労働時間は超ブラック、IT系コンサルティング会社

ここは業界でもハードで有名なコンサル会社だったので、覚悟はしていたが、いざ入ってみたら想像以上に過酷な環境だった。まず、労働時間だけを見れば、超ブラックというか、休む時間が殆どない(笑)。本当に酷い時は、1週間で7時間しか寝ていないなんてこともあった。

例えば、9:00から仕事が始まるとして、数時間は顧客対応に終始で、昼食を食べる余裕はまずない。食べることができたとしても、吉牛を食べに行くぐらいのもので、それも15分後にはMTGに戻らないといけない場合が多かった。それで戻って、19:00頃まで仕事をして、顧客が帰って、ところがそこからMTGがまた3つぐらいあって。深夜、日を跨いだ頃にやっと仕事が終わるのだが、そこですんなり帰れない。急遽明日までにレポートを仕上げろ、と指示される。

「既にもう明日なんですけど…」、なんて愚痴を零しながらプロジェクトメンバー3人ぐらいで半ベソかいて、数枚のレポートを書きあげたら、4:00。とりあえず仕上げたものをmailで送る。そうすると4:15には返事が返ってきて、大抵ダメ出しをされて、また書き直すことに。で、結局6:30ぐらいにやっと仕事が終わる。そこから家に帰って、少し横になって休み、それで8:00ぐらいには目覚め、会社に行って、9:00には、顧客に昨日のレポートを涼しい顔をしながら渡す、と。そんな仕事が月~土曜までという生活だった。

確かに高い給料

でも、外資系コンサルなので、その分給料は良いのだろうと思われがちだが、確かに高いは高いが、実際には、世間の2,3割高い程度のことだ。それで、パートナーは「お前らは、お客様より良い給料をとっているのだから3倍働け」なんてメッセージを飛ばしてくる。実際なんかおかしいなと思いながらも3倍働いて応えようとするものなのだが。まぁ、実際、世間より多く給料を貰うということが、自分の自尊心を満たしもしていた……。

そういった意味では、パートナーの言葉も制度も何から何までIT系コンサルティング会社は一貫していた。ただ、『パフォーマンスを出せ。クライアントファーストだ』と。そして、それは「クライアントにバリューを出せる仕事さえしていれば、後は全部会社が面倒を見ます」というメッセージでもあった。

例えば、Job Secretary(主にプロジェクトの庶務系作業を担当してくれる本当に有難い存在)の存在。これは本当に極端な話だが、仕事が忙しく着替えを買いに行く暇もないから、「Yシャツを洗濯して、パンツを買ってこい」と指示すると、その要望にきちんと応えるジョブセクがいた。

こうした意味でIT系コンサルティング会社には、自分が期待されていることが見えていたし、皆が顧客に対してバリューを出すため、200人のプロジェクトを一丸になって頑張っているという一体感もあった。そして、自分が成長しているという確かな実感もあった。そのため、過酷な長時間労働ではあったが、ブラックな環境だなどと感じることはなかった。

要するに、自己実現を果たせる環境であれば、それがどんなに過酷な環境でも、プロアクティブに肯定できるものなのだろう。例えば、自衛隊に入って、上官に毎日殴られるような過酷な環境でも、自分の身体を強くした、といった思いや日本の防衛のために役立ちたいと思うことができれば、堪えられるキャパは増えるのと同じなのだ。

ブラック企業という悪評を立てられたら……

さて、私のキャリアの話はここらへんにして、最後に、中小企業がブラック企業と悪評を立てられた際に取るべき対応を考えてみたい。結局、一番良いのは無視することだ。なぜなら、自社の価値に関係することでは無いからだ。ブラック企業か否かなんて、サービスの価値や製品とは直接的に関係ないことである。

そんなことに対応するコストをかけること自体、株主と顧客に余計なコストを転化することに繋がるのだから愚かしい。基本的に噂なんて75日で消えるものと構えていれば良いのだ。まぁ、もしかしたら、噂を見て、労基署の方が調査に入るかもしれないが、それは単年度のギブと思って諦めて頂く、と(笑)。

地方の企業なら地域が狭いので、一度悪評が出ると支障が大きいと危惧するかもしれないが、ネットはその地域の人が書き込んだかどうかさえわからない性質のものだ。あたふたして得るものは何もない。書き込みに反応して、キャンペーンや制度を変えるなどはくだらないことと思う。

地域社会の中できちんと価値や存在する意味を日頃の活動の中で出していれば、ブラック企業という悪評を立てられても、その地域の中で必ず守ってくれる声は上がってくるものだし、そもそもダメージを受けてもリカバリーが早いだろう。

つまり、自社がブラック企業と指摘されないためには、自社が地域の中でどう貢献するかを考えて日頃から行動することが、最大の防御策になる。

【取材のセッティングにあたり、創光技術事務所筒井潔氏に尽力頂いた。】

(ZUU online 編集部)