
総括
FX「5月、6月の円安は外貨投信急増で、関税の影響は発効後から」
ドル円=145-150、ユーロ円=170-175、ユーロドル=1.14-1.19
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨6位(5位)、株価17位(17位)、5月、6月の円安は外貨投信急増で。万博注意」
(円じり安、外貨投信とともに歩む)
4月まで年初来で首位に位置していた円は先週末では6位となっている。日経平均は年初来0.81%安、35年前の高値を一気に上抜けできないようだ。10年国債利回りは1.506%。
(外貨投信投資急増で円安へ)
外貨投信残高は2023年は16.6兆円、2024年は28.5兆円増加し円安を誘導してきたが、今年2月-4月で7.6兆円減少し円高の主因となっていた。しかし5月-6月で10.7兆円増加し、再び円安相場を形成した。
投資先は米国からの逃避で欧州かと思いきや、米国向けが中心であった。需給的には貿易収支よりブレが大きく円市場を主導している。

(貿易需給)
表の通り、貿易赤字は縮小しているが、まだ赤字の域から脱せない。黒字化には原油価格が50ドルを割ることが必要だろう。

(はたらけど はたらけど猶(なお) わが生活(くらし) 楽にならざり ぢつと手を見る)
5月の毎月勤労統計で実質賃金は5月に約2年ぶりの大幅な下落となった。インフレ調整後で5月に前年比2.9%減少した。
(今週は貿易統計と消費者物価)
今週は6月貿易統計と消費者物価に注目。コメ価格下落が物価低下に影響するか
(ベッセント財務長官が大阪万博へ)
米ホワイトハウスは、ベッセント財務長官が7月19日に大阪・関西万博を訪問すると正式に発表した。米政府代表団の一員として、19日に万博で予定されている米国の「ナショナルデー」に参加する。ベッセント氏は日本との関税交渉の統括役を務めており、赤沢経済再生相と会談を行う方向で調整が進んでいる。
(日本のGDP1.9%減少と試算)
大和総研は、トランプ米政権が日本に対して25%の相互関税率を適用する場合、日本の実質国内総生産(GDP)が2025年に0.8%、29年には1.9%減少するとの試算を発表した。
*米ドル「通貨11位(11位)、株価(NYダウ)15位(12位)、関税通知書の市場の反応は、ドル高・株安・金利上昇」
(関税通知書を送付)
トランプ大統領、先週、貿易相手国25カ国に関税通知書を送付した。EU、メキシコ、日本、韓国、カナダ、南ア、ブラジルなどに送付した。発効は8月1日。また銅や銅製品に対する50%の関税、医薬品に対する最大200%の関税を課すとしている。対象国は反発している。
国際商業会議所(ICC)の試算によると、トランプ米大統領が今週発表した一連の輸入品に対する関税措置を受け、米国の実効関税率は20%を超え、1900年代初頭以来の高水準になる見通し。
(関税通知書の市場の反応は、ドル高・株安・金利上昇)
先週は関税通知書送付の週となったが、先週はドルは3位、月間で2位とやや堅調。年初来では11位のままだ。関税通知書送付はドル高で反応した。ただ株価は3指数ともに下落。年初来では
NYダウが4.3%高、ナスダックが6.6%高、S&Pが6.43%とプラス圏を維持しているが、欧州の20%高、30%高となる市場もありそこからは引き離されている。10年国債利回りは先週、4.34%から4.41%へ上昇した。
(関税の影響はまだ出ていない)
まだ関税賦課も本格的に始まっておらず、駆け込み輸入もあり、関税の影響は出ていない。高関税で相手国が米国への輸出を削減すれば、米国の貿易赤字が縮小しドル高となる。物価は安い海外製品の輸入が減少するので上昇、金利も上昇する。先週はその一端を示したが、関税の発効はまだなので発効すれば、本格的なトレンドが見えてくるだろう。
関税による米国への不信感はドル安要因。
