「この人が造るから飲みたい」

2013年、浅草寺とかっぱ橋道具街の間の路地裏にオープンしたブルーパブには、オーナーであり、造り手でもあるジェームス・ウィリアムスさんが常にカウンター奥に立ち、客の問いかけに気さくに応じている。彼のすぐ横には醸造タンクが並ぶ。

大学の卒業旅行で訪日し、日本に魅了されたジェームスさん。一度は母国イギリスで職を得たが、「イギリスの伝統的なビールを日本に広めたい」という思いが募り、日本への移住を決断。現在は浅草でブルーパブ「カンピオンエール(Campion Ale)」を営んでいる。

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週末はお昼から営業していることもあり、散歩がてらこの店に立ち寄る地元の客も多い。ビールのメニューは常時3~5種類。全部で10種類を月替わりに展開しているため、常連であってもどんなビールなのかわからないものも。だが、造り手が目の前にいるので、どのような狙いでどんなビールを造ったのかを説明してもらえる。醸造見学イベントも積極的に開催しており、ファンは「ジェームスさんが造るビールが飲みたい」と店に集うのだ。


鍵は造り手とその背景の物語

「スプリングバレーブルワリー東京」のような席数200の巨大なお店ともなると、気軽に造り手と会話をするというわけにはいかない。だが、メニューには、まるで無農薬栽培の野菜のように造り手の名前が記載される欄があり、誰が造ったのかがわかるようになっている。また、例えばビールの名前が「FIRST CROSSING~一号踏切~」だったら、そのネーミングに込めた「伝統と革新の交差と、かつての場所名をかけた」という思いが綴られている。

どんな人がどこで、どんな思いで造ったのか。これまでは背景の多くが曖昧で、メーカー名だけが唯一確かだった日本のビール。今、消費者は新鮮でおいしいだけではなく、誰がどんな思いで造ったのかという、ビールの背景にある造り手の物語を重視し始めている。

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