◉第一生命経済研究所の見方


第一生命経済研究所の星野卓也は、内閣府の景気ウォッチャー調査によるDIを元に景況感が良好である状況、消費税増税による駆け込み需要やボーナス増加などを踏まえ、少なくとも3月末までは景気は上向きであるという見方をしています。

一方で、駆け込み需要は耐久消費財などに偏り、外食産業・旅行産業などサービス業などの効果は薄いという見方を紹介しています。また、震災復興・不動産駆け込み需要で着工が遅れて人手不足による人件費・建築資材高騰があり利益率が低下する見方を紹介しています。

レポートはここまでですが、消費税率増税前の駆け込み需要を景気回復要因の主因と位置付けている以上、それ以降の景気の落ち込みを大きく意識していると思われます。


◉みずほ総合研究所の見方


みずほ総合研究所は、
(1)海外景気回復による輸出増加、円安・原油価格上昇・国内需要拡大による輸入増加による経常収支赤字
(2)企業マインドは改善しているが、消費者マインドは横ばい
(3)個人消費は駆け込み需要で増加
(4)税収は微増

という現状を踏まえ、

(1)増税までの回復と一時的落ち込み
(2)日銀が追加緩和を行う見通し
(3)反日感情が高まれば、日中関係が長期的にリスクになる

という見方をしています。


◉シンクタンクの立場から解釈する


それぞれのレポートは、消費税の影響がどうかや長期的に何がリスクになるかについては異なりますが、日本経済は短期的には上向き、中長期的には不安材料があるという見方で一致しています。

但し、字面そのもので解釈するのはよくありません。本来は生データを見て分析すべきだと言いたいところですが、そうもいかない人の為に、こういうレポートの読み方について補足しておきましょう。

日本の多くのシンクタンクは企業や金融機関が作っている事が多く、それらは投資家でもあります。金融機関と研究機関は独立しており、研究者の姿勢として「客観中立」が望まれ、実際には客観的に分析していると思われます。

但し、公開する情報に嘘が無いとしても、あまり市場を不安視させるような情報を強調しなかったりという事は十分にあり得ます。「投資家を煽って投資を誘発したいというバイアス」とまでは言いませんが、こうしたレポートが市場に影響を与える以上、ネガティブな要因を大きく書く事はあまりありません。

一方で、研究者の姿勢として断定する事は滅多に無い以上、テールリスクも踏まえてリスクについても必ず言及されます。身も蓋も無い言い方をすれば、「保険をかけている」とも言えます。

更に、こうしたレポートを強く信じる人から全く信じない人まで市場には幅広く存在するので、レポートの効果は書いてある「意見」を差し引いた程度に収まる事が多いと思われます。

その意味で、楽観視も悲観視も両方を差し引いて読むのが良いでしょう。


参考文献
[1] 多田忠義「2014年の国内経済・金融展望」『調査と情報』(農林中金総合研究所), 2014-01-10(PDF注意)
[2] 早川英男「日本経済の先行きは短期楽観、長期悲観?」富士通総研, 2014-01-14
[3] 星野卓也「景気ウォッチャー調査(2013年12月) ~駆け込み需要期待で景況感は良好~」『定例経済指標レポート(Economic Indicators)』(第一生命経済研究所), 2014-01-14(PDF注意)
[4] みずほ総合研究所編「みずほ日本経済情報(2014年1月号)」, 2014-01-15(PDF注意)

BY たけやん

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