会社予想と市場予想、実績の関係
◆日経平均ベースの上振れ余地は限定的
業績予想には企業自身が発表する予想のほかに証券アナリストの予想もあり、複数のアナリストによる予想の平均値を"市場予想"や"市場コンセンサス"と呼ぶ。通常、会社側の予想は市場予想よりも保守的だ。期初時点における日経平均ベースの予想利益の比較を図2に示す。各年度とも市場予想を100として換算しているので、数字が小さいほど会社予想が保守的なことを意味する。
市場の予想と比べて会社予想がどのくらい保守的かは年によって異なるが、東日本大震災の発生直後にあたる2011年度を除いて、全ての年度で会社予想が市場予想を下回った(11年度は業績予想を発表しない企業もありデータが異常値となっている可能性が高い)。最近の動きで特徴的なのは、会社予想と市場予想のかい離が小さくなった点だ。つまり、13・14年度ほど会社予想が保守的でなくなった。
このことは何を意味するのだろうか。次に、期初予想と期末実績の関係を見るために、横軸に会社予想÷市場予想(図2と同じ期初時点の強気度)を、縦軸に実績÷会社予想(実績の上振れ度)を図3にプロットした。図3は右下がりの傾向がみられ、期初時点の会社予想が保守的な年度ほど実績が大きく上振れたことを示している。
直近の13年度と14年度に限っても、期初予想がより保守的だった13年度のほうが実績の上振れが大きかった。ここから示唆されることは、13年度や14年度と同じように15年度も業績が大きく上振れると期待するのは禁物ということだ。過剰な期待は、それが実現しなかったときの落胆の大きさに輪をかける。
ちなみに、15年度は期初時点の会社予想が9%増益(経常利益ベース)で、市場予想の96%に相当する。仮に実績が対前年20%増益で着地した場合の上振れ率は110.1(=120÷109)なので、図3の右下がりの傾向線にぴったり乗る。今後、中間決算発表時や16年3月期末実績の上方修正は期待できるが、その修正幅はさほどサプライズにならない可能性を覚悟しておく方が賢明だろう。
なお、図2のように15年度の期初予想が13・14年度ほど保守的でなくなった理由としては、ROE向上や株主との対話強化の流れを受けて企業側が必要以上に保守的な予想を出さなくなったことや、為替の見通しに関して企業経営者と市場のギャップが縮小した可能性が考えられる。
後者の仮説について説明すると、13年度と14年度は市場が大幅な円安を予想する一方で企業経営者はそれほどの円安進行を見込んでいなかった。このため円安効果による大幅増益を期待する市場予想と比べて、会社予想はだいぶ保守的だった。ところが、15年度は市場と経営者が1ドル=115~120円程度でほぼ一致しているため、業績予想のかい離が縮まった可能性が考えられる。