(GDP、CPI、サプライチェーンナウは)
現在のアトランタ連銀GDPナウは2.6%、クリーブランド連銀CPIナウは前年比で6月が2.95%、7月が3.05%、NY連銀サプライチェーンインデックスはゼロ。関税賦課の成長率、インフレへの影響はまだ起きていない。関税が発効してからの話だ。
今週は6月消費者物価の発表がある。前年比で2.6%上昇の予想(前月は2.4%)、コアは3.0%上昇の予想、前月は2.8%。
(最近の米国の貿易収支と輸出入金額)
以下の表の通り、関税の影響が出れば数値が変わりドルも動き出すだろう

*ユーロ「通貨2位(2位)、株価3位(4位)DAX)、トランプ大統領、EUに30%関税通告。需給的にはドル買い、混乱ではドル売り」
(ユーロと株が強い)
ユーロは年初来で通貨2位(対円5.85%高)、株価3位(21.83%高)と好調。独の10年国債利回りは徐々に利回りが上昇している(2.69%)
(トランプ大統領、EUに30%関税通告)
トランプ大統領は、EUに対し30%の関税を課すと表明した。交渉で条件が改善されなければ8月1日から適用すると伝えた。トランプ大統領は4月初めの「解放の日」にEUに対しては20%の関税を課すとしたが、その後、交渉のための90日間の猶予期間を設け、この期間中は一律10%の基本税率にとどめている。しかし交渉が進まないことにいら立ったトランプ氏は5月23日、50%関税を課すと警告した。
この関税は将来の需給的にはドル買い、米国への不信感醸成では混乱ではドル売りとなる。
(EUの反応)
フォンデアライエン欧州委員長は、こうした措置は米国・EUの経済に打撃を与えると警告した。今回通知された関税率は幅広く適用されるが、自動車や鉄鋼などに対するセクター別関税とは別になる。発効すれば、既にトランプ政権と合意した英国との比較で、EUは対米輸出で競争上不利な立場に置かれる可能性がある。
(ECB追加利下げに関する意見)
*シュナーベル専務理事=貿易を巡る不透明感にもかかわらずユーロ圏経済が予想以上に持ちこたえているため、追加利下げへのハードルは「非常に高い」との見解を示した。
*パネッタ・イタリア中銀総裁は、世界的な貿易摩擦や地政学的な動揺による経済成長への脅威が現在のディスインフレ傾向を強めるのであれば、ECBは金融緩和を継続すべきとの認識を示した。
*ポンド「通貨4位(4位)、株価8位(9位)、ポンドはまずまずの展開、今週は金利敏感指標の発表」
(ポンド、株ともにまずまずの位置)
ポンドは年初来4位で円よりも強く対円1.11%高、FT株価指数も、まずまずの9.4%高、10年国債利回りは4.63%で先進国では一番高い。いち早く関税交渉で米国と合意していることも、相場に落ち着きを与えている。
(5月GDP縮小)
5月のGDPは前月比0.1%減少し、予想外に2カ月連続のマイナスとなった。予想は0.1%のプラス成長。 サービス部門が小幅な成長を見せたものの、工業部門と建設部門の落ち込みが全体の足を引っ張った。 最近のインフレ急上昇にもかかわらず、8月の利下げは避けられないようだ。
5月鉱工業生産も前年比0.3%減少と前月の0.3%増から悪化・
(今週は金利敏感指標の発表)
今週は6月消費者物価や5月雇用などの金利敏感指標の発表がある。
ベイリー英中銀総裁は、英労働市場は軟化しており、それがインフレの目標回帰にどのように影響するかが重要な問題とする認識を示している。
(英中接近)
対米関係が不安定になる中、どこの国も中国と接近する機会が増えているようだ。英国のラミー外相は、中国の王毅外相と会談した。今回の会談で英中が協力できる分野のほか、両国の間で見解の相違がある分野について協議。
*豪ドル「通貨7位(8位)、株価13位(12位)、予想外の政策金利据え置きで豪ドルが上昇」
(予想外の政策金利据え置きで豪ドルが上昇)
豪ドルは先週は最強で年初来7位へ上昇、株価は小幅下げ、10年国債利回りは4.36%へ上昇。RBAが利下げ予想に反して据え置いたことによる。
