考察からの示唆

企業の人事関係者のアンケート結果や厚生労働省の採用格差データから、まずは女性の総合職採用人数を早急に拡大すること、が課題であろう。しかしながら、採用される側とのミスマッチがあれば、企業側の思うような人材は集まらない。

就職活動前の大学生・大学院生の調査からは、職場におけるノルマや学閥・男女差別的な企業がより女子学生から嫌われていることが示された。

学歴・男女差別的な企業について、男子学生からよりも女子学生から、よりネガティブに評価されている点については、今後も、企業の過去の学歴・男女別採用実績をより女子学生が気にしてチェックするだろうと思われる。これに対しては、上に述べたように、まずは女性の採用枠を拡大していくことで企業の姿勢を示すのが最も説得力のある方法であろう。

ノルマについては女性であるから減らす、という性質のものではない。しかしながら、男性にはなくて女性にだけ生じるライフイベントである妊娠・出産(・育児休業)などの期間のノルマに業績や評価が影響されるような体系は、明らかに女性に不利となってしまうため、今後十分に検討する必要がある。

また、図表の補足にはなるが、文系女子学生において特に「転勤」も壁になっているようである。妊娠出産というライフイベントが想定される女性にとっては、男性では問題にならないようなノルマ制や転勤が少なからず不安を与える制度であることは否めないだろう。

急速に進む人口減少社会において、不足する労働力を補う優秀な女性人材を確保、育成するための「採用の壁」改革が必要である。このために企業経営者に残された時間はあまり長くはない、そう言えるのではないだろうか。

(i)実施時期:2015年3月23日から4月6日、回答方法:ウェブ回答、回答者数:延べ2743社2857人、対象:「日本の人事部」人事会員
(ii)調査対象 2015年3月卒業見込みの全国大学3年生、大学院1年生
調査機関 2013年12月1日~2014年2月28日
調査方法 WEBフォームによる回収
有効回答 9705名

天野 馨南子
ニッセイ基礎研究所 生活研究部

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