ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

FX「5年ぶりに円高が進む要因は二つ。米国はトランプ変則政策にきしみ」

ドル円=142-147、ユーロ円=160-165、ユーロドル=1.09-1.14

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨2位(3位)、株価19位(17位)、5年ぶりに円高が進む要因は。円高では景気浮揚はない」
(円高株安。ドル円年足は5年ぶりで陰線進行中)
 ドル円は年初来2位。年足は5年ぶりの陰線となっている。需給が変わったのだろう(後述)。円高になると株価は弱くなる。本誌で追っている19市場中で最弱の19位、年初来5.37%安。トップのギリシャが22.75%高、独DAXの19.38%高に大きく引き離されている。10年国債利回りは1.445%。

(マイナス成長、企業苦境)
 円高株安が続くと良い話は出てこない。円高なら物価安となるが、コメ行政の失敗で主食が高止まりしている。日銀は過去3回、景気失速時に利上げをして失敗し直ぐ撤回している。さて今回はどうする。
円高では企業収益が悪化、株安となる。税収も減少し政府は経済対策を打ち出しにくくなる。

*1-3月期GDP速報値は、前期から0.2%減り、4四半期ぶりのマイナスとなった。個人消費が振るわなかった。年率換算では0.7%減だった

*日産が工場閉鎖、2万人人員削減
*シャープは亀山第2工場を鴻海精密工業に譲渡
*ホンダ、2026年3月期の連結営業利益が前年比58.8%減
*パナソニック1万人人員削減

(外貨投信残高が減少中)
外貨投信残高は2023年に16.6兆円、24年に28.5兆円増加して円安となったが、今年は1-4月で6.3兆円減少して円高に影響している


(原油安で貿易赤字が縮小、これも円高要因)
今年は2月、3月と連続貿易黒字でこれは4年ぶりの出来事だ。原油価格が下落し、エネルギー輸入金額が約半減し貿易赤字が縮小。円高要因となっている。

(赤沢再生相、今週訪米か)
赤沢経済再生相が3回目の日米関税交渉を行うため、今週後半にも訪米を検討していることが分かった。 日本側が求める自動車・同部品の関税撤廃を巡って米国との溝はなお深いと政府や与党の関係者はみており、両政府間で続けている事務レベルの交渉の進ちょくをにらみながら調整を進める。


*米ドル「通貨11位(11位)、株価(NYダウ)14位(14位)、格下げ、トランプ変則政策にきしみ」
(米英、米中関税交渉で戻すも、週末に格下げ報道あり)
 ドルは今月はここまで4位で年間の下げ幅を縮小している。株価指数は年初来でダウとS&Pがプラス圏へ回復した。ナスダックもあと一息でプラスだが週末に出たムーディーズの米国格下げで再下落するか。
10年国債利回りは4.44%。

(米国の格付けを最高位の「AAA」から「AA1」に格下げ)
 ムーディーズは、米国の格付けを最高位の「AAA」から「AA1」に格下げした。見通しは「安定的」に変更した。 ムーディーズは、現在検討されている財政案によって義務的な歳出が複数年にわたり大幅に削減されるとは考えにくいとし、米国の財政状況は過去と比較して、また他の高格付け国と比較しても悪化する可能性が高いとの見方を示した。 同時に、トランプ政権が掲げる関税措置で米国の長期的な経済成長に大きな影響が及ぶとは予想していないとした。

(弱い経済指標。CPIは低下もインフレ期待は上昇)
*ミシガン大学5月の消費者信頼感指数速報値は50.8、予想は53.4、前回値は52.2だった。米国の1年間のインフレ予想が5月に前月の6.5%から7.3%に急上昇。
*4月の輸入物価指数は前月比0.1%上昇した。資本財コストの急増がエネルギー製品の価格低下を相殺し、予想外の上昇となった。3月は0.4%下落していた。
*4月の住宅着工件数は年率換算で前月比2.1%減
*5月のニューヨーク州製造業業況指数はマイナス9.2。前月のマイナス8.1から低下し、3カ月連続の悪化
*4月小売売上高、伸び0.1%に減速 関税前の駆け込み効果薄れる

