このところ、駅のホームや改札口近くのスペースに大手コンビニを見かけることが多くなった。いわゆる「駅ナカ」コンビニなのだが、その背景には熾烈な出店競争がある。街ナカの店舗が飽和状態に近づきつつある中、多数の利用客の目に留まる駅ナカが、残された数少ない魅力的な商圏としてクローズアップされているのだ。


生き残り戦略が問われるコンビニ業界

JFA(日本フランチャイズチェーン協会)が毎月発表している統計によると、2015年3月末現在のコンビニ店舗数は52,397で、前年を5%弱上回っている。店舗売上高も前年同月比1.4%増となっているが、これを既存店に絞ってみると2.8%のマイナスだ。この前年割れ状態は、すでに12か月の連続。つまり、新規出店でなんとか売上高を伸ばし続けてはいるものの、生存競争が一段と厳しさを増している状況が窺い知れる。


相次ぐ駅ナカの業務提携

2015年4月24日、東京メトロのグループ会社で駅構内売店を運営しているメトロコマースが、ローソン <2651> と業務提携契約を交わした。同社は、運営するメトロの駅構内売店の50店をローソンのフランチャイズ売店に転換。その後はフランチャイジーとして運営を行うことになる。

一方、セブン&アイ・ホールディングス <3382> 傘下のセブン-イレブン・ジャパンは昨年夏、西日本旅客鉄道 <9021> の系列子会社が運営している駅構内の売店やコンビニを、セブンの名を冠した新店舗へと転換し始めた。

JR西日本の1日の乗降客数は500万人。管内1,222駅にある売店「キヨスク」やコンビニ「ハート・イン」およそ500店舗が対象で、5年計画なのだという。JR西日本にしてみれば、これまで「聖域」としてきた駅ナカを明け渡すことになる訳で、いかにセブンのノウハウには勝ち目がなかったのかを示している。

また、これまでにもコンビニとの業務提携を先行させてきた私鉄各社の動きも加速されている。昨年3月には、近鉄グループホールディングス <9041> が駅ナカ売店などをファミリーマート <8028> の店舗に順次転換していく方針を打ち出している。


キオスクは「女性向け新型店」で対抗

東日本旅客鉄道(JR東日本) <9020> グループのJR東日本リテールネットは、3月14日、JR上野駅公園通路にキオスクの新型ショップ『NewDays KIOSK』のモデル店舗をオープンした。健康食品や輸入菓子、雑貨など、女性向けの商品を充実させるほか、従来は扱っていなかった公共料金の支払いや電子マネーのチャージなどのサービスも手掛けている。

「駅売店の元祖」とも言えるキオスクだが、全売店の商品構成が一律であるため個性がなく、特に女性からは「商品の選択肢が少ない」「サラリーマンのお店というイメージ」という声が多かったという。

そこで今回は、商品構成を利用者の特性を合わせて見直すほか、品揃えや陳列も曜日や時間帯に合わせて変化させる。ファストフードメニューも充実させ、全取扱アイテム数を平均約2割アップさせる。そのほか、セルフレジの設置や自動釣銭機の導入、複数の販売スタッフ体制なども行い、レジの混雑緩和を目指すという。


気になる争奪戦の行方

JR東日本は売店の「キオスク」とコンビニの「ニューデイズ」の双方を展開している。この両者を合わせた店舗数は現在1,200強だが、特にキオスクの減少傾向には歯止めがかからず、売店跡に自販機コーナーが出来たりしている。今後は両者の統合を進め、コンビニ500店舗体制を目指す計画だというが、わずか500店舗では大手コンビニチェーンとは勝負にならない。

JR東日本が、コンビニの自前主義を貫き続けるのは難しいとの見方も強いが、いずれにせよ激しさを増す「駅ナカ争奪戦」。今後の展開からは目が離せない。(ZUU online 編集部)

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