安。10年国債利回りは1.51%。
今週は年度末、一般的には決算前で静かだが、買収案件などの特殊玉が出る時期でもある。


(需給=貿易、外貨投信で円買いも)
2月貿易統計は5845億円の黒字となった。米国関税賦課の前の駆け込み輸出と原油価格が下落し輸入が減少したからだろう。
2月の外貨投信残高は86.76兆円で、1月の90.31兆円から3.55兆円減少した。2月の円高要因となっている。
 ただ散発的にはソフトバンクの米国投資や航空会社の飛行機購入のドル買いも出ているようだ。


(日銀は政策変更なし)
 日銀は先週の金融政策決定会合で、政策金利である短期金利の誘導目標を現行の「0.5%程度」に据え置いた。植田総裁は、トランプ米政権の高関税政策について「海外発の不確実性はここにきて急速に高まっている」と警戒感を表明。今後の利上げに当たっては「おおむねオントラック」と評価した国内の経済・物価動向も含めて「両方の側面を的確に見極めて判断したい」と強調した。
3月の月例経済報告ではトランプ政権は4月以降、貿易相手国と同水準の関税を課す「相互関税」や自動車への追加関税を導入する見通し。植田総裁は「4月初めにかけて(関税政策の詳細が)もう少し明らかになった時点で(経済・物価の)見通しを見直したい」と説明。米国では既に消費者心理の悪化を示す指標も出始めており、「どの程度深刻化するか注視する」とした。


(今週も日銀に注目)
 今週は3月製造業・サービス業PMI、2月企業向けサービス価格指数、3月東京都区部消費者物価の他に、日銀金融政策決定会合の議事要旨(1月23~24日開催分)、基調的なインフレ率を捕捉するための指標、
日銀金融政策決定会合における主な意見(18~19日開催分)、BISの国際資金取引統計の発表もある。
(連合の春闘賃上げ率、前年超え5.46%、34年ぶりの高水準)
連合が3月14日発表した2025年春闘の1次集計によると、基本給を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給(定昇)を合わせた賃上げ率は、加重平均で5.46%と前年同時期に比べて0.18ポイント上昇した。2年連続で5%を超え、1991年以来34年ぶりの高水準となった。


(日本の景気は強くない。物価は高い)
 OECDは先週、日本の2025年成長見通しを前回12月より0.4%下方修正し1.1%とした。インフレ率は1.3%上方修正し3.2%とした。

*米ドル「通貨11位(11位)、株価(NYダウ)12位(13位)、自らを兵糧攻めするかのような米国の政策」
(自らを兵糧攻めするかのような米国の政策)
 先週の朝の動画で、トランプ政権の政策のような「変則」は長続きしないと話したが。歴史学者ハラリ氏も歴史的には「信頼性」が続いている期間が圧倒的に長いとしていた。いずれトランプ体制にも矛盾が出てくるだろう。自ら望んだ最適な商取引を海外への援助として批判し、米国の消費者の負担となる体制を構築するのは今後も障害が生じてくるだろう。隣国メキシコへの関税賦課が当初は2月だったのが、3月、4月と引き伸ばされたのはその例の1つだ。自らを兵糧攻めするかのような政策だ。


(弱いままのドルと米株)
 強硬だがトランプ政権の不安定さが米ドル安、米株安を生んでいるのだろう。ドルは年初来11位、3つの株価指数はすべて年初来マイナス圏、10年国債利回りは4.25%で年初の4.57%より低い


