man
(画像=(写真=Dean Drobot/Shutterstock.com))

アベノミクスによる株高・不動産高・円安、また相続税の改正や件数急増など、個人金融資産が1,600兆円を超える日本のリテール金融業界というものは拡大が容易に想像できる市場である。金融業界の中では、ほとんどの社員は営業職に就いている。特に、入社後は9割以上が営業職から始まるのが通常であろう。ただ、同じ時間就業したとしてもトップセールスと普通の営業マンでは、成果に大きな差が生まれている。格差社会と言われるが、営業マンの間にも格差が広がっているのだ。

今回は金融業界に絞り、職種や扱う商品に関わらずトップセールスの考え方や行動に共通している点はどのような部分なのか、この点について考えていきたい。

富裕層や経営者顧客の開拓力

金融系の営業マンが安定的に結果を出す上でまず重要なことは、「富裕層や経営者顧客」の開拓である。

トップセールスは、中長期的に大きな収益につながりやすい富裕層や経営者などの優良顧客の開拓に力を入れている。一方で、優良顧客ほど競合する営業マンが多くなり、相手にされないのではないか、そもそも会っても何を話せばいいのか分からないという不安から、普通の営業マンはそういった層の顧客の開拓には積極的に動けない。結果、そういった優良な顧客層に対する圧倒的な開拓の差が生まれることになる。

実際、株式会社ランドスケイプが提供する「富裕層データベース」によると、日本の富裕層の比率は、経営者が約34%、医者・歯科医が約10%、不動産オーナーが約7%と、いわゆる事業法人や医療法人、不動産管理会社などのオーナー経営者で5割を占めている。トップセールスはこの層がどういった課題や悩みを持っているかを集中的に理解し、いかにそのニーズにあった提案ができるかを日々考えているのだ。

またトップセールスは、優良顧客に「できる営業マン」だと認識されるように、ビジネスにおける関心事はもちろん、資産防衛、教育、健康、娯楽、フィランソロピー(奉仕的活動)といった分野でもさまざまな引き出しを持っている。こういった優良顧客への意識や理解が開拓成果に大きく差をつけているといえよう。

【合わせて読みたい富裕層開拓シリーズ】
トップセールスが語る富裕層開拓の極意【1万字インタビュー】
富裕層の懐のコア資産を引き出すコツ【1万字インタビュー】
元野村證券トップセールスが語る「見込み顧客リストの管理方法」
元野村證券トップセールスが語る「開業医、地主、宗教法人の開拓方法」
元野村證券「伝説の営業マン」が明かす 「富裕層開拓」3つの極意

確度の高い提案を生むHDCAサイクル

普通の営業マンが場当たり的な営業を繰り返す一方で、トップセールスほど、事前準備の段階から短時間で質の高い提案を生み出す。ポイントは、誰もが手に入れられる情報から相手のニーズを明確化させる「確度の高い仮説」の構築能力だ。

逆の立場で考えてみてほしい。会った段階で自身や自社の課題や悩みを把握しており、さらに気づいていないニーズまで提示してくれる営業マンと、単に金融商品を売り込んでくるばかりの営業マン、どちらと付き合っていきたいだろうか。間違いなく前者が選ばれるだろう。では前者のようなトップセールスは、どのように会う前から顧客の情報を浮き彫りにし、確度の高いニーズの仮説を立てるのだろうか。

例えばトップセールスは、面談前の情報収集の段階で会社ホームページやFacebook、ツイッター等のSNS、帝国データバンク・商工リサーチなどを徹底して調べ上げ、「〇〇社長と会社について勝手ながら分析させていただきましたが、◯◯と◯◯という点が、◯◯と〇〇な理由で、今後課題になるかもしれないと考えます。この点いかがでしょうか?」と初対面の時点で潜在的なニーズを、仮説ベースでぶつけるのである。さらに、このように仮説(Hypothesis)を立て、実行し、検証し、改善するHDCAのサイクルを繰り返す中で、企業や顧客のニーズを事前に読み解く精度が格段に高まり、事前準備の時点で丸裸にして訪問できるようになり、より一層営業成果を高めているのだ。

また、この仮説構築の精度が高まってくると、どこに優良顧客がいるのか予見できるようになる。例えば、路線価などから逆算して相続ニーズが高い地域を見出したり、優良顧客が多くいそうな業界団体を発掘し、インターネットでもアクセスできる企業リストへアプローチしたり、または企業検索の手法から富裕層の資産管理会社を大量に浮かび上がらせたりと、優良顧客や潜在顧客を浮き彫りにすることができるようになるのだ。

顧客を惹きつけるセールストーク

いくら顧客のニーズを把握して、提案内容が優れていても、伝え方が魅力的でなければ開拓に結びつけるのは難しい。普通の営業マンなら相手のことを考えずに話すことに必死になり、「伝えた」気になってはいるが、肝心の提案内容は伝わらず顧客を逃しているものだ。一方トップセールスは、伝え方のフレームワークを精錬させ、提案内容が「伝わる」トークを意識している。

また提案時には、必然性・効用・実現可能性などの視点から提案を論証し、さらに今すぐに決定しないといけないという緊急性を感じさせ、クロージングにつなげている。このようにトップセールスほど、効果的な提案になるためのポイントをおさえ、常にセールストークに反映させていくのだ。これは一度訓練されるとあらゆるパターンで対応が可能になるスキルである。

トップセールスの考え方をいかに身につけるか

ここまでに挙げた項目については、誰もが実践しようとした経験が一度はあるはずだ。ただ最大の問題はその「習慣化」にある。トップセールスになるためには、彼らが顧客開拓の中で実践する考え方や行動を潜在意識に刷り込ませるように身につけ、日頃の営業活動に実際に活かしていく必要がある。

これらは、日々の営業活動だけで自然と身につくものでない。なぜなら身につけるべきレベルをどこに置くべきかが今ひとつ実感できていないからだ。そのためには一流の考え方を学べる良質な教育機会と、優秀な営業マンからの高いレベルのフィードバックが重要となってくる。トップセールスの部下がトップセールスになると言われるのには理由があるのだ。

【合わせて読みたい富裕層開拓シリーズ】
トップセールスが語る富裕層開拓の極意【1万字インタビュー】
富裕層の懐のコア資産を引き出すコツ【1万字インタビュー】
元野村證券トップセールスが語る「見込み顧客リストの管理方法」
元野村證券トップセールスが語る「開業医、地主、宗教法人の開拓方法」
元野村證券「伝説の営業マン」が明かす 「富裕層開拓」3つの極意