周りから反対されてでも進みたかった起業の道

次第に私は、このメンバーと一緒に起業したいと考えるようになっていきました。しかし、それまでの私の努力をよく知る家族には当然大反対されてしまったんです。姉にいたっては、もし私が起業を選ぶのであれば、姉がその友人との縁を切るとまで言い出しました。

それまで家族の意見を何よりも重視してきた私は、その時も家族の助言を無視できませんでした。また、当然姉と友人の仲を壊すなんて、できるはずもありません。

そこで、起業の集まりから姿を消すことにしたんです。連絡には返信をしないで無視する状態。本当は、グループから抜けることを言わなくてはと思っていましたが、「辞める」と言ってしまったら本当に全てが終わってしまうようで、言い出せなかったんです。

そんな状況が半年ほど続きました。ただ、さすがにいつまでも現実から逃げているわけにはいかなかったので、2013年の新年を迎えた時、ついに「辞める」ことを姉の友人にメールで伝えました。

すると、「そんな話メールでするなんてありえない」と突っ返され、繁忙期真っ只中の4月頃に彼と会うことになりました。 直接話をすると、私は辞めることを伝えに来ているはずなのに、彼も今勤めている会社を辞めると決めたことや、事業を立ち上げる資金の目処が立ったことを聞かされ、気づけば「創業パートナーとして、一緒に会社を立ち上げて欲しい」と言われていたんです。

他にもメンバーはいたのに、なんで私なのかと思う気持ちもありました。しかし、ずっとやりたいと思っていたことなので、そう言われて抑えていた気持ちが溢れ出てしまったんです。

また、たまたま前日には転職活動をしてみようかと、人材紹介会社に面談に行っていました。その時、「忙しくない環境で働きたい」と伝えたはずなのに、「あなたにはベンチャー企業が向いているようですね」と言われていたこともあり、これは縁だと感じたんです。

そして、私は監査法人を辞めて、共同創業者として会社を立ち上げる決心をしました。それを家族にも伝えると、あれだけ反対していた姉も、私の本気が伝わり応援すると言ってくれました。以前は、一時の感情に流されているだけなのではないかと心配し、どこまでの気持ちかを試してくれていたのだということを後々知りました。

そして、会社でも上司に退職の意向をメールで伝えました。これまで何年も積み上げてきたものを壊すのは勇気がいることで、メールの送信ボタンを押すのに丸一日かかりましたし、送った瞬間は涙が止まりませんでした。