「サービス付き高齢者向け住宅」の戸数が急増している。その中でJASDAQやマザーズ市場に上場し、成長が著しい介護銘柄のセントケアHD <2374> 、ケアサービス <2425> 、N・フィールド <6077> は介護と住宅提供の複合サービスで競合他社をリードし売上を伸ばしてきたが、ニーズの高まりによる異業種からの参入も目立つ。ここでは各社の現在の経営状況や住宅の提供サービスを具体的に紹介するとともに今後の高齢者向け住宅について考察していく。
高齢化社会に見る住宅事情
高齢化社会の進展に伴い、「サービス付き高齢者向け住宅」と呼ばれる安否確認や生活相談サービスを併せて提供する施設が増加している。厚生労働省によると、「サービス付き高齢者向け住宅」の戸数は右肩上がりで上昇し、2011年11月時点ではわずか30戸だったのが、2014年5月末時点では対前年比32.5%増の148,632戸と過去最高を更新した。
サービス機能と住宅の斡旋を同時に提供する事業が成長
セントケアHDは、JASDAQスタンダード市場に上場しており、訪問介護、入浴を中心に介護サービスを提供する企業である。直近の実績(2014年3月期)は売上高315億円(前年比110%)、当期純利益960百万円(前年比132%)で、売上高は10年以上連続で増収を続けている。
2015年3月期の重点戦略では、複数の介護サービスを1つの拠点で提供する新サービス「複合型サービス事務所」を開設・運営に取り組むことを挙げている。その一環として2015年2月11日付のけあNewsでは、グループ会社のセントケア千葉が首都圏及び千葉県木更津市で初めて複合型サービス事務所「セントケアさいわい」を3月に開設すると伝えた。
通所介護を主力とするJASDAQグロース市場上場のケアサービスは、最近ではサービス付き高齢者向け住宅の開設・運営にも注力している企業だ。直近の業績(2014年3月期)は売上高73億円(前年比106%)、当期純利益117百万円(前年比48%)。売上の特徴は、サービス付き高齢者向け住宅の利用の大幅な伸びにある。
具体例を挙げると、売上全体に占めるサービス付き高齢者向け住宅事業の比率は5.2%に過ぎないが、全体の利益に占める比率は12.3%で利益率も13.1%と介護事業の10.5%より高く、同社の経営に大きく貢献している。また中期経営計画でも、サービス付き高齢者向け住宅事業は2桁の伸びを想定しており、今後の業績の中心になることが予想される。
東証マザーズに上場のN・フィールドは、精神科看護に特化しており直近(2014年12月期)の業績は売上高が30億円(前年比160%)、当期純利益は231百万円(前年比122%)で増収増益と好調だ。同社では精神疾患患者への賃貸事業を行っており、2013年12月期の賃貸事業の売上高が前年度比2.5倍の158百万円と、大きく成長していることを有価証券報告書が示唆している。
各社ともに訪問・通所介護だけではなく、サービス付き高齢者向け住宅事業や住宅と介護の複合サービスを提供する事業に参入することで、売上を伸ばしていることが業績から伺える。
高齢者の住宅ニーズの高まり、異業種からの新規参入も
住宅関係の事業が成長している背景に、高齢者ならではのニーズの高まりがある。厚生労働省の資料では、75歳以上の高齢者世帯における持家率が1998年の75.5%から、2008年には69.9%と低下傾向にあるなか、要支援・要介護認定者のうち在宅が83%と、高齢者や要介護者に対する在宅の高まりが予想される。
この状況下では従来の老人ホームのみの対応が困難であることが予想されるため、2011年4月の通常国会で「高齢者住まい法」が前面改正された。そこで考え出されたのが「サービス付き高齢者住宅」である。老人ホームと比べて入居一時金が不要のため負担が軽く、プライバシーの確保しやすいメリットが戸数を大きく伸ばしている要因だ。
高齢者住宅のニーズの高まりを受け、不動産業等の異業種大手も参入し始めている。2014年5月の日本経済新聞電子版で、大手マンションデベロッパーである大京は介護事業者と提携し、「サービス付き高齢者住宅」を今後10年で60棟開発する計画だと報じている。トヨタホームも2014年10月に「サービス付き高齢者住宅」の第1弾を愛知県豊田市に完成させている。
新規参入組との差別化ができるか
異業種の新規参入により、競争が激化している介護業界。介護企業の業績は右肩上がりで伸びてきたが、この伸びを維持できるかは、新規参入組との差別化を図れるかが鍵だろう。 (ZUU online 編集部)
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