自分が戦う土俵を見極める
ミスミでは、採用方針が変わった一期生だったので、新卒同期はいなく、 1年目は4ヶ月毎に行きたい部署を自ら選び、4ヶ月目の最後の経営会議でその部署の課題を発表する、という仕事をすることになりました。
その後、2年目以降は、ひたすら新規事業を立ち上げることになりました。 もちろん、新米の僕が1人で新規事業を立ち上げられるわけもないので、最初は、 先輩社員や外資コンサルタントのチームに入ることになりました。 すると、周りの人はみんな優秀な人ばかり。 さらに、元々優秀なのに僕の何倍も努力をしているので、今日の差よりも明日の差の方が大きくなることは歴然としていました。 それが分かってからは、同じ土俵で勝負してはダメなんだと、「自分にできることは何か」を強く意識するようになりました。
例えば、実際の顧客の声を聞けている人は部署内にあまりいないことに気づくと、ひたすら顧客のもとに足を運んで話を聞いたり、人脈ネットワークを活用してインタビュー候補者を探したりと、 他の人とは違う分野での価値を出していくようにしました。 やはり得意な領域は人それぞれ違うので、周りからも色々教えてもらいつつ、 ひたすら新規事業の立案を行っていきました。
ただ、なかなかうまく事業を立ち上げることが出来ず、他の部署の人から、お荷物的な扱いを受けてしまうような状態が長く続きました。 しかし、27歳の時から取り組んだ、動物病院向けのカタログ通販事業は大きく成長し、たった6人のメンバーで、6年間かけて年商20億円の事業にまですることができました。 この成功は、自分の中でも大きな自信となりました。
そんな時、再び田口さんから、再び声がかかり、 「株式会社エムアウト」の立ち上げに参画することになったんです。
新規事業のプロを育てるための会社
田口さんには、日本に少ない「新規事業立ち上げのプロ」を育てる思惑がありました。 一般的に、新規事業の担当者は成功するとその事業を続けることになるし、 失敗したら次のチャンスを与えてもらえないので、結果として新規事業立ち上げを複数経験した人材、新規事業のプロはなかなか育たないことになります。そこに問題を感じていた田口さんは、エムアウトでは、成否に関わらず一定期間で次の新規事業に人を異動することにしたのです。
エムアウトは、新規事業の立ち上げ専門会社で、徹底的に市場のニーズから入る「マーケットアウト」を用いて事業を立ち上げ、その事業が成長したら売却しその売却益でまた事業立ち上げる、とういビジネスモデルでした。 事業の立ち上げを「開発」「推進」「参入」「成長」4つのプロセスに分け、 特に前者3つのプロセスに特化していきました。 本格的に「参入」をするには、「開発」「推進」という2つのプロセスを突破する必要があるのですが、なかなか難しく、参入出来ないでボツになることが多かったです。勿論、立上げの専門会社ですから、失敗しても次の新規事業の立ち上げをするしか仕事はなく、結果、2度、3度と連続で失敗することもあり、 さすがに自信も失い、「辞めたい」と思ったこともありました。 そんな時は、「何が分からないかすら分からない」状態に陥ってしまったし、 周りの人も失敗続きの自分の意見なんて聞いてくれなくなり、どんどん悪循環に、はまったりもしました。
ただ、そんな中でも、諦めずに事業を創り続けたのは、ミスミでの成功体験があったからこそ、「またできる」と心のどこかで思っていたんです。