(写真=PIXTA)
セブン&アイ・ホールディングス <3382> のプライベートブランド「セブンゴールド」から6月にリリースされた、無濾過タイプのビール「まろやかエール」が美味しいと評判だ。最近、コンビニエンスストア限定のビールが続々リリースされている。その背景にあるのは、クラフトビールブーム。今、コンビニで何が起きているのだろうか。
話題の「まろやかエール」を入手
評判を聞きつけて、セブンイレブンまで行ってきた。余談だが筆者は鳥取県民。車で1時間かけて、お隣は岡山県のセブンイレブンで「まろやかエール」を入手した。ちょっとしたドライブを終えての帰宅後、早速開栓すると、バナナのような酵母の香りが漂う。これはセブン&アイとキリンビールが共同開発したもので、「キリンが保有する1,000種類以上の酵母の中から厳選したものを使用」と公表しているが、こんもりした泡も含めて、ドイツ・バイエルン発祥のヴァイツェンによく似ている。
一口飲んでみると、苦みはきわめて穏やか。フルーティーな香りとも相まって、女性受けがいい理由もわかる気がする。個人的な欲を言えば、もう少しボディがあるともっと完成度が高かったように思うが、逆を言えば飲みやすいということでもある。グラスに入れて出されて、「キリンのビールだよ」と明かされたら意外性に驚いてしまいそうだ。
消費者のクラフトビール熱を受けて
無濾過であることは大きなトピックスだ。何を濾過していないかというと、主にはビール酵母で、このためもあって無濾過ビールは濁って見える。通常、大手が造るビールが濾過されているのは、クリアな色合いを獲得するためもあるが、メインの目的は品質の安定だ。酵母とはつまり、微生物。これを瓶内に残したままだと、液中の糖を酵母が分解して味わいが微妙に変化してしまう。一方で、その変化や雑味を好む層も近年のクラフトビールブームで増加している。この「まろやかエール」は、クラフトビール人気を受けて登場した一本と言える。
ここ最近、セブンイレブンのビールへの力の入れようが目立っている。先月末、サッポロホールディングス <2501> 傘下のサッポロビールと共同開発した「欧州四大セレクション」第一弾の「ミュンヒナーデュンケル」に続いて、第二弾の「ドルトムンダー」が発売された。消費者が飲み慣れたピルスナー以外のスタイルを、定期的にリリースする体制を着々と整えている。王者セブンがついにビール棚の改革に本腰を入れた。
常に先手を打ち続けるローソン
少し前まで、ビールのラインナップにおけるバリエーションでコンビニエンスストア業界をリードしていたのはローソン <2651> だった。元々、ナチュラルローソンで「よなよなエール」や「COEDO」などのクラフトビールを多数販売していたが、本家ローソンでも徐々にその数を増やし、昨年、よなよなの「ヤッホーブルーイング」とタッグを組んで限定ビール「僕ビール、君ビール。」を発売したのは記憶に新しい。
わずか2か月で完売という鮮烈な印象を残したこのビールで、ベルギー伝統のセゾンというビアスタイルに出会った人も多かっただろう。セゾンとは、かつて夏の農作業の合間に喉の渇きを癒すために飲まれていたという季節限定のビール。クラフトビールが女性にも需要があることに気付いたローソンは今春から、北海道麦酒醸造の「フルーツブルーイング レモンラガー」と「フルーツブルーイング チェリー&ベリー」の果汁たっぷりビールを投入し、スマッシュヒットを飛ばしている。
先頃、イートインスペースを3年で2倍の6,000店に増やすと発表したファミリーマート <8028> が、クラフトビールとどう向き合うかにも注目が集まる。コンビニ角打ちが登場したら、かなり画期的である。
コンビニビールの行く末は?
メーカー側にとっても、コンビニという市場は魅力的だ。特にPBブランドの一角に食い込めれば、長期にわたって安定した取引が期待できる。ビールファンにとっても、安価で多彩なスタイルの商品が並ぶようになったコンビニのビール棚は、すでに“立ち寄る楽しみ”のある場所になっている。
一方で、常に消費者に新しい驚きを提供しなければならないのがコンビニエンスストアの宿命である。他社との差別化を狙う活動がヒートアップするあまり、小規模な醸造所が振り回されないか懸念される。
いずれにしても、身近に多彩なビアスタイルが飲めるようになるのは消費者としてはまさに便利で、ありがたいこと。メーカーを巻き込んだコンビニ各社の競争が激化しすぎることでクラフトビールブームに冷や水をかけることがないよう、ビールを楽しみながらも今後の展開を注視していきたい。(ZUU online 編集部)
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