バランスシート,日銀,FRB
(写真=PIXTA)

米国FRBは過去3回にわたって量的金融緩和を実施してきた。FRBが債券を買い入れるようになってから、その手法に追随する形で、先進各国の中央銀行のバランスシートが大きく拡大している。中央銀行が主体的、戦略的に執り行っている金融政策ため特段問題視しない見方もある。

その一方で、今年1月に無制限為替介入を表明していたスイス国立銀行が、その外貨準備額がGDPの75%を超えた時点で介入を中止する旨を突然発表し、スイスフランが暴騰したのは記憶に新しい。為替の介入と債券の買い入れは、その趣旨もリスクも異なり、一緒に議論すべきことではない。とはいえ、現在の日銀国債やETFの買い入れは、このまま盲目的に続けても本当に問題がないレベルなのか。誰しもが気になる領域に達しつつあるのが現実だ。そこで、日銀とFRBのバランスシートを比較してみた。

日銀の貸借対照表

日銀は、貸借対照表という形で各期末にその内容を公表している。これまでの量的金融緩和で表明しているように、平成26年は資産の部で国債の購入金額が急増。2013年3月の125兆3556億円から269億7921億円へと、実に145兆円も増加している。マネタリーベースを2年で2倍に増やしていることから、順調に買い進んでいることが伺える。

負債の部では、当座預金が2013年3月の58兆1289億から206兆718億まで、148兆円も増えている。しかし、ECBが短期的に債券にマイナス金利を履行することで市中に資金が行きわたり景気が急激に回復したのに比べ、日銀の今回の国債購入は、その資金がほとんど同行の当座預金に逆戻りして単に積み上がっているだけだ。

2013年3月まで適用されていた、国債の保有量は日銀券の発行残高を超えないというルールも完全に無視されている。

国内の国債はそのほとんどが国内流通のため、欧州債券のように価格変動リスクからの金利上昇で大きく下落することは当面考えられないものの、基本的には残存期間の長いものほど価格変動リスクを伴う。

さらにETFの市中での継続的な買いつけのため、上場投資信託は既に26年3月末段階で4兆4000億となっている。今年、6兆8000億の予定規模を消化するのは堅い状況だ。総資産に占める国債と投資信託などのウエイトは、実に資産の83%にも上っており、非常に高いレベルに到達していることがわかる。

FRBのバランスシートと比較してみると

FRBは月次でそのバランスシートを開示しているが、直近でのバランスシートは、金、SDR(特別引出権)、貨幣などの現金保有分を除くと、4兆410億ドルとなっている。2014年以降、4兆ドルを超える規模だ。このうち米国債の保有額は、2兆460億ドルと最も大きくなっている。

最近円安に振れているのでFRBの保有債券の金額規模もかなり大きく見えるが、日本円にすると資産総額は489兆円弱。国債保有額は、日本円にして247兆5660億円程度だ。ただ、名目GDPベースで米国が日本の4.3倍であることを考えれば、同じ量的金融緩和といえども日銀の国債買い付け保有量が国の規模に比べていかに莫大なものかがわかる。

もともとの国債発行額は、米国が名目GDPの110%なのに対して、日本はすでに200%を軽く超している。発行量に対する米国FRBの保有比率は日本よりも高いともいえるものの、このまま日銀が国債を買い続けることが本当に健全かと問われれば首をかしげざるをえない状況なのは間違いない。

また、金額は5兆円に満たないものの、ETFをはじめとする本格的なリスク資産を中央銀行が購入している例は、先進国の他の中央銀行には見当たらない。

金利の上昇は日銀が抱える最大のリスク

財務省によると、2016年度以降長期金利が想定よりも2%上昇した場合、国債費は同年度に2兆円、17年度に4.8兆円、18年度に8兆円も増加することが見込まれている。せっかく実現した消費増税3%分が、金利の上昇でいとも簡単に吹き飛ぶ計算だ。

現在の政権は景気を回復させることを先行させようとしているが、この状況は低金利が継続することが大前提。海外の投資家からは、日銀が物価上昇目標の達成よりも金利を低く押さえ込むことに躍起で、単に財政ファイナンスを行っているに過ぎないと揶揄されている。

緊縮財政だけでは何も生まれない。日銀自体が想像以上にクリティカルな状況に直面していることが見えてくるのである。(ZUU online 編集部)