(トランプ減税法案、下院予算委で否決)
トランプ米大統領が掲げる減税策を盛り込んだ法案が16日、議会下院の予算委員会で採決されたが、歳出削減が不十分と懸念する与党・共和党の一部議員が反対に回り、否決された。
法案には、第1次トランプ政権で実施された所得減税の恒久化や、一部のチップ・残業代への課税免除、国防支出の拡大、国境取り締まり向けの予算増額などが盛り込まれている。
21人の共和党議員のうち5人が反対した。採決に先立ち、トランプ大統領は共和党議員に結束するよう呼びかけていた。
造反議員らは、ジョンソン下院議長が低所得者向け医療保険制度メディケイドのさらなる削減と、民主党が実施したグリーンエネルギー減税の完全撤廃に同意しない限り、支持を保留し続けると強調している。予算委は同法案を改めて審議するため、18日夜に再招集する。

(関税交渉が面倒になったか)
トランプ大統領は16日、トランプ関税を巡り約150カ国から交渉の申し出があると明らかにしたうえで「多くの国を一度に相手することはできない」と話し、今後2〜3週間以内に各国の関税率を示した書簡を一斉に送る方針を明らかにした。


*ユーロ「通貨3位(2位)、株価2位(2位)DAX)、米国の不確実性でユーロ高だが、欧州経済も改善中)」
(ユーロは通貨3強の一角維持)
 先週はユーロが一時、年初来首位に立ったが、終末は3位に後退した。米英、米中貿易戦争の緩和でリスク回避のスイス買いやユーロ買いが後退した。ユーロドル週足は小幅だが4週連続陰線。独DAX指数は堅調で年初来19.38%で世界2位。独10年国債利回りは2.59%。週末に米国格下げの報道があった。ドル売りとなるか、あるいは米国へのリパトリのドル買いも出るか。

(ラガルドECB総裁、ユーロとトランプ大統領を語る)
 ラガルドECB総裁は、ユーロが最近ドルに対して上昇したのはトランプ米大統領の不安定な政策が原因だとし、欧州にとってはチャンスだと捉えた。ラガルド総裁は雇用と購買力が改善していることを挙げ、インフレは引き続き低下しており欧州経済について楽観的な見方を示し、金融政策当局の独立性に挑戦することに対して警告した。ラガルド氏はデジタルユーロと単一資本市場に焦点を当て、「両分野において、私の6年間の在任期間中に見てきたものよりも大きな勢いがある」と述べた。 「銀行業界で行ったように、規制の調整も実現する必要がある」今年に入ってから投資家はドルを売っており、ドルは他の主要通貨に対して下落している。その多くは、米国経済に打撃を与える可能性のある不安定な関税からFRBの独立性に対する脅威まで、米国の政策決定に対する懸念を反映している。

(ECB、利下げ終了が近い可能性。各中銀総裁ら)
カザークス・ラトビア中銀総裁は、「インフレが2%前後で落ち着くというECBの利下げが終わりに近づいている可能性があるが、不確実性が高く、事態が急変しやすいため、政策見通しも変わる可能性があると述べた。
シュナーベル専務理事は利下げを停止すべきだとの考えをすでに示している。ビルロワドガロー仏中銀総裁は追加緩和の余地があると指摘している。市場は現在、6月5日の利下げを約90%の確率で見込んでいるが、その後は年内にもう1回の利下げしか織り込んでおらず、中銀預金金利が1.75%で利下げ打ち止めになる可能性を示唆している。

ビルロワドガロー氏は、世界的な貿易戦争の激化が重要なリスクだが、ECBがユーロ相場に影響を及ぼすために金利を使うことはないと発言。そのようなことをすれば貿易戦争が通貨戦争になると述べた。
「残念ながら貿易戦争のリスクはある。ただ、通貨戦争とは、各国が積極的に金利を活用して経済的優位を得ようとする状況を指す。現時点ではそうした状況にはない」と述べた。

