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(写真=PIXTA)


2014年度は5年ぶりのマイナス成長

2015年1-3月期の実質GDPは前期比1.0%(前期比年率3.9%)と2四半期連続のプラス成長となった。民間消費(前期比0.4%)、設備投資(同2.7%)が3四半期連続で増加したことに加え、消費税率引き上げ後減少が続いていた住宅投資(前期1.7%)も4四半期ぶりの増加となった。設備投資は企業収益が好調を維持する中で低調な動きが続いてきたが、年度末にかけて出遅れ分を一気に取り戻す形となった。

一方、消費増税後の景気を下支えしてきた公的固定資本形成は2013年度補正予算の効果が剥落したことなどから前期比▲1.5%と4四半期ぶりに減少し、国内需要の持ち直しに伴い輸入の伸びが高まったことから外需寄与度も4四半期ぶりのマイナスとなった。

2014年度の実質GDP成長率は▲0.9%となり、前回の消費税率引き上げ時の1997年度の0.1%を大きく下回った。民間消費の落ち込みが1997年度の前年比▲1.0%に対して2014年度は同▲3.1%の大幅減少となったことが響いた。民間消費だけで2014年度の実質成長率は▲1.9ポイントも押し下げられた。


個人消費を左右する家計の所得環境

■回復が遅れる個人消費

個人消費は駆け込み需要の反動を主因として消費税率引き上げ後に急速に落ち込んだ後、反動の影響が和らぎ始めた夏頃から持ち直しているが、そのペースは依然として緩慢にとどまっている。内閣府の「消費総合指数」は依然として消費税率引き上げ前の駆け込み需要が本格化する前の水準を大きく下回っており、前回の消費増税時(1997年度)に比べても個人消費の動きは弱い[図表1]。

個人消費低迷の主因は物価上昇に伴う実質所得の低下である。2014年度に入り名目賃金は上昇に転じたが、消費税率引き上げの影響もあり物価上昇率が急速に高まったため、実質賃金は大幅に低下した。2014年度後半になると原油価格下落に伴い消費者物価上昇率は低下したが、名目賃金が伸び悩んでいるため、実質賃金の改善ペースは緩やかなものにとどまっている。

2014年度は久しぶりにベースアップを実施する企業が相次ぎ、春季賃上げ率(厚生労働省調べ)は2.19%と13年ぶりの2%台、定期昇給分を除いたベースアップも0.31%(中央労働委員会「賃金事情等総合調査」による)と17年ぶりの水準となった。ただし、一人当たりの平均賃金は伸び悩んでおり、特に労働者の基本給に当たる所定内給与は前年比▲0.2%と9年連続の減少となった。

近年、所定内給与の伸びがベースアップを下回り続けているのは、相対的に賃金水準の低いパートタイム労働者の割合が高まることで労働者一人当たりの賃金水準が押し下げられているためである。2014年度の所定内給与の伸びを就業形態別に見ると、一般労働者、パートタイム労働者ともに増加したが、パートタイム比率の上昇によって平均所定内給与は▲0.4ポイント押し下げられた[図表2]。

消費総合指数

■年金給付額削減も消費低迷の一因

勤労者世帯以上に物価上昇による悪影響を受けたのは年金生活者だ。年金額改定は名目手取り賃金変動率、物価変動率、マクロ経済スライドによる「スライド調整率」によって決まるが、2013年度からは特例水準の解消が図られている。このため、年金給付額は2013年度後半から2014年度にかけて減額が続いた。

総務省の「家計調査」で、勤労者世帯と高齢無職世帯の実質可処分所得を比較すると、2013年度、2014年度と物価上昇によって実質可処分所得が目減りしたことは共通だが、公的年金給付額の減少を主因として高齢無職世帯の落ち込み幅が勤労者世帯を大きく上回っている[図表3]。

この結果、高齢無職世帯の消費支出は勤労者世帯以上に大きく落ち込んだ。

実質可処分所得