(この記事は2015年5月27日に掲載されたものです。提供: Leeways Online )
不動産の価格のピークを掴むのはプロでも難しいといわれている。これは株や FX といった他の投資でも同じことだが、株や FX の投資家は、ピーク値や底値のタイミングを厳密に分析できなくても、なんらかの指標に基づき判断している。今回はそれを REIT に当てはめて、どのような指標に基づいて売買のタイミングを決めるのかを見ていくことにしたい。
不動産の価格の先行指数の基本は取引件数
まず REIT そのものの値動きを考える前に、実物不動産の値動きについてみてみる。不動産価格と最も相関関係が強い指標は、不動産の取引件数だ。取引件数は不動産価格の先行指標といわれ、不動産価格の遅行指数は賃料といわれる。つまり不動産の取引件数が増えれば不動産の価格が上がり、その後、賃料が上がってくるという流れだ。逆に取引件数が減少すれば、不動産価格が下がり、その後、賃料も下がってくる。そのため不動産価格が下がっているにも関わらず、賃料が高止まりしている時期があり、そのような物件は購入時点の利回りは高い。但し、このような時期は将来賃料の下落リスクを抱えている時期でもあり、経済状況が冷え込んでいえるため金融機関の融資姿勢が厳しくなり、実際に物件の購入は難しい。実物不動産であれば、売買のタイミングは不動産の取引件数に注目するのが望ましい。土地の取引件数については公益財団法人東日本不動産流通機構 ( 通称:東日本レインズ ) 等が公表している。
REIT
や収益物件の購入のタイミング
では REIT に話を戻そう。 REIT の購入のタイミングは不動産価格が下落中でかつ賃料が高止まりしている時期である。 REIT は収益物件であるから、不動産価格が下落している時期は継続賃料が高止まりしているケースが多い。賃料は新規にテナントとして契約する新規賃料は土地価格に遅れて下がってくるが、入居中のテナントとの継続賃料は必ずしも土地価格に遅行して下がるわけではない。テナントがオーナーに賃下げ交渉して成功しない限り、市場賃料とかい離して継続賃料が高止まりしたままだ。底値を探し当てるのは難しいが、不動産の取引件数がジワリと上がり始めた時が底値と判断して良いだろう。
REIT
特有の重要な指標は
また REIT には不動産取引件数以外に重視しなければならない指標がある。それは金利の値動きだ。金利の動きを反映しているものとして、国債 10 年物最長期利回りがある。分配金利回りと国債 10 年物最長期利回りとの差であるイールドスプレッドは 3 %程度が理想だ。 2015 年 3 月時点では J-REIT 分配金利回りは 3.105 %で、国債 10 年物最長期利回りは 0.4 %のため、イールドスプレッドが 2.705 %となり 3 %を割り込んでいる。しかし、国債 10 年物最長期利回りは 2015 年 1 月の 0.275 %を最低値として、徐々に上がり始めていることから注意が必要だ。分配金利回りも 2014 年 12 月の 3.019 %を最低値として徐々に上がり始めている。
賃料が上がらない中で分配金利回りが上昇してしまうと、 REIT の価格は下落し始める。賃料収入から経費を引いた NOI が一定であれば、 REIT の価格は「 REIT の価格= NOI÷ 分配金利回り」の関係で決定されるからだ。そのため、金利が上昇すると分配金利回りが上昇し、 REIT 価格が下落する。 REIT にとっても、国債 10 年物最長期利回りは重要な先行指標なのだ。国債 10 年物最長期利回りが上昇し始めた今こそ売りのタイミングと言えそうだ。
2
つの先行指標に注目
REIT の価格の先行指標は金利と不動産取引件数だ。金利に最も敏感に反応すると言える不動産取引件数についても注目しておきたい。 REIT の買いのタイミングと売りのタイミングは、取引件数の増加と金利の低下が現れ始めたら買いで、取引件数の減少と金利が上がり始めたら売りのタイミングだろう。取引件数や金利は比較的ゆっくり動くため分かりやすい。この 2 つの先行指標に着目しながら、売買のタイミングを図ってみるのが良いだろう。
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