(米中貿易交渉は)
EUと米国はこのほど貿易交渉文書を交換し、交渉プロセスを開始した。両者の交渉は関税、デジタル貿易、投資など多くの分野に及んでいると報じられている。


*ポンド「通貨5位(6位)、株価9位(8位)、4月消費者物価は上昇か」
(為替、株と共に2025年はまずまずの動き)
ポンドは年初来5位、FT株価指数は年初来6.26%高。10年国債は4.65%
 
(4月消費者物価は上昇予想)
今週は4月の消費者物価の発表。これは、英中銀が短期的にはハト派的な姿勢をとっていないように見える理由を裏付けるものとなるだろう。過去3か月間で、ヘッドラインインフレ率は年初の3%から3月には広く予想されていた2.6%に鈍化。しかし、4月に何が起こるかは懸念材料であり、ここ数か月でガソリン価格が下落したのは喜ばしいことだが、これらの下落は、最新の4月の数字に現れると予想される無数の価格上昇によって相殺される可能性がある。ブロードバンド、地方税、エネルギー、その他の公共料金がすべて急騰しているため、英国の消費者と企業は、2Qの英国経済を崩壊させる可能性のある価格上昇の最悪の状況に直面している。4月の数字に関しては非常に多くの変動要素があるため、4月のインフレ率の予測は、2.6%から3.1%の間になる可能性が高いが、コアCPIは3%を大きく上回ると予想されている。

(英中銀の0.25%利下げは予想されていたものの、政策委員会での意見の相違あり)
 英中銀の0.25%利下げは広く予想されていたものの、政策委員会での意見の相違はそれほど予想されておらず、それ以降は国債利回りが上昇した。2人の委員は0.5%の大幅な利下げを希望していたが、金利据え置きに投票した2人の委員によって反対された。マン委員は2月に0.5%の利下げを要求していたものの、ピル委員と共に現状維持に投票した。これらの意見の相違は、現在の環境下で政策を策定することの難しさを如実に浮き彫りにしており、批判されるよりもむしろ歓迎すべきである。

(英国経済は1Qに予想を上回るも、課題は山積)
1Qの英国経済はGDPが前期比0.7%上昇し、予想を上回った。成長の主な原動力であるサービス部門は、卸売、小売、運輸、通信サービスが顕著な貢献を果たし、2024年4Qのわずか0.1%増から回復し、0.7%の増加を記録した。製造業も、3四半期連続の減少に終止符を打った。この回復は主に自動車部門と機械部門の成長によるもので、機械製造は前四半期比3.8%増、輸送機器生産は2.7%増となった。2月の生産急増は、米国の新たな関税導入を前に企業が製品の出荷を急いだためだろうと指摘している。しかし、建設部門は依然として停滞しており、前四半期と比べて成長は見られず、むしろ縮小の可能性さえ示唆している。

この成長は米国による英国製品への新たな関税発動前に記録されたものであり、その影響は2Qに顕在化するだろう。国内では、国民保険料率の上昇、最低賃金の上昇、一部の社会福祉サービスにおける価格上昇を受け、業界団体や研究機関は第1四半期の好調な業績は長続きしない可能性があると警告している。3月のGDP成長率は0.2%と、2月の0.5%から既に顕著な減速を示しており、今後はより厳しい課題が待ち受けていることを示唆している。


*豪ドル「通貨8位(8位)、株価12位(12位)、5月は堅調も先週は対円週足で波高し線、対ドルは2週連続陰線」
(5月は堅調も先週は対円で波高し線、対ドルは2週連続陰線)
豪ドルは年間8位も5月月間はここまで5位。米中関税の当面の合意が効いている。豪の中国への貿易依存度は輸出が36.6%、輸入の25.3%と極めて高い。豪株価指数は年初来12位の1.89%高、10年国債利回りは4.51%で4.45%の米国より若干高い。
5月は堅調も先週は対円で波高し線、対ドルは2週連続陰線