(FRB利下げ見送り、 成長見通し引き下げ、インフレ見通し引き上げ)
 FRBは金融政策を決める会合を開き、利下げを見送り、政策金利を据え置くことを決定した。一方、会合の参加者が示した見通しでは物価上昇や景気の減速が示され、トランプ政権の関税引き上げの影響を懸念する形となっている。声明では、経済活動は底堅いペースで拡大し、失業率もこの数か月間低い水準で安定しているとした一方、インフレ率についてはいくぶん高いままだとしています。
GDP=国内総生産の予測は、実質の伸び率が2.1%から1.7%へと前回より0.4ポイント引き下げられ。トランプ政権の関税引き上げの影響を懸念する形となっている。
物価の見通しについては、ことし10月から12月のPCEの物価指数の上昇率が2.5%から2.7%へと前回から0.2ポイント引き上げられた。
パウエル議長は「重要なことは、参加者が成長や雇用、インフレ目標の達成に対するリスクの評価を引き上げたことだ」と述べて、経済の先行きに対する警戒感をにじませた。


(今週の重要指標)
今週は3月製造業・サービス業PMI、消費者信頼感指数、2月耐久財受注、4Q・GDP確定値、2月個人所得支出、PECプライスインデックス、ミシガン大学消費者態度指数確報を注目したい。


(GDPナウは、サプライチェーンは大丈夫か)
 1QアトランタGDPナウはマイナス2.8%からマイナス1.8%まで改善しているが、依然マイナス圏だ。サプライチェーンインデックス(GSCPI)はコロナ禍ほど悪化していない。まだ関税賦課前でもあるが、
2月はマイナス0.07。2023年5月のマイナス1.56からは悪化している。21年12月は最悪の4.42でサプライチェーンが乱れ高インフレとなった。


(景気減速は)
 米国の経済指標は、トランプ米大統領の貿易政策に対する不安の高まりが、緩やかになりつつある経済を深刻な景気後退に陥れるかどうかをめぐる議論が激化している。
「ソフトデータ」と呼ばれる家計や企業の景況感調査は、トランプ大統領が関税や連邦政府支出の大幅削減を進める中、今後著しい景気減速を警告している。しかし、雇用や製造業などの政府統計から得られる「ハードデータ」は、スタグフレーションや景気後退の可能性さえ含むこうした懸念が誇張されていることを示している。
こうした相反するシグナルにより、世界最大の経済大国の将来についてワシントンやウォール街は不安に陥っている。数週間のうちに、世界経済の好調な推移から最大の不確実性の原因へと変わった米国。FRBの当局者は、年間成長率の予想を2022年以来最大の下方修正し、OECDは米国の貿易政策により世界中の経済活動が減速すると述べている。

*ユーロ「通貨2位(2位)、株価3位(2位)DAX)、2日天下」
(2日天下)
先週は3月17日、18日と年初来で円を抜きTップに立ったが、週後半は減速、再び2位に後退した。株価指数(独DAX)は年初来14.98%高と強い。10年国債利回りは年初の2.36%から上昇して2.77%。


(独ZEW景気期待指数が大幅改善)
3月のドイツZEW景気期待指数は51.6で、2月の26.0から予想以上に改善した。予想は50.3。
数十億ユーロの財政パッケージに関する合意など財政政策の今後に関する良いシグナルが指数の上昇につながったとし、「特に、金属・鉄鋼メーカーや機械工学部門の見通しが改善した」と指摘。ECBの連続利下げによる資金調達の改善も挙げた。
 ユーロ圏ZEW景気期待指数も39.8と前回の24.2から改善した。
一方、3月のユーロ圏消費者信頼感指数はマイナス14.5と、前月のマイナス13.6から0.9ポイント低下した。 予想はマイナス13.0。


(今週の注目は)今週
  今週は3月製造業・サービス業PMI 3月独IFO企業景況感指数、雇用などの発表に注目したい


(財政拡大)
 ドイツのシュタインマイヤー大統領は、国防やインフラ投資に振り向ける巨額財源を確保する基本法(憲法に相当)改正案に署名し、改正が成立した。ドイツは、対ロシア防衛の強化やウクライナ支援の拡充、経済再建を急ぐ考え。改正案は今月、上下両院を通過していた。
 基本法改正により、年間の国債発行を国内総生産(GDP)比0.35%までに抑える債務抑制ルールに例外規定が設けられる。具体的には、国防費のうちGDP比1%を超える分については無制限に起債を認め、道路や鉄道改修、温暖化対策などに充てる5000億ユーロの特別基金を創設する。


