◆業績上振れの常連で15年度も保守的な銘柄
最後に、全体として業績上振れ期待が薄まったとはいえ、投資妙味がありそうな銘柄を探ってみよう。
改めて図5をよく見ると、TOPIX500構成銘柄のうち3月決算企業(約380社)に限っても、期初予想が市場予想の90%以下という保守的な企業は約60社存在しており、これらの企業は今後、業績を大幅に上方修正する期待値が高いとみなすことができよう。この60社から更に銘柄を絞り込むために、以下のスクリーニングを行った。
1.13~15年度の期初予想が3年連続で保守的(市場予想の90%以下)
2.13年度・14年度とも実績が大きく上振れた(期初の会社予想の150%以上)
その結果、浮かび上がったのが図7に示した6銘柄だ。土木関連に強みを持つ奥村組の場合、13年度の期初予想は市場予想の70%であったのに対して期末の実績はその約2倍で着地、14年度実績も期初予想の152%となった。今期の期初予想は79%と昨年度よりも保守的であり、今後の上方修正が期待できそうだ。
半導体大手のロームは13・14年度ともに実績は期初予想の2倍超となったが、15年度の期初予想も昨年度並みに保守的な内容であった。スクウェア・エニックス・ホールディングスのように期初予想が保守的過ぎるので上方修正するのが当然という見方もあろう。
また、日本空港ビルディングはここ2年間で株価が約7倍に上昇しており、仮に業績が上振れしても株価が更に値上がりするとは限らない。更に、昨年までと違って何か特殊要因が起きていないか等のチェックも必要だが、株式投資先を効率的に探すには、こうした分析も役立つのではないか。
井出真吾
ニッセイ基礎研究所 経済研究部
チーフ株式ストラテジスト
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