(「タカ派的」利下げか)
 RBAは今週0.25%の利下げを行うと予想されている。この利下げは既に豪ドルの価値に織り込まれているだろう。
基調的なインフレ率は依然として力強い。一方ヘッドラインのインフレ率の低下により、RBAは利下げに踏み切るだろうが、タカ派的な利下げとなる。「タカ派的利下げ」とは金融市場の専門用語で、これ以上の緩和は期待できないという警告を伴った利下げを指す。
これは、経済の弱体化を指摘し、さらなる利上げを行う用意があることを示唆する「ハト派的利下げ」とは異なる。

タカ派シナリオでは、国債の利回りが上昇し、その結果、外国人投資家が豪国債に引き寄せられ、通貨の価値が上昇すると予想される。

(コンセンサスを上回る賃金と労働市場データ)
短期金融市場は、市場コンセンサスを上回る賃金と労働市場データの発表を受けて、 2025年の残りの期間の利下げ予想幅を、先週初めの約90bpから約75bpに引き下げた。
 タカ派的な利下げを実施すれば、投資家は利下げ期待をさらに引き下げる可能性がある。4月の雇用者数が36,400人から89,000人増加し、20,000人増加という予想を大きく上回った。エコノミストらは「今後数カ月で緩和の緊急性は低下している」としている。

労働市場が好調であることはさておき、米国が最大限の関税政策を撤回する決定を下したことで、RBAも政策を緩める理由が生まれている。
ANZは5月、7月、8月に25bpの利下げを予想してたが、「我々は現在、今年5月と8月に25bpの利下げを予想しており、2026年第1四半期に最後の25bpの緩和が行われると予想している」と述べている。


*NZドル「通貨6位(6位)、株価17位(15位)、NZ中銀、来週利下げか」
(通貨は6位で強くもなく弱くもない、利下げ予想では下押し)
 NZドルは年初来6位とまずまずの位置。ただ株価は弱く50指数は年初来17位で2.47%安。10年国債利回りは4.62%。

(NZ中銀、来週利下げか)
NZ中銀は利下げを継続する可能性が高い。金融政策は景気候帯から抜け出したばかり恵引き続き支援的になると予想されており、政策金利は3%まで低下するる可能性が高い。 GDPは2025年に2.7%、2026年に2.8%成長すると予測されている。金利の低下により、家計消費と建設投資が活発化するだろう。
 現在、より低い金利に移行する為借り手が増えており、可処分所得の増加が消費者支出を押し上げるだろう。
5月に0.25%の利下げを実施した後、7月か8月には3%への追加緩和が実施される可能性が高い。成長の下振れリスクを回避するために、RBNZは当初予想されていたよりも金利をさらに引き下げる必要があるかもしれない。

(最近のNZ経済)
 NZ経済は2025年に回復の兆しを見せ始めており、商品価格の上昇と金融緩和が回復を牽引している。 2025年は好調なスタートを切り2025年に期待される回復が実際に始まりつつあることを示す兆候が数多く見られる。 成長を支えている主な要因は2つある。世界的な懸念にもかかわらず輸出価格が上昇していることと、金利引き下げが家計や企業に波及していることである。

(財政規律は)
一方、財政規律が維持される中で政府支出は2025年も抑制され、借入はわずかに増加し、金融政策と規制措置を通じて景気回復を支援することに重点が移る。

政府は財政再建に引き続き注力しているが、税収の低迷により財政赤字削減にはまだほとんど改善が見られない。 政府は引き続き予算の健全化に取り組んでいる。これは、政府支出が成長の原動力にはならないことを意味するが、規制政策は他の分野での成長を支える。政府は緊縮財政を維持しながら、2030年までに黒字化を目指している。

(足を引っ張る米国関税政策)
ただ世界的な貿易摩擦が影を落とすしている。地政学的な不確実性、特に米中貿易摩擦は依然として脅威となっている。
世界経済の成長は弱まる見込みで、貿易のパターンは世界貿易システムの新たなルールを反映して変化する。しかし、NZの回復がより緩やかに進み、失業率が6%近くまで達するリスクがある。