グローバルニッチ企業
(写真=Thinkstock/Getty Images)

経済産業省の経済産業省生産動態統計によると、日本国内での薄型テレビの生産量は2010年には約1,300万台だったが、2013年には約52万台にまで激減している。薄型テレビの組み立てはスマイルカーブの中央にあたり、たいして儲からないと言われている。スマイルカーブとは電子産業や産業機器分野の各事業工程における利益率構造を表し、笑った時の人の口の形のように両端が上がった形の曲線を描くことからそのように呼ばれる。曲線の両端の研究・開発や販売・アフターフォローの利益率が高く、工程の真ん中に位置する製造・組立の利益率が低いということだ。

そのような所で利益を上げるには、安く大量に作れることが条件になる。そしてその役割を人件費の高い日本ではなく、比較的人件費が安い中国や台湾のEMSが担うようになって久しい。

だからといって、中国や台湾のEMSが人件費の安さだけに頼っているわけではない。台湾のFoxconnなどは積極的な投資によって、その製造技術は世界でも指折りになった。いまではAppleが要求してくる品質や数量の厳しい要求に応えられるほどの技術力を持っている。

薄型テレビのスマイルカーブにおいて、部品や素材を製造する分野が川上に当たる。この分野において日本のメーカーは世界的な競争力を持っている。ガラス基板では日本電気硝子 <5214> 、旭硝子 <5201> が共に約20%のシェアを握っている。また、フィルターでは大日本印刷 <7912>、凸版印刷 <7911>、偏光板では日東電工 <6988> が25.3%、住友化学 <4005>が25%と高いシェアをもっている。

これらの企業は、国内での薄型テレビの生産台数が減少しても、確実に収益を上げている。一例として、日東電工の当期純利益と国内薄型テレビ生産台数の推移を比較してみるとはっきりと分かる。

ディスプレイ市場分析における最大手の調査会社ディスプレイリサーチ によると、今後の世界の薄型テレビの需要は右肩上がりと予想されてる。ならば、薄型テレビの製造が日本から失われても、これら川上にポジションを持つ日系メーカーが安泰かといえば実はそうでもない。


グローバルニッチトップ企業は「コミュ力」が生命線

経済産業省による「2014年版ものづくり白書」で、グローバルニッチトップ企業について「特定分野の製品・技術に強みを持ち、高い世界シェアと利益率を両立しながら、輸出を基本とした海外展開を行っている企業 」を指すとしている。薄型テレビの川上にある企業の多くがこれに該当する。

白書では「市場シェア」を高めるための取組と「利益率」を高めるための取組について聞いている。回答した企業のうち約7割の企業が「卓越した技術力を活かした高付加価値製品を提供することで、価格支配力を確保する」と回答している。またニッチ分野で強みを持つために重視する情報経路については、約9割の企業が「顧客からの相談」を上げている。

つまり薄型テレビの川上にいる企業の高い競争力は、顧客との密なコミュニケーションと信頼関係にかかっていることが窺える。


薄型テレビ産業の囲い込みを狙う中国

中国は積極的に液晶パネル製造に投資している。みずほ銀行のレポートによると中国における液晶関連の投資額は世界全体の約80%になると予想されている。また中国政府も、2009年の「電子情報産業調整新興計画」において中国を世界最大の液晶パネル消費・生産地にするとし、国策として液晶産業を支援する姿勢を見せている。2012年には中大型液晶パネルの輸入関税を3%から5%に引き上げている。

液晶産業を発展させるには液晶パネルや薄型テレビの製造だけでは持続しない。日本から薄型テレビの生産がなくなったように価格競争による消耗が激しいからだ。持続的に液晶産業を育てるには、川上の素材・部品産業の発展が不可欠だ。あわせて中国には巨大な薄型テレビ市場がある。中国政府は液晶産業の川上の部品や素材から、川下の消費までの出来る限りを中国国内の企業で囲い込み、産業を発展させようとしている。


現場に喰らいつき、技術力を失わないことが必要

高い競争力をもっている日系メーカーは、この中国の囲い込みにどのように割って入れるかが問われてくる。たとえ現在、高い技術力と競争力を持っていても楽観できない。なぜなら、それらのメーカーの技術力は上で書いたように製造現場との密なコミュニケーションの中から生み出されているからだ。

中国で生産され、中国で消費される薄型テレビが増えるほど、市場に適したテレビの形状や機能、生産方法が求められる。その変化の現場との接点を失い適時対応できないと、あっという間に競争力を失うことになりかねない。

日本国内から製造現場がなくなっていくにともない、メーカーもただ世界に売るだけで通用しなくなる。これから世界の人々と共にものを作り上げる力、グローバルな開発力があるかどうかが問われるようになるだろう。

(ZUU online)

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