大学発ベンチャー

先日、帝国データバンクが『大学発ベンチャー企業の実態調査』というものを発表し、各種メディアでも「大学発ベンチャーの過半数が黒字」という内容で肯定的に報道されていたのは記憶に新しいでしょう。

勿論、黒字である事が良い事に疑いは無いのですが、今回は、もっと広い目線(一般企業との比較、大学投資全体の考慮)で大学発ベンチャーを見た時、それが本当に効率的な投資か、また、経済成長の基板として有効な投資かという事について考えてみたいと思います。

【参考】
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◉大学発ベンチャーとは


大学発ベンチャーには様々な定義がありますが、ここでは一般的に調査・報道で使われる以下の文部科学省・経済産業省による定義を用いましょう。(次で紹介する『大学発ベンチャー企業の実態調査』でも同じ定義に該当する企業が調査対象となっています。)

【大学発ベンチャーの要件( 『大学発等ベンチャー調査2011』文部科学省科学技術政策研究所第3調査研究グループ, 2012 より引用)】

下記のいずれか1つ以上に該当する事

(1)大学等の教職員・研究職員・ポスドク(教職員等)、学生・院生(学生等)を発明人とする特許をもとに起業したもの(特許による技術移転)

(2)大学等で達成された研究成果または習得した(1)以外の技術に基づいて起業したもの(特許以外による技術移転(または研究成果活用))

(3)大学等の教職員等、学生等がベンチャーの設立者となったり、その設立に深く関与す

るなどして起業したもの(人材移転)

(4)大学等、TLO やこれらに関連のあるベンチャーキャピタルがベンチャーの設立に際して出資をしたもの(出資)

ここで分かるように、(1)(2)といった大学での知見を用いた起業だけでなく、(3)には所謂「学生ベンチャー」も含まれますし、(4)の大学が出資者になる場合も「大学発ベンチャー」に該当する事に注意しましょう。


◉ 『大学発ベンチャー企業の実態調査』を見る


さて、ここから帝国データバンクの『大学発ベンチャー企業の実態調査』の中身を見てみましょう。

参考: 『特別企画 : 大学発ベンチャー企業の実態調査:大学発ベンチャー、過半数が黒字経営~自民党政権、「1000社計画」が寄与~』帝国データバンク, 2013

レポートの副題に入っているように、大学発ベンチャー企業が飛躍的に増えたのは小泉政権時代の「大学発ベンチャー1000社計画」による所が大きく、比較的新しい企業が多いです。
その業績は、2012年の損益状況が明らかな304社のうち、黒字企業が166社(54.6%)で、設立年別に見ると、「設立5年未満」の企業の65.4%が赤字ですが、それ以上の企業は5~6割程度が黒字という結果です。全体としては、若い企業が赤字体質であるという点を指摘しつつも、「日本経済を活性化させる起爆剤」として肯定的に捉えたレポートとなっています。

では、このレポートを中心に、大学発ベンチャーの業績を広い視野から見ていきましょう。