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(写真=PIXTA)

2015年5月末、公募投信の残高がついに100兆円の大台を超え、102兆4574億円となった。

いわゆるアベノミクス相場が始まって2年半、その間の投資信託の増加は約41兆円にのぼる。上場投資信託(ETF)も、5月末の残高が14兆円強と2年間で2倍強に膨らんでいる。投資信託の残高が大きく伸びた背景には何があるのだろうか。

NISA口座とオルタナティブ投資

投資信託が大きく残高を伸ばしている要因として真っ先にあげられるのは、NISA口座を通じた個人マネーの流入だ。日本証券業協会の発表では、主要証券会社10社のNISA口座の5月末時点の稼働率は前月比で0.7ポイント上昇し、51.2%となっている。

NISA総口座数は441万口座、総買い付け額は2兆3047億円に拡大している。投信残高の増加にNISAが大きな起爆剤となったことは間違いないだろう。

また、純資産残高の大きい投資信託には共通点がある。5月末で最も純資産残高が大きいのは新光投信のUS-REITオープン、それに続くのが日興アセットマネジメントのラサール・グローバルREITファンドだ。フィディリティのUSハイ・イールドファンドがそれに続いている。

投資信託の純資産残高の上位の顔ぶれ

つまり、投資信託の純資産残高の上位は、リートとハイイールド債券に投資するファンドということになる。これらの投資対象は、伝統的な投資対象である株式でも債券でもない。いわゆるオルタナティブ投資といわれるものだ。

オルタナティブ投資は、「代替投資」と説明されることが一般的になっている。株式や債券が伝統的な投資として分類されるのに対し、それに代替する投資という意味だ。エマージング(新興国)株式、コモディティ(商品)、不動産(REIT)などがオルタナティブ投資の対象となる。

このように、NISA口座の浸透とオルタナティブ投資の普及という2つ要因が投資信託の残高増加に大きな役割を果たしていると見ることができる。

そして、オルタナティブ投資の普及を後押ししているのが、投資家の分配金重視の投資スタイルであることも付け加えておこう。

かねてより、分配金をあまりに重視したファンドの運用姿勢に批判があったにもかかわらず、その風潮は一向に変わらない。投資家は少しでも高い分配金を求める。それに応えるためには、もはや伝統的な投資手法では限界なのだ。

ラップ口座に隠された乗り換え勧誘に対する規制

そしてもう1つ、投資信託の残高増加に大きく貢献しているのが、実はラップ口座の存在だ。ラップ口座の残高は今年3月末までの1年間で3倍弱に脹らみ、4月末には4兆円を超えたと言われる。

ラップ口座とは、目標利回りや期間、リスク許容度などを投資家からヒアリングし、その計画に沿って金融機関が資産配分や商品選択、配分見直しを代行するサービスだ。金融機関は、従来の売買手数料に依存する変動の大きい収益構造を見直し、安定収益で稼ぐ形に変えようと躍起になっている。その中核商品となるのがラップ口座というわけだ。

こうした金融機関の営業姿勢の変化を後押ししたのが、当局からの圧力だ。金融庁は金融機関に対し、投資信託を販売する際、手数料稼ぎに重心を置いた「乗り換え販売」に偏らないよう、営業員の評価基準を見直すよう求めた。立ち入り検査を通じて実態調査を実施し、監督指針の改正を行った。

金融機関は、投資信託の乗り換え勧誘による手数料収入の獲得から、顧客の投資残高を増やすことで信託報酬の増加を目指す方向へと舵を切らざるを得なかった。それがラップ口座の躍進につながっていることは言うまでもない。(ZUU online 編集部)

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