クイック(Q)生産について

2月の鉱工業生産指数は前月比-3.4%(コンセンサス-1.9%)となった。1月の同+3.7%の大幅な上昇の反動がでたと考える。今年は旧正月が例年よりかなり遅く、輸出(1月前月比+5.0%、2月同-8.4%)と生産もその影響を大きく受けることになった。1月は前倒し輸出に対応するため生産が大きく押し上げられた。2月はその調整ということになる。

2月の在庫指数は前月比+0.5%(1月同-0.4%)と横ばい圏内であり、輸出の振れを受けても在庫はうまく管理されているようだ。トレンドとして、輸出数量が回復、在庫調整も一巡し、生産の回復が明確になってきた。

2月の日銀金融経済月報では生産の判断が「下げ止まっている」から「持ち直している」へ上方修正された。3月の政府月例経済報告でも生産の判断が「持ち直しの動きがみれる」から「持ち直している」へ上方修正された。2月の経済産業省予測指数は前月比+0.2%となっていたが、旧正月による変動がうまく反映されていなかったと考えられる。3月は同-3.2%と弱い予想になっていたが、2月が予想対比下振れた分、-2.0%へ大幅に上方修正された。4月は同+3.6%と強く、生産の増加基調に変化はないと考える。

2015年の生産動向は、米国景気の回復により輸出がどれだけ力強く回復するかにかかってくる。2015年に米国の成長率が3%程度に回復すること、そして内需も総賃金の拡大を背景に堅調であることを前提とすると、生産動向も増加基調が強くなってくると考える。

今回の円安のサイクルで輸出数量があまり伸びてこなかったのは、日本企業の国際競争力が衰えたからではなく、単純に押し上げまで時間がかかったためであると考えられる。 これまでの厳しい経営環境が迫った構造改革により、日本にはドル円が80円程度でも存続できるような輸出企業しか残っていないとみられる。残った企業の競争力はかなり強いため、円安で積極的な値下げをしてシェアをとりにいくことが収益にとっての最良の選択肢ではなかった。

更に、日本の輸出の中心は、消費者が購入品目をすぐに変えることができる耐久消費財から、企業が購入品目を変えるのに時間がかかる部品や資本財に変化してきており、価格の低下から輸出数量の増加までにはより時間がかかるようになっている。これほどまでの大幅な円安が続いたことにより徐々に値下げも始まっていることが確認でき、高品質・高価格の日本製品が手に入りやすくなり、かなりの時間を経て需要がようやく増加してきたとみられる。

トレンドからの乖離を計測すると、実質輸出がかなり強く持ち直してきている。持ち直しのタイミングは前回の円安のサイクルと同じであり、今回がかなり遅くなっており日本企業の国際競争力が衰えているということはないと考えられる。消費税率引き上げ後に低迷していた生産を押し上げる力になってきている。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト

(ZUU online 編集部)

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