(この記事は2015年5月15日に掲載されたものです。提供: Leeways Online


20 代、 30 代の若い世代の利用頻度も高い NISA

2014 年、世間を賑わせた少額投資非課税制度( NISA )は、投資家の間でどのように利用されているのか?

NISA の実態については、野村アセットマネジメントが定期的に行っている「 NISA に関する意識調査」が参考になるだろう。 4 万人というまとまった母数を対象としているため信頼性が高く、 2014 年度は 2 月、 6 月、 10 月の計 3 回、調査を実施していることから NISA に対する投資家の動態も掴みやすい。

同調査によると、 2014 年 10 月時点の「 NISA 口座の開設者」は調査対象者 4 万人の 21 %。この4ヶ月前の 6 月調査での口座開設者は 20 %であり、 1 %しか伸びていない。このことから、「 NISA に興味を持つ層」の大半が、 2014 年前半に口座を開設していたことがわかる。

では、 NISA 口座を持っている投資家の利用傾向はどのようなものだろうか?

同調査( 2014 年 10 月)で「 NISA 口座で投資をしている」と答えたのは 61 %となっている。 NISA の口座開設には住民票の写し、税務署審査も受ける手間を考えればこの数字は低いとも捉えられるだろう。

世代別でみると「毎月一定額を積み立てている割合」は、 20 代が 19 %、 30 代が 20 %で、 60 代の 10 %の約 2 倍となっている。一方で金融庁の調査によると NISA の買付額は 50 歳以上が 79.9 %を占めていることから、お金に余裕のある 50 代以上が NISA を積極的に利用しているといえるだろう。

NISA を通しての投資対象は、株式( 58 %)と投資信託( 36 %)の割合が高く、上場投資信託( ETF )と上場不動産投資信託( J-REIT )はそれぞれ数%となっている。


NISA にとって「 REIT は格好のターゲット」

同調査を表面的に見ると、 NISA の投資家は J-REIT への投資に消極的に見えるが、 2014 年に不動産投信情報ポータル「 JAPAN REIT 」が行った投資家アンケートでは、 49% の人が「 NISA で REIT 投資したい(している)」と答えている。

投資分野の専門家でも、「 NISA と REIT は相性が良い。組み合わせて投資すべき」と提言する人は多い。

例えば、個人投資家向けの株価情報 NAVI 『兜町カタリスト』編集長・櫻井英明氏は著作の中で「年間 100 万円まで最大 5 年間の非課税制度」という NISA の特性を踏まえ「 REIT は格好のターゲット」と述べている。

その理由として挙げているのが、( 1 )利益の 90 %以上を配当に回す高配当、( 2 )不動産の購入を増やして利回りを高めるという REIT の成長性、( 3 )キャッシュ、株式、不動産に分けて資産を保有する「資産三分法」の原則の 3 点である。

( 1 )の高配当については、 REIT は株式や国債に比べて利回りが高いというのが一般的な見解である。これは、賃料収入から諸経費を差し引いた利益の 90 %を分配に回すと「法人税が免除される」ためだ。この枠組みがあるため、高配当になりやすい。

( 2 )については、 J-REIT 時価総額は 2015 年段階で「約 10 兆円規模」にまで成長しており、新規上場が続いていることから、成長は持続するという見方が強い。

(3) の資産三分法については、手持ちの資金を性質別に 3 つに分類し投資するというもので、 一般的に「キャッシュ」「株式」「不動産」に分けられる。その中の一番なじみのない不動産に投資をすることで、より不確実性のリスクを分散させられるということである。


税制改正によって解消されるデメリットもあり

別の専門家の意見も見てみよう。

野村證券の能見哲理氏は、 J-REIT の総合情報サイト『 J-REIT.jp 』内のコラムにおいて、「購入したい商品が J-REIT の投資口なのか、それとも、 J-REIT を運用対象としている投資信託かをよく考えて NISA 口座を開設する金融機関を選ぶ必要がある」と前置きした上で、「複数の J-REIT に分散投資されている投資信託は投資初心者向き」と解説している。

櫻井氏、能見氏以外でも、「 REIT と NISA の相性の良さ」に言及する専門家は多いが、 NISA にもデメリットはある。よく挙げられるのが「損が発生した場合に損益通算(利益と損失の相殺)や損益繰り越し(損失の先送り)ができない」、「 1 口座しかつくれない」というものである。後者に関して、税制改正によって「金融機関を 1 年ごとに変更可」となった。しかし、 A 証券会社でしか扱っていない投信 A と B 証券会社でしか扱っていない投信 B は同時に NISA で買うことはできないため、問題解決に至ったとはいえない。

ご存じのように、 NISA は日本では 2014 年初頭に始まったばかりの新しい制度である。そのため、継続的な税制改正によって内容が変更していく可能性が高い。今後の改正項目としては、「年間投資限度額 100 万円の引き上げ」「ジュニア NISA の創設」などが取り上げられている。

また、 REIT 市場も新たな投資法人が加わるなど流動的である。この 2 つを組み合わせて資産運用していくには、変化を常にとらえる感度が欠かせない。

そうはいっても、「 5 年という中長期単位で利用メリットのある NISA 」、「成長性と安定性の高い REIT 」の相性が良いのは間違いない。メリット、デメリットを知った上で、自分の投資スタイルに合っているかを見極め、利用を検討するのが望ましいだろう。

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