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(写真=Thinkstock/Getty Images)

政府は65歳以上の高齢者も雇用保険に加入し、失業手当を受給できるよう制度を見直す方針を明らかにした。早ければ来年の通常国会に関連法案の提出を目指す方向で検討を始めたという。その狙いは、雇用の安全網を高齢者世代にも拡充し“生涯現役社会”に向けた環境整備を図ることだろう。

マクロの成長戦略から見ると、少子高齢化のもと一定の潜在成長率を確保するうえで最大のネックは労働力不足だ。一方、高齢者の生活というミクロの視点から見ても、定年後の就業継続や所得維持は今後ますます重要な課題となってくる。このマクロ・ミクロの両面から「生涯現役社会」の背景と課題を吟味しよう。


労働力不足は重要な長期的成長制約要因

今年に入って緩やかながら景気回復が広がっている。それを一番敏感に反映しているのが雇用市場かもしれない。深夜営業の回避に追い込まれた牛丼チェーン、長距離 トラックの運転手からシステムエンジニア、LCC(格安航空会社)のパイロットに至るまで人手不足が話題になる業界は数知れない。有効求人倍率(季節調整値)は2013年11月以来1倍を超えている し、完全失業率も2015年3月には3.4 %とほぼ完全雇用とさえいえる水準にまで低下した。

少子高齢化のさらなる進行が予想される長期の視点から見ると労働力不足の問題は一層深刻だ。わが国の労働力人口(働く意志のある15歳以上人口)は1998 年の6,793万人をピークに減少をたどり2014年には6,587万人にまで縮小した。

内閣府が2014年3月に発表した長期予測によれば、最も悲観的なシナリオの場合、労働力人口は2060年に3,795万人と今より42%減少し、こうした働き手の不足は潜在成長率を年間0.9%押し下げるという。

こうした事態に対処するメニューとして通常挙げられるのは、①潜在労働力の有効活用(就労促進)、②出生率引き上げ、③外国人労働力の導入の三つだ。このうち、数の上で最強の切り札になるのは③だが、生産年齢人口を維持するためには年間約64万人と過去10年間のペース(年平均で5万人)を大きく上回る移民の受入れが必要になる。

欧州における移民排斥の政治潮流をどう評価するにせよ、わが国にこれだけの外国人労働力を受け入れるだけの準備がそうたやすく出来上がるとは期待できない。

②に関しては、フランスや北欧諸国の成功例を横目に日本政府も遅ればせながら、出産促進対策に本腰を入れ始めた。この数年、合計特殊出生率に下げ止まりの兆しが見えているが、その効果かどうかの判断は時期尚早だ。いずれにせよ、生まれた赤ん坊が労働力になるまでには15~20年の歳月が必要だから、即効薬にはなりえない。

このように考えると、①の就労促進が唯一の現実的な対策となる。ここで具体的なターゲットとなるのは、子育てのため退職して家庭に戻る割合の高い30歳代の女性たちと、定年などで退職した60-70歳代の高齢層だ。これらのグループの労働力率(グループ総人口に占める労働力人口の割合)を引き上げることでどの程度の労働力が確保できるか。

内閣府の試算(男女共同参画白書 平成22年版)によれば、前者で年間131-528万人の増加、後者で同290-580万人の増加が可能と見込まれている。

過去15年間(1999年~2014年)の労働力人口の伸びは、30-39歳の女性で17.8%、65歳以上の男女計で37.0%。高齢化が進む中、高齢層の潜在労働力を発掘することが労働力不足への最も有効な処方箋であることは明らかだろう。