PIIGSとは、ユーロ圏で財政状況がとりわけ厳しいポルトガル(Portugal)、アイルランド (Ireland)、イタリア(Italy)、ギリシャ(Greece)、スペイン(Spain)の5カ国の略称で、それぞれの国名の頭文字を取ってつけられた不名誉な名称だ。

このPIIGSの一員として経済の低迷に陥っていたスペインは、欧州中央銀行(ECB)が3月から実施する量的金融緩和(QE)の影響をどのようにうけるのか。スペインの今後の経済状況に注目してみる。


2014年10~12月スペイン経済は7年ぶり高成長

不景気ばかりが伝えられる欧州圏だが、2014年10月~12月のスペイン経済は前年同期比2.0%増と7年ぶりに高成長を記録した。一方1月のCPI(消費者物価指数)は原油安が響き、前年同月比1.5%低下。しかし、落ち込みの一因ともなった原油価格の下落は、減税的効果をもたらし、内需への追い風にもなっている。スペインは、デフレリスクはくすぶるものの、ユーロ圏を上回るペースでの成長が見込まれている。数値上では欧州圏の中でも景気回復が進んでいるといえるだろう。


IMF見通しでは2015年は1.7%成長

ユーロ圏ではドイツが経済のけん引役を担う一方、スペインをはじめとするPIIGSがユーロ圏にとってお荷物となっていた。しかし、スペイン経済に回復の兆しがみられる一方、フランスやイタリアが全体の中でかなり足を引っ張る存在になってきていることがわかる。IMFが発表した2015年経済見通しでは、スペインの成長率1.7%に対し、フランスは1%、イタリアは0.8%と軒並みスペインを下回る見込み。スペインのデギンドス経済相は、2015年のスペインインフレ率について平均でゼロ付近とし、ぎりぎりデフレに突入しないという見通しを示している。ただ、スペインは日本と同様にエネルギー輸入の依存度は高く、過去数ヶ月の原油価格の落ち込みが物価の下落に圧力となることから、楽観視できない状態だ。