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中小企業経営者の高齢化
経営者の高齢化が止まらない。それに伴い、国内企業の9割を占める中小企業で後継者不足に悩む経営者が増えている。
年々経営者の高齢化が進んでいる中小企業において事態は深刻だ。中小企業庁が毎年発行している「中小企業白書」によれば、70歳以上の経営者は75万人を超え、経営者の5人に1人が70歳以上。また、経営者の平均年齢も60.6歳となる等、ベンチャーの起業が盛んになっているとはいっても、高齢化に歯止めがかかっていない状況だ。
日本全体で人口が減少し、高齢化が進行していることを考えると、今後も中小企業の経営者の平均年齢は高くなる傾向に変わりはなさそうだ。
経営の安定化に必要な事業承継
経営の安定化を図るためには、経営者が代わっても、事業が継続していく仕組みを整えていることが必要だ。組織的経営を行なっている大企業と異なり、中小企業ではワンマン経営となっているところが多い。後継者がいない会社の場合、経営者不在になった時点で「即倒産」ということも起こり得る。
経営の安定化を図り、高齢化する経営者の対策として、よく話題にのぼるのが「事業承継」だ。特に今年は相続税の増税が予定されているため、新聞等で事業承継の文字を目にすることも多くなっている。経営の安定化に事業承継を考えておくことは必要不可欠といってもいいだろう。
後継者不足に悩む企業
事業承継と言っても、事業を継がせる子供がいない、子供が継ぐ気がない、後継者として子供は相応しくない、といった悩みを抱える中小企業が多い。中小企業白書によれば、70代経営者の約半数に後継者が存在せず、このままの状態が続けば、休業や廃業を余儀なくされるだろう。事実、後継者不足のため廃業している中小企業は毎年7万社にのぼる。
後継者が不在の場合、事業承継はどうするのが良いのか
後継者が不在の場合は、2つの選択肢が考えられる。
1つ目は、事業を廃業してしまうこと。継ぐ人材がいないのであれば、会社をたたんでしまうという決断をする経営者も多い。
2つ目は、第三者に会社を売却、M&Aの手法がまさにそれだ。経営者自身は会社を残したくて売却の決意をしたとしても、買い手がなかなか現れないという問題が出てくる。経営者が会社売りたい場合でも、タイミングや資金、時流の問題などが事業の売却に立ちはだかる。また、売却希望額に到達しないことも多い。スムーズな売却を目指すなら、妥協点を事前に十分に考えておき、経営陣の中で合意形成をしておくのがよいだろう。
「事業承継」にも種類がある
事業承継といっても、いくつか種類がある。
ひとつは、資産の承継。自社が保有している資産をうまく引き継がないと、税負担が予想以上にかかる場合もあるため、失敗することも多い。次に、経営ノウハウの承継。ビジネスモデルも含めた「経営」そのものの承継だ。資産の承継以上に慎重に承継方法を考えておかないと失敗するリスクが高い。資産の承継よりもこちらの方がハードルは上がる。
最後に、経営者の「想い」の承継。創業経営者であれば、特に会社に対する思い入れが強いことが多いが、創業時にどのような想いで会社を立ち上げたのか、といった経営者の理念を引き継いでくれる人にバトンタッチすること。ここがおろそかになると、いくら資産や経営の承継が円滑に出来ても会社として長くは続かない。
経営の安定化には事業承継が重要ではあるが、形だけの事業承継にならないよう気をつけたいものだ。(ZUU online 編集部)