1 万人アンケートで明らかになった退職準備の格差
(画像提供=フィディリティ投信)

今年7月、フィデリティ退職・投資教育研究所は退職金に関する調査を発表した。これは、2015年5月にサラリーマン1万人アンケートを実施したもので、2010年、2013年に続いて3回目となる。2014年の勤労者3万人アンケートから属性の同じサラリーマン2万1000人を抽出して、都合4回分のアンケート結果の比較分析を行った。


約半分が退職後の生活費に懸念

2015年のアンケート調査の結果は、「退職後の生活に関して45.7%がのんびり・マイペースな生活を望みながらも、64.5%が今の高齢者より生活が悪くなると諦めている姿」が浮き彫りとなり、「55.1%が旅行・レジャー・趣味・習い事を楽しみにしながらも、医療費を中心に52.9%が退職後の生活費の不足に懸念を持っている」ことが分かった。


膨らむ景気回復への期待

景気回復への期待が滲んでいる。公的年金に対する“安心感”が5年間で2.4ポイント上昇し、その理由として36.2%が「景気が回復すれば運用で資産が増加する」と指摘している。同様に、政府に対する退職準備のためのサポートとして「雇用の安定」を挙げる人が過去5年間で57.4%から36.3%に大幅に低下した。そのため「預金金利の引き上げ」の要望(36.6%)がクローズアップされている。


平均保有資産は大幅に増加

過去5年で平均保有資産は861.3万円から1049.3万円に大幅増加。これに合わせて退職準備額も515.6万円から748.5万円に約5割増加した。ただ、退職準備0円層の比率はアンケート対象者の4割で変わらず、退職準備1000万円以上の層が13.3%から20.1%に増加しており、退職準備額の格差が広がっている姿が浮き彫りになった。特に40代、50代での格差拡大が懸念される。


投資の有無で格差拡大?

背景には、投資をしているか否かが影響しているようだ。年収に対する退職準備額の倍率を、「投資をしている人」と「投資をしていない人」で比較すると、2010年は1.39倍と0.74倍で格差は0.65だったが、2015年は2.19倍と1.17倍で格差は1.02に広がっている。


広がる格差拡大への懸念

懸念はこの格差がさらに拡大する可能性があること。過去5年で退職後の生活のために「資産運用や計画的な貯蓄」をしている人は増えているが、「何もしない」人も増加傾向にある。また投資に対するイメージも2極化する傾向にある。期待は「時間分散」への理解が高まりつつあることだが、その一方で高値警戒感から40代、50代の資産運用が拡大せず、退職準備の停滞が懸念される。

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