中国の成長に陰りが見えてきた。

中国国家統計局が4月15日に発表した2015年1-3月期の国内総生産(GDP)伸び率は前年同月比7.0%と、需要の低迷が響き2014年10-12月期の同7.3%から減速し、6年ぶりの低成長となった。

景気の減速が明らかになってきたことで、中国人民銀行(中央銀行)は2014年11月以降これまでに3回の利下げ、2回の準備預金率の引下げと、矢継ぎ早に金融緩和策を打ち出し景気を下支えしようとしている。

中央銀行が矢継ぎ早に金融緩和策を打ち出したことで、中国の株価(上海総合指数)は4月には最高値を更新、直近でも昨年末比で33%上昇(5/15時点)と、主要国の中でも高い上昇率を記録している。

株式市場では金融緩和政策による景気回復期待が高まってきているが、金融緩和政策によって中国経済を再び世界経済を牽引できるほどの成長軌道に戻すことは容易なことではないだろう。


「分厚い中間層」を形成する時間が足りない中国

現在の中国は、「世界の工場」「世界最大の消費市場」という両面で世界から注目を浴びている。重要なことは、この2つは独立した命題でなく、「世界の工場」としての地位を維持し続け、「分厚い中間層」を形成しない限り、「世界最大の消費市場」という地位を維持することはできないという関係にあることである。

低賃金を大きな武器に「世界の工場」として世界第2位の経済大国に駆け上がってきた中国。その中国で「賃金水準」の問題等もあり、労働集約型産業が他のアジア各国にシフトするとともに、中国国内では人手を必要としない無人化工場が増えてきている。

世界最大の人口を誇る中国から労働集約型産業が漏出し、人手を必要としない無人化工場が増えていくなかで、「分厚い中間層」を作り上げていくのは極めて難しい。

では、中国は「世界の工場」としての地位をこのさき維持し続けて、「分厚い中間層」を築きあげることが出くるのだろうか。これは、巷で言われているほど簡単ではない。むしろ極めて難しい命題だと言える。

日本国内では、現在の中国の状況を、1960年代を中心に高度成長を果たした日本の状況と重ねて説明する風潮がある。しかし、こうした見方には、日本が高度成長期を迎えた1960年代と異なり、現在は「デジタル化」「グローバル化」が進んでているという視点が決定的に欠けている。

忘れてならないことは、日本が20年間も成長を持続できたのは「アナログ時代」のお話しであり、経済の「グローバル化」も進んでいなかった時代だったということである。「ドッグイヤー」、さらには「マウスイヤー」と言われるほど社会と技術の変化が速くなった現代社会で、中国が日本の高度成長期と同じように長期間継続的な成長が果たせると考えるのは楽観的な見解であると言わざるを得ない。