(写真=PIXTA)
夏祭りや文化祭のお祭りの後というのはどことなく寂しいものだ。この現象は世界経済にも当てはまるらしい。1988年のソウルオリンピック以降、多くの開催国でオリンピックという祭典が終わった翌年はGDP成長率が鈍化している。2020年の東京オリンピックについても、おおむねオリンピックまでは経済成長が続き、その後は不況になるという意見が多い。別に悪くなると決めつける必要もないが、少し気になる話でもある。そこで今回は有力識者の主張をまとめてみた。
海外識者の意見
アメリカの経済誌「フォーブス」の元アジア太平洋支局長ベンジャミン・フルフォード氏は、著書『ファイナル・ウォー』のなかで東京オリンピックについて言及している。かつて東京オリンピックが開催された1964年まで実質GDP成長率は10%を超えていたが、1965年になると4.4%まで大きく低下した。またフルフォード氏は、1964年に山一証券が赤字になり、サンウェーブ(初代)や日本特殊鋼、山陽特殊製鋼などが次々と倒産したことまで調べている。国の国債発行もこの頃から常態化してしまった。
国内識者の意見
では日本人識者の意見はどうだろうか。楽天証券経済研究所客員研究員の山崎元氏や法政大学経済学部准教授の小黒一正氏らが、2020年の東京オリンピック後の日本経済について語っている。両氏が懸念しているのは今後の金利上昇だ。今は国債のほとんどを日銀が買い入れているため、金利は低く抑えられている。しかしオリンピックや消費税増税に向けてインフレが進み、名目成長率が上がれば金融緩和を続ける意味がなくなり、日銀が国債を買わなくなる。すると金利が上昇すると言うのだ。今の安倍政権の方針や国の財政赤字、低金利の状況などをかんがみ、フルフォード氏と同様やはり楽観視はしていない。
金利の上昇がポイント
東京オリンピック後は景気が悪くなるとの有力識者の見解には説得力がある。やはり金利の上昇が一つのポイントになりそうだ。本来金利は好景気になれば上がるものであるが、今の日本の不動産業界で金利が上がるとどうなるのか。REITなどの投資物件と戸建てやマンションといった分譲物件のそれぞれについて、金利上昇の影響を見てみよう。
金利が上がると収益物件は値段が下がる
金利が上昇すると、REITなどの投資物件価格は一気に下落することが懸念される。投資物件は「収益還元法」という考え方をベースに価格が求められる。賃料から保険料、固定資産税などの諸経費を控除したNOI(ネット・オぺレーティング・インカム)を還元利回りで割る。つまり「収益価格=NOI÷還元利回り」だ。
この還元利回りは、金利に不動産のリスクプレミアムを加算したものを基本として求められる。ざっくり言うと、金利が1%、リスクプレミアムが3%ならば還元利回りは4%だ。そのため金利が上昇すれば還元利回りも上昇する。収益価格の分母である還元利回りはとても小さい数字のため、少しでも変動すると価格に大きなインパクトを与えてしまう。そのため投資物件の価格は金利の動きに非常に敏感になるのだ。
金利が上がると分譲物件も値段が下がる
金利の変動は分譲物件の価格にとっても影響が大きい。金利が上がれば住宅ローンの金利も上昇するため、一戸建てやマンションの購入者が減り、結果として値段が下がる。そのため業者側も分譲価格を下げざるを得ず、ディベロッパーの土地仕入価格も下がっていき、結果、全体的に不動産価格が下がっていくのだ。
あくまでも予想である
このように今の日本は金利が上がると不動産価格は下落する。あくまで予想であるとは言え、実際オリンピックまで景気が上がり、その後失速すると思っている人は多いだろう。しかしながら投資で儲ける一部の人は、周りと反対のことを考えて実践しているというのも事実だ。今売却してキャピタルゲインの確定をしてしまうのも勝ち方の一つかもしれない。日本全体が「後の祭り」にならないよう願いたい。
(提供: Leeways Online )
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