宅建業法に違反する「囲い込み」は、不動産を売却する売主が損をするというだけの問題ではない。

この囲い込みの問題について、掲載物件数で国内最大級の不動産媒体の『HOME’S』を運営する株式会社ネクストの井上高志社長 は次のように語っている。

「国内の空室物件は約820万件ありますが、その内の約200万件は人が住めない廃屋など用途不明物件と見られており、実際に市場流通する物件は約600万件です。

つまり、当社ですら、市場流通する物件の約半数の物件しか掲載できていないのです。不動産会社と顧客との間の情報の非対称性こそが、不動産業界の最大の問題と言えます」と語っている。(「週刊ダイヤモンド」 2014年12月4日 「ネクスト社長 井上高志 不動産業界の問題行為「物件囲い込み」を根絶すべき」より)

これはざっくり言えば、流通している不動産物件のうち、一般のネット媒体などに公開されているのは半分の物件ぐらいで、残りは不動産会社に囲い込まれてか、または何らか理由で流通物件の情報として載らない可能性があるということだ。

つまり、あなたが家を買いたい、または部屋を借りたいと思ってネットで不動産物件を検索しても、閲覧できるのは実際に供給されている物件数の半分ぐらいで、残りの半分によい物件があったとしても、囲い込みをしている個別の不動産会社に情報が隠され、表に出てこないのだ。

「宝の山」にはアクセスできず、売れ残りの物件しか表に出てこないというと言い過ぎかもしれないが、そうでないとは誰も言い切れないことが問題だ。

いずれにしても、囲い込みをする不動産会社に物件の情報が秘され、その情報にアクセスできないとなると、多くの市場参加者が不利益を被ることになる。


透明性を確保するにはどうしたらよいか?

こうした不動産市場の取引での情報の非対称性をなくすには、原理としては簡単で、流通するすべての不動産情報に(不動産業者だけでなく、個人も)誰もが等しくアクセスできるようにすることである。端的には、不動産業者のみがアクセスできるレインズ(※)という物件情報のデータベースにすべての物件情報が登録されるようにして、それを一般にも開放するか(現状では規制により不可能)、またその代わりとなりうる情報プラットフォームを作ることだ。

(※レインズ~Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)の略称で、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピュータ・ネットワーク・システム。)

レインズが登録されている物件情報がすべてではなく、かつ規制により一般の消費者には開放されない現状では、消費者にとっては流通情報の透明性が確保される見込みはない。そうなると情報の非対称性をなくし、透明性を確保するには別の情報プラットフォームを作るしかない。

こうした現状に対し「Yahoo!Japanとソニー不動産は、日本の不動産売買に革命を起こします」という言葉が単なる大風呂敷のキャッチ・コピーではなく、本気で「不動産流通革命」を起こすつもりでならば、共同で開発するというプラットフォームについて

・取り扱い対象を、全国、マンション以外の種別にも広げ、不動産取引の参加者から流通する不動産情報を登録してもらう取り組みをすべき

・このプラットフォームで仲介ができるのは「ソニー不動産だけ」とせず、他の不動産会社にも開放すべきで、ソニー不動産は同じ土俵で「サービスの良さ」の違いで勝負をすべき

と考える。

中長期的に消費者にとってメリットが大きいのは、不動産業者にアクセスが制限されているレインズを補完、代替するような情報プラットフォームに発展できるかどうかだ。業界関係者からは、「そんなのできっこない」という声が聞こえてきそうだが、「不動産流通革命」を標榜するからには、そのぐらいのことは視野に入れているのではないか。

少なくとも国内で圧倒的なメディアパワーを持つYahoo!と、不動産業界内のしらがみが薄いと思われるソニー不動産は、それが実現できる数少ない企業の連合だろう。

坂口誠二(さかぐち・せいじ)
住まいと暮らしの実益情報メディア「 storie 」編集長

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