20年を節目に、独立の選択を迫られる
その後、ミスミとエムアウト合わせて20年程、田口さんのもとで働いたタイミングで、 田口さんから「そろそろ独立したら?」と言われました。 最初は受け入れることが出来なかったのですが、しばらく考えたのち、2010年9月にエムアウトを離れて、独立することにしました。
独立してからは、エムアウトに在籍していたころからご縁をいただいていた、印刷通販のラクスルと、ワンコイン健診のケアプロに経営参画しつつ、 博報堂の新規事業の立ち上げメンバーにもなりました。 働き方としては、これまでの事業立ち上げた経験を最大限に活かすため、 コンサルタントとして外から関わるのではなく、経営の中に入って事業の立ち上げに深く関わることにしました。事業計画をつくるところから、パートナーや営業先の開拓、組織問題の解決や、社員の個別のキャリア相談など、多様なかかわり方をしています。
そして、現在では5社の経営関わっています。 時間のやりくりとしては、1日を4時間毎の3コマに区切って、1コマ毎に各社の仕事を割り当てていき、なんとかやりくりをしています。
ただ、自分はあくまでも事業の「立ち上げ」のプロであって、「成長」に関しては専門領域ではないので、 会社の成長に応じて、関わり方も変化していっています。会社のフェーズによって必要とされる人材やスキルは変わっていくので、自分の適している会社のフェーズを理解していることは大事なことだと思います。
新しい働き方のロールモデルになる
今後は、自分の様な働き方をする人を、増やすための活動もしていきたいと考えています。 人からは変わっている働き方・仕事だと言われることが多いのですが、 新規事業を専業としてきた自分としては、いたって普通の働き方だと思うんです。
とは言え、ベンチャー企業で働くことや、複数の企業で同時に働くことで、 きちんと生活が成り立つのか、不安に思っている人は多いことも分かります。 だからこそ、僕自身の働き方を見てもらって、生活もできるし楽しんで働いていることを知ってもらいたいですね。
また、自分のように何かに特化した経験は、ベンチャー企業にも少なからず役に立つ実感はあります。 初めて事業を立ち上げる人は気づかないことでも、事業が成長する上で必ず直面する問題があって、 そういったものを経験として事前に伝えることができます。 持っている経験を社会に循環していくという意味合いでも、自分の様な働き方の人が増えてくれると嬉しいですね。
これまでは30年かけて1社で勤め上げる時代でしたが、今は一生の間に3回転職すると言われています。 さらにこれからは、同時に3社に貢献する時代がやってくるのではないかと。 自分の専門性を磨いて、それを軸に独立して複数社で働く方が、組織に依存して働くよりもリスクが小さいと思っています。また、今後の少子高齢化や専門性の多様化していく時代の要請に応えている働き方だと思います。
その新しい時代における働き方のロールモデルとして、多くの人にきっかけを与えられればと思います。
(この記事は4月16日に「 アナザーライフ 」に掲載されたものです。)
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