(予想外の政策金利据え置き)
RBAは、大方の利下げ予想に反して政策金利を3.85%に据え置いた。理事のうち6人が据え置きを支持し、3人が反対した。コアインフレ率が中銀の目標レンジ(2-3%)の中間に鈍化し、個人消費も予想を下回る中、市場は3.6%への利下げをほぼ完全に織り込んでいた。
声明は「理事会はインフレ率が持続可能なベースで2.5%に達する軌道にあることを確認するため、もう少し情報を待つことができると判断した」と説明。「金融政策は国際情勢が豪州の経済活動やインフレに重大な影響を及ぼす場合、断固として対応することができる態勢にある」とした。
ブロック中銀総裁は、理事会内の意見の相違はタイミングに関するものであり、2Q消費者物価がおおむね予測通りであれば、金融緩和の道筋を維持するとした。
(財務相の反応)
チャーマーズ財務相は声明で、据え置き決定は市場が期待していた結果ではなかったとし、「今年2回利下げされたのは、インフレ面で実質的かつ持続的な進展があったからだ」と述べた。
(豪首相が訪中へ、経済関係の強化を目指す)
アルバニージー首相が12〜18日に中国を公式訪問し、経済関係の強化を目指す。首相は「中国は最大の貿易パートナーであり、貿易総額の3分の1を占め、今後もこのような勢いは続くだろう。両国の自由な貿易は両国と両国民、企業に有益なことだ。引き続き忍耐強く慎重に努力し、対話を中心に据え、中国と安定的な関係を築いていく」と表明した。
(今週は雇用統計)
今週は7月ウエストパック消費者信頼感指数、6月雇用統計、7月インフレ期待指数の発表がある。
(最低賃金を7月から3.5%引き上げ)
7月1日から2025/2026年度の最低賃金が時給24.95豪ドル、週給948豪ドルに引き上げられた。時給ベースでは、現在の24.10豪ドルから3.5%の引き上げとなる。
*NZドル「通貨5位(6位)、株価18位(19位)、政策金利は据え置き。円が弱いから上昇しているが、弱点は雇用」
(NZ中銀は予想通り3.25%で据え置き、今後の追加利下げ示唆)
NZ中銀は、政策金利を予想通り3.25%に据え置いた。ただ、中期的なインフレ圧力が予想通り緩和し続ければ、追加利下げを行う見通しを示した。
中銀は5月の前回会合まで6回連続で利下げを行い、金利を計2.25%引き下げてきたが、インフレ率が2.5%の水準にあり、貿易摩擦が物価を押し上げる懸念があることからより慎重なアプローチを取っている。
声明では、輸出価格の上昇と金利の低下が景気回復を支えている一方で、世界的な政策不透明感の高まりと関税により世界経済の成長は鈍化する見通しだと指摘。「これにより景気回復のペースは鈍化し、インフレ圧力は緩和するだろう」と述べた。中銀はインフレ率が2Qと3Qの上限に達すると予測している。
市場は中銀の声明を受け、少なくともあと1回の利下げがあると予想している。来週21日に2Qの消費者物価の発表がある。
(NZの投資家向け「ゴールデンビザ」に申請殺到)
NZ政府は、外国人投資家向けの新しい移民ビザ「ゴールデンビザ」に申請が殺到していると発表した。
4月にこのビザに関する規則を緩和し、高リスク投資に特化したカテゴリーの最低必要資金を1500万NZドルから500万NZドルに引き下げ、英語力要件も撤廃した。
ビザの申請を3カ月足らずで189件受理し、そのうち85件が米国人からで、中国からが26件、香港からが24件と続いたという。
(中国と食品安全、計量、有機製品認証分野で協力文書に調印)
李強首相とラクソン首相の立ち会いの下、中国とNZは食品安全、計量、有機製品認証分野で協力文書に調印した。協力文書によると、両国は食品安全、計量、有機製品認証などの分野で交流と相互学習を強化し、互恵的な協力を深め、二国間貿易を促進し、全面的戦略パートナーシップの発展に活力を注入する。