(4月利下げ示唆、インフレ鈍化などで=ギリシャ中銀総裁)
ストゥルナラス・ギリシャ中銀総裁は、インフレ鈍化や賃金の緩やかな伸び、サービス価格の圧力緩和を背景に、ECBが4月に利下げを行う可能性が高まっているとの見方を示した。
ストゥルナラス氏は「全ての兆候が4月の利下げを示唆している」と指摘。その上で、4月まであと1カ月あるため利下げを実施すると断言できないとし、「もし決定が今日であれば、利下げへの確信はより高いものになるだろう」と述べた。


(フィッチ、ドイツのAAA格付けに警鐘)
 フィッチは、歳出拡大が財政再建策によって相殺されない場合、あるいは持続的な成長の改善につながらない場合、ドイツの最高ランクの信用格付け「AAA」が長期的には圧力にさらされる可能性があると指摘した。

*ポンド「通貨4位(5位)、株価9位(9位)、政策金利は据え置き予想だが経済は強くない」
(好材料はないが不安定なドルに対して買われる)
 あまり好材料はないが、米国の不確実性によるドル安と米株安で、対価としてポンドが買われている。年初来では4位。FT株価指数は年初来5.8%高。10年国債利回りは4.72%。

(英中銀、2会合ぶり据え置き、不確実性で)
英中銀は、政策金利を4.5%に据え置いた。据え置きは2会合ぶり。米国の関税政策が原因で貿易を巡る緊張が高まり、国内外の経済に高度の不確実性があると指摘し、今後、会合ごとに状況を分析し政策を決定する方針を示した。
政策金利の据え置きは8対1で決定。ディングラ委員が0.25%利下げを主張した。 ベイリー中銀総裁は「現在、経済に多大な不確実性がある。金利は徐々に低下傾向をたどるとの見方は変えていないが、6週間ごとの政策決定会合ごとに「世界経済と国内経済の動向を非常に注意深く見ていく」と述べた。
3月の消費者信頼感指数はマイナス19と、前月から1ポイント改善した。改善は2カ月連続で3カ月ぶりの高水準となったが、長期平均のマイナス10は下回った。


(今週は英中銀ベイリー総裁あり)
今週は英中銀ベイリー総裁、ハト派のディングラ政策委員の講演、3月製造業・サービス業PMI、2月消費者物価 1月貿易収支、2月小売売上などの発表がある。
(家計のインフレ期待、2月は1年超ぶり高水準)
米シティと市場調査会社ユーガブの2月の月次調査によると、英国のインフレ期待が2024年1月以来の高水準に達した。 家計の1年先のインフレ期待は3.9%と前月の3.5%から上昇。長期では同3.7%から3.9%に上昇した。


(財政赤字が増大)
今年度(2024年4月-25年3月)財政赤字は、予測を大幅に上回る見通しだ。春季財政報告を前に公的財政の脆弱さが浮き彫りになった。
今年度最初の11カ月間の累計赤字は1322億ポンドと、予測よりも204億ポンド多かった。
リーブス財務相は3月26日に財政報告を発表する。公共支出と福祉で数十億ポンドの削減を発表すると見込まれている。
2月時点で純債務は2兆8000億ポンドと、国内総生産(GDP)の95.5%に達し、1960年代初頭以来の水準に迫った

*豪ドル「通貨8位(8位)、株価14位(15位)、4月政策金利は据え置きか。対米関税問題、中国景気動向で不安定」
(豪ドルは年初来8位、円より弱いがドルより強い)
 豪ドルは年初来8位、円より弱いがドルより強い。豪全株指数は年初来3.93%安。10年国債利回りは4.44%


