日本人投資家の間での豪ドル人気はある種の信仰のようにも思える。その多くは豪ドルに対し絶対的な安心感を抱いている。

リーマンショック後の投資におけるキーワードは「新興国」「資源」「高金利通貨」だった。オーストラリアは豊富な資源を有し、中国など新興国にそれらを輸出している。外務省の資料によると、オーストラリアの最大の輸出品は鉄鉱石であり、最大の易相手国は実は中国である。

そして、相対的に高金利の豪ドルは日本の投資家にとっては格好の投資対象であった。相次ぐ利下げによりオーストラリアの金利の優位性は低くなったとはいえ、未だに投資対象としての人気は衰えていない。

投資信託協会が公表している資料を見ると、興味深い事実が見えてくる。投資信託の主要通貨別株式売買状況(公募および私募)を調べると、2014年度の豪ドルは買い越しとなっている。そして2015年に入ってからの月次資料でもすべての月で買い越しとなっている。


対米ドルで下落する豪ドルを買い続ける日本の投資家

一方、ここ数年の豪ドル・円のチャートと豪ドル・米ドルのチャートを比較すると、その異なった動きに驚かされる。豪ドルのチャートは対米ドルではもはや完全に崩れているにもかかわらず、対円では長期的な上昇トレンドを保ったままだ。豪ドルは対米ドルと対円では全く異なった動きとなっているのだ。

豪ドルは対米ドルで軟調に推移しているにもかかわらず、一貫して日本の投資家は豪ドルを買い越しているのだ。豪ドルが対円で上昇トレンドを継続している背景には、日本の投資家のこうした根強い豪ドル人気がある。


豪中銀スティーブンス総裁、豪ドルは「不快なほど高い」

しかし、資源価格の下落でオーストラリア経済が打撃を被っているのは事実だ。国際商品市況の低迷が、オーストラリアの主要輸出品である鉄鉱石価格の大幅安につながり、豪州経済の重荷になっている。

2013年12月、オーストラリア準備銀行(中央銀行)のスティーブンス総裁が衝撃的な発言を行った。豪ドルが「不快なほど高い」と発言したのだ。その後も総裁は「歴史的水準から見てなお高水準」など表現を変えながら、幾度も豪ドル高を牽制する発言を繰り返し行っている。

オーストラリア準備銀行は今月5日に、今年2回目となる利下げを決定、政策金利のオフィシャルキャッシュレートを25ベーシスポイント(bp)引き下げ、過去最低の2.0%とした。主要輸出品の鉄鉱石価格の下落が背景にあると考えられる。輸出の採算を改善するため、中銀が豪ドル安志向を強めているようだ。スティーブンス総裁は4月20日には、利下げを「検討している」と発言し、豪ドル安へと誘導しようとしている。

海外の投資家はスティーブンス総裁の警告に従い豪ドルを売却している。対米ドルで豪ドルが下落しているのはその結果なのだ。にもかかわらず、日本の投資家はスティーブンス総裁の警告を無視し続け、豪ドルを買い続けている。

豪ドル買いの判断が最終的に報われる可能性もあるとはいえ、今後も日本人投資家はスティーブンス総裁の警告を無視し続けて豪ドルを買い続けるのだろうか。(ZUU online 編集部)

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