数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Onlineがおすすめの1冊をピックアップ。今回はM&Aをテーマにした経済小説『闇と闇と光』を取り上げる。

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『闇と闇と光』 恵島良太郎 著 幻冬舎 刊

スタートアップの経営者たちへ向けた、異色のM&A小説。M&Aという経営者にとって人生最大のイベントを、物語を通じて疑似体験できる貴重な一冊だ。M&Aに関心を持つ読者にも入門の一冊として大いにお勧めできる。

あらすじはこうだ。主人公は順調な成長を遂げたスタートアップの経営者。第二の人生を見据えて会社売却を決意するが、そこで思わぬ悲劇に見舞われる。しかし、周囲の支援を得ながら形勢を立て直し、新たな人生を切り開いてM&Aに携わっていく――。

著者によると、物語は「半ばノンフィクション」で、M&Aを実際に手がけてきた著者の経験が反映されているという。そのため、M&Aの準備段階から実務の細部、手続きの注意すべき点まで、リアルに描かれている。随所にM&Aに関する専門用語の解説がつき、読み進めながらM&Aの知識が自然と身につく構成は秀逸だ。読みながら学べる経済学習小説と言っていいだろう。

タイトルの「闇」が示す通り、M&Aの危険な側面にも切り込んでいる。企業乗っ取りを企てる悪意ある会社や、その背後で糸を引く経営者の存在が物語中に語られる。これらの描写は、M&Aに臨む経営者への警鐘として示唆に富む。(2025年1月22日発行)

【書誌情報】
書名:闇と闇と光
著者:恵島良太郎
発行所:幻冬舎
定価:1980円(本体1800円+税10%)
発行日:2025年1月22日
版型:四六判
ページ数:408頁
ISBN:9784344043862