(2月雇用の見方)
 2月の雇用統計では、就業者数が予想外に減少し、労働市場の逼迫が緩和する兆候を見せた。5月利下げ観測が強まった。
就業者数は前月比5万2800人減少。予想は3万人増加だった。 失業率は1月と同じく4.1%で予想と一致。
2月に約4年ぶりに利下げしたRBAは、労働市場の強さがインフレを押し上げるリスクがあるとして追加利下げの言質を与えなかった。スワップ市場では4月1日の利下げ確率は10%程度にとどまるものの、5月の確率は70%から78%に上昇した。
オックスフォード・エコノミクスは、退職が近い年齢層の就業者減少は、需要減少の兆候というより、年齢が高めの働き手が労働市場から退場したためとの見方を示し「労働市場は依然タイトな状況だ」と述べた。「RBAは労働市場の強さに起因する賃金の大幅上昇リスクを気にしていたが、さほど心配する必要はなかったように思える」と述べた。


(今週の注目)
今週は3月製造業・サービス業PMIと2月消費者物価の発表がある。またRBAジョーンズ総裁補佐の講演がある。


(政策金利と選挙、労働党政権は選挙前に多額の予算を打ち出すと予想されており、RBAの利下げ余地が減る可能性がある]
 チャーマーズ財務大臣は今週議会に予算を提出する予定。選挙が近づく中、労働党政権は有権者の支持を集めることと支出を抑制することのバランスを取る必要がある。予算では、不満を持つ有権者の生活費負担を軽減し、労働党政権の再選の見通しが改善していることを示すために支出を増やす必要がある。しかし、大臣は、ンフレ再上昇のリスクを回避しなければならない。
 5月17日までに総選挙が実施される予定で、世論調査では労働党政権と中道右派野党連合がほぼ互角となっている。 労働党政権は今年1月以来、医療、交通、全国ブロードバンド、学生ローンの削減など、さまざまな分野に今後4年間で350億豪ドルを投資することを約束している。

*NZドル「通貨7位(6位)、株価17位(17位)、リセッション抜け出すも反落」
(一時首位の円に迫る勢いがあったが後半失速)
 NZドルは年初来6位から7位へ後退。先週は一時首位の円に迫る勢いがあったが後半失速した。週足で長い上ヒゲを残した。NZ50株価指数は先週は1.24%下落、年初来7.61%安と冴えない。10年国債利回りは
4.63%。


(リセッション抜け出す)
 4QのGDPは前期比で0.7%増加し、リセッションから抜け出した。予想の0.4%増を上回った。前年比では1.1%減少した。予想は1.4%減。4Qは16の産業のうち11の産業がプラスとなった。高い伸びを示したのは賃貸、雇用、不動産サービス、小売業、宿泊業、医療・社会福祉だった。景気回復の第一歩で、その兆候が出始めたが、建設業など依然としてかなり弱い分野もある。


(政策金利は引き続き引き下げか)
中銀は昨年8月以降、計1.75%の利下げを実施し、政策金利は3.75%となっている。中銀は2月の会合で、4月と5月に0.25%の追加利下げを予想。年内にさらにあと1回の利下げを実施する可能性もある。


(今週は消費者信頼感指数)
今週は3月消費者信頼感指数、来週は3月企業信頼感指数、そして4月9日に政策金利決定となる。


(2月は貿易黒字)
 2月貿易収支は5.1億NZドルの黒字に転じた。前月は5.4億NZドルの赤字。輸出は16%増の67.4億NZドルとなり、粉乳、バター、チーズ、肉類および食用内臓、牛乳、シリアル、小麦粉、デンプンの調製品、果物の出荷急増が牽引した。輸入は2.1%増の62.3億NZドルと緩やかに増加し、機械設備、肥料、航空機および部品、鉄鋼製品が大幅に増加した。主要市場全体で輸出が増加し、中国向けが16%、豪向けが17%、欧州連合向けが37%、日本向けが7.4%増加した一方、米国向けは5.5%減少した。輸入は中国が3.8%、米国が4.1%増加した一方、欧州連合向けが3.3%、豪向けが9.3%、韓国向けが5.7%減少した。
 尚、対米貿易はNZの赤字であり、米国から厳しい関税を賦課される要因はない。