今回は、4つのシンクタンク(農林中金総合研究所、富士通総研、第一生命経済研究所、みずほ総合研究所)の最近のレポートを取り上げ、2014年経済をどのように見通しているかを紹介していきます。
まず、取り上げたレポートがどのようなものかを簡単に紹介し、それぞれの内容を簡単に紹介していきます。概ね2014年経済について楽観的で、先にいけば行くほど不安視を持っている傾向がみられます。但し、シンクタンクの立場で考えると、楽観視・不安視の両方とも字面通りに受け取らず、冷静に解釈する必要性があります。
◉取り上げる2014年の経済関連レポート
本稿で取り上げるレポートは、
・「2014年の国内経済・金融展望」(農林中金総合研究所)
・「日本経済の先行きは短期楽観、長期悲観?」(富士通総研)
・「景気ウォッチャー調査(2013年12月) ~駆け込み需要期待で景況感は良好~」(第一生命経済研究所)
・「みずほ日本経済情報(2014年1月号)」(みずほ総合研究所)
の4つです。
いずれも2013年12月末から2014年1月中旬にかけて発表されたレポートで、2014年の日本経済の動向予測が中心にまとめられています。
本稿のタイトルでは「足並みが揃う各シンクタンク」と書いていますが、他のシンクタンクには例外もあると思われますし、同じシンクタンク内でも論者によって意見が異なる場合も当然あると思われますので、その点は注意してください。また、取り上げるレポートには研究所個人見解のものも含まれます。
◉農林中金総合研究所の見方
農林中金総合研究所の多田忠義は、
(1)エネルギーなど輸入品を主因とする物価上昇
(2)QE3縮小開始示唆による新興国からの資金引上げによるアジア諸国景気減速が外需減少
(3)設備投資の回復傾向
(4)中国経済の高成長維持
(5)欧州経済の底打ち
を踏まえ、2014年の日本経済は緩やかに回復していくという見方をしています。
一方で、消費税率引き上げによる景気減速がどの程度起こるかを不安材料にしており、景気悪化の長期化・物価上昇の鈍化が起こった場合は政府が追加緩和を検討するという見方をしています。
◉富士通総研の見方
富士通総研の早川英男は、アベノミクスにおける金融緩和が円安・株高を引き起こし、景気も回復傾向にあるが、円安・株高→景気回復ではなく、安倍政権誕生前から徐々に実質GDP・個人消費が回復しつつあった事を指摘しています。また、輸出や設備投資も増加傾向にあるものの、まだまだ低い水準で、輸出は震災前の水準に戻ったに過ぎない事も指摘しています。
2014年の経済は、今後はアベノミクス「第2の矢」として5兆円規模の大規模な公共事業が行われるので、少なくとも短期的には景気は上向きになり、消費税率引き上げの影響はそれほど大きくはないという見方をしています。
しかし、小泉政権と違い、長期金利を抑え込みながら財政支出を拡大するアベノミクスは、プライマリーバランスが赤字のまま推移するので、財政破綻リスクは相変わらず存在し、テールリスクとしては意識する必要があると指摘しています。